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5回裏:父 勇の過去

書くのに2、3ヶ月もかかっちゃいました○| ̄|_

 信護の父、勇は信護が入学する19年前に朱佐多中学校に入学した。


 幼少の頃から野球選手を目指していた勇は中学校に上がっても野球部に入ろうと思っていた。


 そして入部届けを出す為に、職員室に向かった。




「えぇっ!この学校って野球部無いんですか!?」

 職員室に勇の声が響く。

 運悪く職員室に居合わせた先生達はびっくりして耳を塞いだ。あまりにもびっくりして椅子から落ちた先生もいた。


「うるさい!えっと名前は確か神野だったな。そのくらいパンフレットに書いてあっただろう」


担任の秋山鉄太郎は耳を塞ぎながら言った。


「すいません。パンフレットなんかあったんですか?」


「一応な。ま、野球部が無いんなら作るしかないよ。頑張れよ〜」


秋山は面倒くさそうに言うと席を立ち職員室から出ようとする。


「ちょっ、ちょっとどこ行くんですか」

「どこって帰るんだよ。じゃあな」


勇が慌てて引き止めるが秋山は逃げるように去って行った。


 ・

 ・

 ・

その後、勇はブツブツ文句を言い下校していた。


「ハァ……何であんなに大人は無責任なんだ。手伝ってくれてもいいじゃないか。ん?」


ちょうど空き地にさしかかったとき急に勇の足が止まった。

そこはド○えもんに出てくる空き地のように土管などは無く、イチョウの木だけしかない綺麗な空き地だった。


「ふーん。こんなとこに空き地なんてあったんだ。ヨッシャ!ちょうどいい。壁当てでもするか」


勇は毎日持ち歩いているボールとグローブを出して、元気に壁当てを始めた。


しかし、30分程すると壁当てを中断して休憩する為か隅にあるイチョウの木に向かって歩きだした。

「一人で野球はつまんないなぁ。探さないと」


勇はその木に向かってボールを投げた。


しかしその木の陰には人がいたのだ。


「あ。外れちった」



ボールは木から少し外れ、一直線に隠れている人物に飛んでいく。

「って、人いたのかよ!危ねえぞ!!」

勇はボールが当たる瞬間に目を逸らした。


「うわっ○×☆∞@※▼!!」


その人物は意味の分からない言葉を叫びながら、手で頭を庇う。


……パァーン!!


ボールがグローブに入る時のいい音がした。


そこに居たのは勇と同い年くらいの少年だった。


そして、ボールが当たると思った瞬間に少年はグローブでボールをキャッチしたのだ。


「……はぁ?グローブ持ってんのか。良かった」


勇は額の汗を手で拭いながら言った。


「でも、何でそんな所に居たんだ?キャッチボールがしたいんなら言えばよかったじゃん。キャッチボールしようぜ」


少年はボールが入ったグローブを胸の前で抱き締めて、俯いている。


「野球しよう!!」


少年は決心したように息を吐いた。



「ぼ……僕……野球したこと……ないけど……いい?」


少年の言葉はとてもか細い声だったが気持ちは籠もっていた。


「いいに決まってんだろ。野球は片手しか動かない人でも、下手な人でも、極悪人でもやっていいんだからね」


勇は笑いかけながら少年の手を握った。ボールが落ちて地面で跳ねる。しかし2人はそれに気付かないようだった。


少年は勇の一言で右頬にエクボを浮かべて笑った。とても印象的な笑顔だった。


「フフッ。ちょっと大袈裟過ぎだよ。僕は浅野忠信。これからよろしく」


「俺は神野勇。よろしく」



2人はその後、朱佐多中学校には無かった野球部を創り、沢山の大会で優勝をしていった。


──ということだったんだ。んで、優勝の時に取材が来たんだって、父さんが言ってた」


「要するに、朱佐多中学の野球部は信護の父ちゃんが作ったと……」


茂憲がワザと言葉を最後まで言わずに切って質問した。


「うん。そういうこと。最近の野球部は弱いけど、俺たちでまた強くしよう!」


信護は拳を握り締め空へ振り上げた。


「そうですね。でも、強くするだけではなく日本一を目指しましょう」


突然5人の背後から声がした。


5人は声の主を一斉に振り向いた。

その光景は、5匹のプレーリードッグが警戒して遠くを見渡しているようだった。


「「「「「あんた誰?」」」」」


見事なタイミングで同じ言葉が重なる。


声の主はぺこりと頭を下げて質問に答えた。


「失礼しました。私の名前は勅使河原 閃と言います。守備位置はショートです」


勅使河原 閃と名乗った人物は雑誌からそのまま出てきたような整った顔をしていた。髪の毛は漆黒で、これまた雑誌から出てきたような今風の髪型をしている。

その上、背はここにいる6人の中で一番高く、180センチはあるだろう。


誰もリアクションを返さないので、閃は困った顔で一番近い和希に手を差し出した。


「宜しくお願いします」

「あ、宜しくお願いしますです」


和希は突然のことで混乱して不自然な敬語になってしまっている。


閃以外の5人は閃の動作ひとつひとつで全く同じ感想をもった――西洋の貴族だ――と。


ふと、詩緒の頭にひとつの疑問が浮かんだ。


「えっと……勅使河原さんは何年生ですか?」


「ん?私は1年生ですが何か?」


「エ゛……マジ?」

「うわぁ……」

「うおぉい!詩緒しっかりしろ!」

「「同い年かよ!」」


その言葉に一人でグラウンドに入ろうとしていた剛士の動きが止まり、詩緒が倒れそうになり、信護は詩緒を支え、和希と茂憲はツッコミをいれた。


「フッ。さて、野球部の先輩方に挨拶してきましょう」

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