第二話 恋人?友達?
「咲実ぁ。今日も喧嘩してきたの?たく、懲りないなぁ」
倉科君に自己紹介されてから数十分後。まるで倉科君が帰ってくるのを見計らっていたかのように店に人が集まりだしてきた。皆、倉科君と同じ制服を着た男子生徒や、その制服と同じ校章がついた制服を着た女子生徒たちだった。
「いやぁ、実は美紅をつけねらう奴がいてさぁ~、それでこてんぱんにしてきたわけ」
「ホントにそうだったら、どれだけたくましいことか」
倉科君を友達らしき人たちが囲んでいる。私は邪魔そうだったので席を少し移動していた。
「ねぇ、明日学校休みだからどっか遊びに行こっか!」
1人の女子生徒が倉科君の肩に腕を回した。
どうやら倉科君とその女子生徒は相当仲が良いようで、お互い密着状態だ。
「金ないんだよなぁ。そうだ、レンタルで映画借りて誰かの家に集まろうぜ!」
「じゃあ俺も行く!」
周りの皆が手を挙げていく。
「じゃあ、AV借りちゃう?」
「エロ親父か、てめぇは」
倉科君が仲の良さそうな女子生徒の鼻をつつく。
あの2人、明らかに付き合ってる……
「付き合ってる風に見えるでしょ?あの2人」
「え?」
話しかけてきたのは、この島に来て初めて会話を交わした女性である、倉科麻奈美さんだった。麻奈美さんは、倉科君の義理の姉らしい。
「あの女の子ね、彼の幼馴染で名前は桜田美紅っていうの。でも幼馴染っていうだけで、付き合ってるわけじゃないから」
「え!そうなんですか?」
「そうなんですよぉ」
「うわぁぁ」
いきなり桜田美紅さんが私の隣に座ってきた。
「よろしく……真宵ちゃんだったけ?美紅って呼んで」
「あ、うん。よろしく」
とりあえず笑顔を振りまく。すると、他の人たちも私の周りに群がってきた。
「よう、日向。いきなり人気者だな!」
私の様子を倉科君は遠くで見ながら笑っていました。