にー
お題その2.落ちる沈黙、同時の「あのさ」
魔王・勇者「あ「あのさ!」」
魔王「む? …なんだ勇者よ。我に言い遺したいことがあるようだな」
勇者「…いいよ。お前先に言えよ」
魔王「…ほう? たいした自信ではないか? これだけの我が配下を前に、生き残る自信があるとみえる」
勇者「ちっげーって! そんなんじゃないから! ほんと違うから! いいって、魔王さきに言えよ」
魔王「…フン。では言わせてもらうがな勇者よ。何故、水着と麦わら帽子、ビーチサンダルで我が元へとやってきたのだ?」ゴゴゴゴゴ
勇者「あ…、うん。一緒に海水浴行かないかなーって思って」人差し指つんつん
魔王「海水浴ッ!!」かっ!
勇者「そうだよ! 燦々と輝く太陽! 白い砂浜! 青くまばゆい海ーー。海の家では焼きトウモロコシやヤキソバ、かき氷が売られている」
魔王「ほ…、ほう? もっと詳しく」ソワソワ
側近「魔王様、罠です! 耳を傾けてはいけませんっ!」
勇者「それでさ~。魔王が、水着の美女に囲まれたりなんかしちゃったりして」
魔王「フムフム」
勇者「きゃー! 魔王様の体脂肪すてきー! ぷにょぷにょー! しびれるゥ」
魔王「うむうむ」ソワソワ
側近「…くっ、勇者め、黙りなさい!」
勇者「それでねそれでね、夕方には、真っ赤な太陽が地平線に沈んでいく。寄り添う恋人たち。高まる胸の鼓動」
魔王「ほうほう?」
勇者「飛び交うロケット花火。くねる蛇花火。閃光花火はもちろん束のまま着火。筒から吹き出す花火は、決して人に向けてはいけない」
魔王「ほう?」
勇者「いいな! 向けるなよ! 俺との約束だからな!?」
魔王「いいよいいよ、続けて。俺も海行ってみたいね。人間界征服したら行けるかな?」
勇者「もちろんだよ魔王!」
魔王「…勇者よ。我が世界征服を果たすまで、海に行く約束、待っていてもらえるだろうか…?」
勇者「いいや待てない! 1秒だって待てない! いいか魔王! 素晴らしき夏の日はーー待ってはくれない」
魔王「なんだと!?」
勇者「さぁ、俺と一緒に行こう。ビーチボールと浮き輪とスイカも用意してある…さぁ」
側近・魔王「…」
側近・魔王「「…あの」さ」
側近「もやしを持参しても…?」
魔王「四天王も連れて行ってもいいかな…?」
勇者「もちろんだ! 海はみんなのものだからな!」
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