一話
・・・・ダッン!・・・・ダッン!・・・
俺は今、森の中にいた。
静寂な森の中で俺の射つ銃声の音が大きく響く。
そして、獲物は光となって消えていった…
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今、俺は母親の車に揺らされながら、目的地へと向かっていた。
「兄様、兄様、楽しみですね」
隣の少女から唐突に話しかけられた。
「そうだな」
その言葉に少し笑みが漏れた。
「私はとても楽しみです」
少女は満面の笑みを浮かべた。
隣で声をかけている少女は俺のこと“海原 龍也”の義妹の“海原 優香”だ。
優香は父の知人の娘で10年前に海原にやって来た。
優香の父親と母親は飛行機の墜落事故で亡くなった。
優香の家はは相当の金持ちらしく、親族と名乗る他人が金目当てで優香の元へやって来たのだそうだ。
その親族たちは誰が優香を引き取るかで喧嘩にも発展したそうだ。
親族たちは決して優香を見ておらず、優香の親が残した莫大な遺産しか見ていなかった。
それを見兼ねた、俺の父が激怒し、遺産を自称親族たちにくれてやり、優香だけを引き取ったそうだ。
「自分の身に何かあったら、優香を守ってくれ」それが優香の父親との約束だったそうだ。
そうして、優香は海原一家の一員になったのだ。
だが、優香は親が死んだことの悲しみと親族たちの行動に怯え、重度のノイローゼになっていた。
それから、優香は笑わなくなった。
小さい頃からの優しい笑顔が消え、何をしても無関心だった。
俺が中学生に入る頃、友達が面白いから優香にやらせてみろと言われたのでMMO-RPGを優香にやらせて見ることにした。
最初は無表情でやっていたが、次第に表情が変化し、前のように笑うようになったのである。
俺の父、母は泣いて喜び、俺もとても喜んだ。
それから、優香がMMO-RPGにドップリとハマってしまった。
俺は勉強や交友関係は大丈夫かなと心配したが、勉強では学年一位で友好関係も良かったから俺は何も言わなかった。
そして今年、軍のVR技術を使い仮想空間での実際の魔法や戦闘が出来るという夢のVRMMO-ROGのβテスターの募集をしていた。
これを義妹の優香が見逃すはずがなく、応募したら、当たってしまった。
それは良かったのだが。
何故か、俺にもVRMMO-RPGの招待状が来ていたのだ。
これにはとても驚いた。
俺は応募していないのだから。
優香が一緒に応募していたらしい。
そのため、俺も一緒に行くことになったのだった。
夏休み中の一ヶ月間、泊りがけで体験するそうだ。
優香はとても楽しみのようだ。いつもソワソワしていたのだから、分かってしまう。
「…に…ま……兄様」
誰かが肩を揺する。そして、目が覚めるのである。
「着きましたよ」
「ん?…あぁ……着いたか」
脳が再起動し完璧に目が覚めた。
俺たちは母親に礼を言ってホテルの中に入っていった。
俺たちは指定された、ホテルでチェックインを済ませ、会社からの説明会までの時間、優香のMMO-RPGの話をずっと聞いていた。
正直、疲れた。
そして、本社の大きな会場で説明を聞くことになった。優香は食いつく様に見ていたが、俺は寝ていた。
説明会の終わりに近づくと一人の男が出てきた。
名前は忘れたがこのVRMMO-RPGの【終わりなき世界】の開発責任者らしい。
その男は白熱する会場でこのVRMMO-RPGについて熱心に話していた。
最後に「存分に楽しんでくれ」と言った、瞬間、会場は爆発した。
その時に浮かべていた男の笑みは何か寒気のする様なものだった。
その後、優香はMMO-ROGの時のギルドのメンバーの所へ行った。
ギルドのメンバーの数人も当たったらしい。
俺はVRMMO-RPGが始まるまでの時間、バイキング方式の飯を食って、また寝た。
俺は目覚めて、時計を見た。時計は開始時間をかなり過ぎていた。
それを見た、俺は急いでVR機の元へ向かった。
さっき、優香から「寝坊しないで下さい」と言われたばかりだったので恥ずかしくなってしまった。
そして、受付を通して、VR機のある場所へとたどり着いた。
俺が見たVR機は棺桶のように見えたのは気のせいだろうか?
まぁ、そんなことはどうでもいい。
さっさと入ろう。
俺はVR機に入り、扉を閉めた。
そして、目を閉じるという指示が出たので目を閉じた。
オープニングの様なものが流れ、俺は地に立った。
俺は始めてVRMMOをやるので良く分からないが…俺は何処かのボロい家の中にいた。
何かおかしくない?
【現在ステータス】
名前:RYU
性別:♂
職業:無職Lv1
〈スキル〉なし
〈称号〉なし
所持金:5000コルド
楽しく読んで頂けるように頑張ります。
よろしくお願いします。