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はじまりはじまり そのいち

よくあるお題で よくある書き方で書いているつもりです

これパクリじゃね?とか言われても そんなん知らんし

誰でも思いつくような ネタから作られたお話です

よろしければ 読んでみてください

 一面に広がる麦畑、豊かに実った穂はふき抜ける風におどり波打っている。

そこはまさしく黄金色の海原だった。

 辺境の街ホシクラはその黄金の海原にぽつりと浮かぶ孤島であり、中核都市アキアカリへの食料供給によってその活動を成り立たせる衛星都市である。

ホシクラの歴史は古い。

遙かな神話の時代に猛威を振るい、ついには大いなる神格達により討ち滅ぼされ封じられた邪なる神格「星喰らい」

その封印を守る一族が起こした街であり、封じられてなお荒ぶる邪神の欠片を封じ続けているのだという伝承さえ遺されていた。

だが、今となっては街の名と、初代より代々続く領主ホシクラ家の名にその名残を残すのみであり「星喰らい」はおとぎ話にすらその姿をあらわすことはなくなっていた。


しかし、神は死してもそこに有り、例え風化しようともそこに在るのだ。

人々が忘れ去ろうともそれは変わらない。



『森』


 ホシクラの街より北へ半日、ただ「森」と呼ばれる大樹海がひろがっている。

森には様々な薬効のある草花や霊泉が数多く存在していた。

だが、神代から在り続けている古く深い森は強大な魔獣や竜種などの亜神格さえもその懐に抱いており、森へ入るという事はそれだけで命がけの冒険だった。


 背の高い針葉樹林、その間をまるで風が通り抜けるように走る影がある。

影はまるでつくばるように両の手も使いながら四足の獣のごとく駆けていた。

つま先が張り出した根を蹴りつけ、五本の指が木の幹を掴み後ろへと押しやるように身体を前へ進める。

影は何かから逃げるように、けれど誘うように走りながら肩越しに後方を見やる。

すると、己がすり抜けてきた樹々をへし折り荒い息を吐く巨体が姿を現した。


 巨体はいきどおっていた。己の縄張りを荒らす不届きな小さき者にその怒りを思い知らせる為に、その巨躯を思いのままに暴れさせる。

巨大な獣にとって鬱蒼うっそうと茂る樹々など障害にすらならなかった。ただ突き進み、ただ吹き飛ばす。

そして愚かな小さき者を踏みつぶす、いやバラバラに引き裂いて喰らってやろう。

そう決めた獣はとたんに機嫌が上向いてきた。獣からしてみれば食うところが少なく食いではないが味は悪くないのだ小さき者―「人間」というやつは。

ついでにこのまま森の外の人間どもの群れの所まで行ってあいつらを腹一杯に詰めてみるのもいい。

まずは目の前の獲物をかたづけよう、獣は意識を小さき者へと傾けた。


「オニ熊、それも結構な大物だ。 …父さぁん、いくぞー?」


 木々の間を抜け、開けた場所にでた影は存外と若い…幼ささえ感じさせる少年の声で叫んだ。

質素なこしらえではあるが厚手の獣革であつらえたフード付きの服、丈夫な麻布で作られたであろう膝丈のズボンとサンダル。そして背には木で出来ている杖のようなもの。

それは、この地方の人間にはあまり見られない装いだった。

そもそも獣革とは魔獣の皮を加工したものであり、魔獣を退治することそのものが非常に困難なのだ。


少年はその身をひるがえし、背に負っていた杖…棍を手になじませるように何度かしごき獣へと構える。

獣は少年に追いつくや立ち上がり、威嚇するためにまるで地鳴りのような咆哮を放つ。

その体格差は凄まじく少年を縦に三人並べるよりもなお獣は巨大だった。

恐怖をそのまま具現したかのような魔獣。それに対してあまりにもちっぽけな少年は、なんの気負いもなくその巨体へと突き進んだ。



『辺境 ホ シ ク ラ 』


 辺境の街ホシクラ。その中心部に建つ領主ホシクラ家の屋敷、少女は自室のベッドに膝を立てて座り窓の外を眺めている

そのくすんだ金色の髪はやや短めの猫っ毛でふわふわと奔放に跳ね回っていた。


大きな瞳には普段なら太陽のような輝きがあるのだろう、今日に限ってはどんよりと曇り気味である。

立て膝にのせた腕で頬をつぶしながら、ため息をひとつ。

今日は少女の十六の誕生日だった。この街では十六になれば成人と認められ自らの進む道を決める事になる。

領主の末娘である少女に用意された未来は、雁字搦めの鳥かごの鳥…などではない。

『自分のやりたいこと』を、それが親兄弟の愛を一身に受ける少女に示された未来だった。

これは、この街の若者に与えられる選択肢の中でも破格のものだ。

常ならば親の仕事を受け継ぐか、ホシクラの主産業である農業に携わることになる。


「やりたいこと…かぁ」


ついにベッドに倒れこみ呟く、少女の健やかに育った肢体がベッドにわずかに沈み込む。


「ん~ ぬぬぬ… うがーっ やめやめ ウジウジすんのやだっ」


一頻り唸ると勢いをつけて起き上がりベッドを降りる。

元々が悩むよりも行動を旨とする少女である。

兎にも角にも動かなければ始まらない、そういうものだと理解しているのだ。

「やりたいことやる為にも、動かないとね」

少女は部屋のドアを開け放ち、物語は動き出す。


『 ホ シ ク ラ 中心街 』

 ホシクラの街は領主の館を中核として放射状に広がっており、館のすぐ外側は様々な店が立ち並ぶ商店街となっている。

その周りを居住区画が囲い、堀と城壁が街を覆っている。

そして、十字を描くように四方に門が設けられ人々が行き交っていた。

なかでも南門は商店街から領主の館までまっすぐに抜ける街でもっとも大きな通りがあり、麦やその他の作物を買い付けに来る商家の者や旅商達で賑わう。

そのため、南通りには自然と宿や酒場などが出来て更に人が集まる、そうなれば商店や盛り場が大きくなり…結果、ホシクラの中心街が生まれたのである。


 常に新しいなにかが持ち込まれるこの場所は、好奇心の塊である少女のお気に入りだった。

しかし、今日の目的はそれらではなく、少女は真っ直ぐに門へと向かう。

彼女のお目当ては今まさに門をくぐり抜け、少女の方へと近づいてくるところだった。

荷車を引く二頭の大きな馬と大小の異装二人組、荷台には血抜きされ「品物」になった巨大なオニ熊が鎮座しており、道行く人々を驚かせていた。

少女は輝くばかりの笑顔で手を振り呼びかけ走り寄る。

二人組がそちらに気づき立ち止まると、少女の言葉が溢れだした。


「ユニーっオロウおじ様も!いらっしゃい 元気だった? 私は―」


二人組の小さな方の手が、少女の言葉を遮るように彼女の目の前に突き出される。

少女は言葉をとめてどうしたのかと首をかしげ、その掌の持ち主を見つめた。


「アイリ 久しぶり。でも ちょっと邪魔 先に仕事済まさせて」


フードの付いた獣革の上着を着た少年、ユニは唇の端に僅かな苦笑を滲ませながら少女の名を呼んだ。

傍から見れば冷たくあしらわれたかのような少女―アイリだが、嬉しそうに頷き少年ユニの隣へと並び一緒に歩き出す。少年もそれを咎めるでなくあっさりと受け入れていた。


 アイリは喜色満面の笑顔をユニへと向け、久しぶりに街を訪れた幼馴染を見つめる。

耳が隠れる程度の長さで切りそろえられた緑の黒髪、太く艶やかで真っ直ぐなその髪が若干妬ましい猫っ毛の少女だった。


やや細めで凛々しさを感じさせるその眼には夜空より濃い黒の瞳が収まっている。ホシクラの民はほとんどが青みのある黒色の瞳だが、少年のそれはどこまでも深く沈んでいく底なしの闇のような漆黒だった。見つめていると吸い込まれそうな気分になるのも彼女としては神秘的で大変よろしい。


彫りの浅くやや低めの鼻と薄めの唇は、この年頃にしてはやや幼さを感じさせる。


身長も少女とさして変わらず、同年代の友人達より頭ひとつは小さいだろう。

少年と青年の間にさしかかり若干目の色が変わりだした街の少年達が少し苦手になってきたアイリにとって、隣に並んでも向い合っても圧迫感を感じさせないユニは、その大人びた物腰と雰囲気も合わさり側にいたいと思える大切な友人だった。


ユニの父オロウは、寡黙な人柄と黒髪と漆黒の瞳を持つ偉丈夫であり、人種として同じ特徴を持ってはいるがあまり息子とは似ていない。 

彼曰く、息子は今は亡き妻によく似ているのだと言う。 

以前、アイリに二人は目がそっくりだと言われた時には、照れながら嬉しそうに微笑んだ事もあった。


幼馴染二人は近況を話し合い、時折話を振られた少年の父が笑顔で相槌を打つ。

三人と二頭の馬、そして大きな荷車と「品物」はゆっくりと大通りを進むのだった。


 「品物」を懇意にしている商家へと届けると、オロウはそのまま手伝う為に残ることを告げ、ユニにいくらかの金銭を渡し二人を送り出した。

二人になり露店をひやかしながら歩いていると、ユニは何時でも賑やかな幼馴染の少女の口数が減ってきた事に気づいていた。


「何か、あったの?」


まさか異常に気づかれているとは思いもしなかったと言いたげに愕然とした表情で少年へと向き直り固まる少女を見て、呆れ顔でため息をつく。

ユニは慄くアイリの言葉を待つ。 少女は何度も口を開きかけては閉じるという動作を繰り返し、やっと言葉を紡ぎだす。

「えっと、あのね… こ、こっ ココじゃなんだから場所変えよ?ねっ?」

困惑する少年の手を取ると、少女は駆け出すのだった。


 「 ホ シ ク ラ 外周部城壁屋上 」

 夕暮れの街、外周部の城壁から見渡す一面の麦畑は夕陽に照らされその輝きを更に増して、その紅く染まる黄金は燃え上がる命の力強さ、そして美しさを誇っていた。

頬を撫ぜる風に吹かれながら、自然と微笑む少女は黄金の海原を見渡す。

新しいモノ好きな彼女だが、何時の時代も変わらずそこにあり見るものの心を捉える圧倒的なまでの命の光景もまた、お気に入りなのだ。


「ここは いつもいい風が吹くね。 で、 どうしたのアイリ」


少年も吹き抜ける風に心地よさげに目を細めると、少女へと重ねて問いかける。

一拍。自らの内側にある言葉を選んだのか、黙り込み一瞬うつむいた少女だったがしっかりと少年の目を見据えつらつらと喋り出す。

与えられた破格の未来、自らの「やりたいこと」 そしてそれらについて思い悩んでおり、少年に力を貸してほしいという事…


「力を貸して欲しいって…、どうしたらいいんだ?」


少年は真っ直ぐに少女の瞳を受け止めながら問う。

年の近い友人のすくない少年にとっても少女は大切な幼馴染である。

助けになれるならそれを躊躇うつもりはなかった。

アイリの唇が開かれる。


「わたしね、 わたし…冒険者になりたいのっ」


『きみとふたりでっ』


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