プロローグ
部屋の隅。まともな光も無いそこで、少女が独りうずくまって泣いていた。
「タイムマシン?」
「そうだね。意識だけの転送だけど。」
混乱している。
自分はさっきまで家に帰る途中だったはずだ。
それがいつのまにかここにいて目の前にある機械の説明を聞かされているのだ。
混乱しないはずが無い。
「あの」
「なんだい?」
失礼な気もしたが、誰かはっきりしないので暫定的に"それ"と考えることにした目の前の存在に、ひとまず質問してみよう。
「ここってどういう所ですか?」
まず出てきた疑問はそれだった。なんというか…
抽象的なのだ。何かしらのスペースということはわかる。床が『床』ということもわかる。だが、それ以外の具体的な情報が頭から抜け落ちている感覚があるのだ。
「簡単に言えば、『私の意識』がある所かな。詳しく知りたいかい?」
「知ることが出来るなら知りたいですけど、それって哲学的な話になりますか?」
「いや、君が思うよりは具体的だよ。ここは私の体の中の、君が分かる言葉で言うと、脳のそれも意識
と定義されているような反応をする部分で、君は他の部分を介さず直接刺激を与えて私と対話していると言うことさ。」
???ますます分からない。
「、、、あなたはどういう存在なんですか?」
「君の存在する世界が体内にある生命体、かな。」
! 状況は理解出来たかもしれない。
「なんとなくわかりました。次は、なぜこういうことをしているのか知りたいんですけど、教えてくれますか?」
「ああ、実はそれが本題なんだ。詳しい事は言えないけど、君の意識を過去の君自身に転送する必要が出来たんだけど、そのためにはこれを使うのが手っ取り早いんだ。」
そう言ってそれは隣にある機械を指した。
「まあ、わかりました。」
そう応えて、自分は機械に入る。
「じゃあね。もう会うことはないと思うけど。」
とそれは言った。
そして自分の意識はそこで一旦途切れた。
彼は、過去に行ったのだろう。
自分自身の中に世界があると私が気づいたのは1年程前だ。その世界は私が何でも出来る所だった。
ある時、誰かをタイムリープさせようと考えた。
詳しい事は言えないと彼には言ったが、暇だったという理由を素直に伝えるのは野暮だろう。一応彼が断ることが出来ないように直前以外の記憶を曇らせておいたが、そっちに行けばそれも晴れるだろう。
彼はどのような物語を演じるのだろうか。
それはまた別の機会に考えることにしよう。
とにかく、良い旅を。
・・・どうやら過去に戻れたようだ。
そこで自分は気がついた。自分以外の周りが、
"まだ出来ていない"ことに。
ああ、やはり。"それ"は、神のような存在なのだ。
そして自分の過去はまだ作られていないのだと、
思ってしまう。そのうち周りは作られるだろうが、それまで一体どのくらいの時間がかかるだろう?
1週間?1ヶ月?1年?もしかしたら忘れられて永遠に作られないかもしれない。このままでいることが自分にとってどれだけの苦痛になるかは想像がつかない。そして自分は覚悟を決めた。
「夢でも幻でもいい。ここから脱してみせる。」
響かないその発言を、"それ"が設定していたかは、あまり重要ではない。
続かない




