第7話 偽りの羊、剥がされる皮
教祖の個人フォルダから引き出した次なる犯罪計画――それは、日本国内の生活困窮者や身寄りのない高齢者の戸籍をハッキングで乗っ取り、潜伏する大量の不法滞在者たちに「合法的な日本人の身分」として割り振るという、国家の根幹を揺るがす恐るべき背乗り計画だった。
「日本人の血と歴史を、偽造書類一枚で盗み取ろうなんて……。どこまで傲慢なら気が済むの」
怒りでイザナミの身体が小刻みに震える。
彼女は椅子の背もたれに頭を預け、天井を仰ぎ見た。
部屋を支配する熱気と激しい憤りで、彼女の肌は薄桃色に上気している。キャミソールの胸元は大きく開き、鎖骨のくぼみに溜まった汗が、呼吸のたびにきらきらと光を反射していた。彼女は自らの熱を逃がすように、ホットパンツの裾から細い指先を滑り込ませ、太ももの内側を軽くさすった。ひんやりとした指の感触が、狂いそうな脳をかろうじて現実に繋ぎ止める。
「神聖なるこの国に生きる資格は、この大地を守り継いできた者たちだけにしかない。お前たちのような犯罪者に、一寸の土地も、一つの名も渡さない」
イザナミは再び鋭い眼差しで画面に向き直った。
教祖の計画を実行に移させないためには、彼らが裏で操作している戸籍管理システムのダミーサーバーを完全に破壊し、同時に彼らが保有する「身分洗浄待ち」の不法滞在者データをすべて消去しなければならない。
彼女の指先が、怒濤の勢いでキーボードを叩き始める。
教団のサーバーへ、データの断片化と自己崩壊を促す超強力なロジックボムを送り込む。
だが、教祖側も破れかぶれの抵抗を見せた。彼らはサーバーの全出力を回し、イザナミの通信経路に向けて、暗号化された大量の不正ログを逆流させてきたのだ。
画面が激しく明滅し、イザナミの視界が白く染まりかける。
「くっ……! はぁ……っ、あ、あぁ……!」
神経を逆撫でするようなパケットの波動が、彼女の身体を硬直させる。
イザナミは奥歯を噛み締め、背中を弓なりに反らせた。衝撃が体を駆け巡るたび、キャミソールの下で柔らかな胸が激しく形を変え、彼女の小さな唇から秘めやかな艶っぽい喘ぎが漏れ出す。精神の限界を超えた領域で、恐怖と怒り、そしてハッキングという行為そのものがもたらす圧倒的な支配感が、彼女の肉体に強烈な快感を突き刺していく。
「消え……なさい、害獣ども……っ!」
トランス状態に陥ったイザナミの指が、キーボードの上で残像を残すほどの速度で舞った。
彼女の放ったカウンター・コードが、教祖の逆流データを力任せに圧し潰し、その通信経路を辿って教団のバックアップサーバーを次々と内側から爆破していった。
画面に表示される、すべての計画データの「完全消去」の文字。
「はぁ……はぁ……、っ」
イザナミはキーボードから手を離し、ぐったりと机に突っ伏した。
濡れた黒髪が机に広がり、乱れたキャミソールから覗く白い背中が、激しい呼吸で上下している。
教祖の野望の翼はもぎ取った。だが、まだあの「本尊」を物理的に引きずり出してはいない。イザナミの次なる一手は、教祖の潜伏場所を完全に包囲することだった。




