ろく かもしれない
6.見てる方がじれったい
勇者「ま、魔王。あのさ…」モジモジ
魔王「そ、その、勇者よ…」ソワソワ
勇者「…いいって。お前食えよ。世界征服で、いつも悪いこと頑張ってるんだし…」
魔王「いや! いいって! これ勇者の分な! みかんが最後一個残ったら勇者のもんだって占いにも出てるし!」
勇者「いいよ! 悪いよ! もしこれに毒物が入ってたら俺どーすりゃいいの! 王様にも姫様にも申し訳立たないじゃん!」
魔王「んなもん入ってないから! 俺はほら、お前より長生きしてるからさ。いままでみかんたくさん食ったの。いや、ホントだよ? 2987個くらい食ったんじゃないかな~。だからさ、このみかんは勇者の! な?」
勇者「…いいって。ほんといいって。みかん…好きだけど、でもさ、ほら。魔王がもっとみかん好きなの知ってるから。好物なんだろ、みかん」
魔王「あ、じゃあさ、こうしないか。貴様にこのみかんの半分をやろう」
勇者「おお、その手があったか! いいね半分こ。じゃあ、魔王に上半分やるから、俺、下半分もらうわ」
魔王「いや、貴様が上半分を食らうがよい。我は下半分で満ち足りる」
勇者「えー、いいっていいって! 魔王、上半分食べなよ! こっちのほうがうまそうじゃん」
魔王「ではどうだ、勇者よ。上半分の半分を貴様が食べ、上半分の残り半分を我がいただこう」
勇者「あっ! そっか~。そうすりゃいいのか。でもさ、切ってみたら、こっちの半分のほうがうまそうだよね。こっち魔王食えば?」
魔王「…む。ではこれも半分にしようではないか」
勇者「そうだね! 公平に分けないとな!」ニコッ
……。
勇者「でもこの半分が…。いいって魔王食べなよ」
魔王「いやいや! 貴様が食らうがよい!」
……。
部下A「…さっきから、魔王様と勇者さんが、みかんを真剣な眼差しで見つめて、細切れにしたり議論したりしているんですけど…」
側近「…ふん。勇者め、ついに我々と手を組む気になったようですね。あれは、世界のどの領地をどちらが治めるかという議論の模型に違いありませんよ。ーー手近にみかんしかなかったのでしょう。」
側近「世界地図を用意してきますよ。みかんでは、分かりにくいでしょうからね」スタスタ
魔王「フハハハハ! 蜜柑め! ミキサー(ブレンダー)にかけてこなごなにしてくれたわ!」
勇者「ごくごくごく。ぷはーっ! ラストみかんうめぇ! いいなミキサー! これからは、まんじゅうもせんべいも焼肉の最後のひと切れもこうするか!?」
魔王「よっしゃー! いいぞいいぞ、テンション上がってキタァアア!! スイッチ、オーン!!」ぎゅいいいいん
勇者「ちょっと、まんじゅうとせんべい買ってくるわ!」ダッシュ
側近「…魔王様、人間。地図をお持ちしました…。」ポツーン
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