最後の出席番号
掲載日:2026/08/06
誰もいないはずの席から届いた小さな返事。名簿の赤字が意味するものを、まだ誰も知りません。
静けさの中に潜む違和感と恐怖を、どうぞお楽しみください。
薄暗い教室の隅、誰も座っていない一番後ろの席。欠席続きの三十四番、佐藤さんの名前が呼ばれる。
「はい」
返事と共に、ひんやりとした風が首筋を撫でた。教壇の担任も、クラスメイトも気づいていない。名簿の三十四番の横には、赤字で小さく**「没」**と書かれていたことを。
隣の席の僕だけが、誰もいないはずの机の上に、すっと現れた濡れた黒髪を見つめていた。
佐藤さんはゆっくりとこちらへ顔を向け、青白い唇を歪めて囁く。
「ねえ、私のこと、見えてるんでしょ?」
【了】
『限界少女の冷却日誌』を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
誰もいないはずの席、そして名簿に残された赤字――物語の底に潜む静けさと不穏な空気感を、少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。
最後の一言が残す余韻や、日常が静かに崩れていく恐怖の感覚を大切に描きました。
ここまで作品を温かく見守り、付き合ってくださった読者の皆様に心から感謝申し上げます。また次の物語でお会いできることを楽しみにしています




