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1日目 嵐山【前編】

8/2 天気:晴れ

7:50 JR名古屋駅

銀時計前に着いた。夏休みだからか、駅にはもう人集りが出来ている。

凛ももうそろそろ銀時計に着く頃だろう。さて、どう言いがかりをつけて文句を言ってやろうか


7:55

「遅い」

熟考した末に、真っ向から理不尽を突きつけることにした

「5分前なんだけど」

「そうか。で?」

「理不尽の権化ねアンタ…」

「全く…今度は遅れんなよ。で、はい、これチケット」

「だから5分前だって…ちょっと、置いてかないでよ」

うだうだ言っている凛を置いてさっさとホームへ歩き始める。

慌てて文句を言いながら凛も走ってついてきた。

「それで、どの新幹線に乗るの?」

「8:13発のひかり 631号だな」

「了解。因みに、どうしてスマートEX使わなかったの?」

今は、スマートEXというネットから新幹線の予約が取れる便利なツールがある。

「使い方わからんかった」

「えぇ…」

「あと凛のICカードのID分からんかった」

「そういうことね。納得したわ」

というのは建前で、実際のところは俺がただ機械音痴なだけなんだがな

「うん?でもママに連絡取ってるならそこで聞けば良いんじゃ…」

「…」

「やっぱりただの機械音痴じゃ…?」

「…チッ」

「あ!今舌打ちした!」

「君のような活きのいいカキはフライだよ」

「私カキじゃないわよ」

「カキフライ食べたい」

「本当自由ね…」

その後も駄弁りつつ、新幹線を待っていた。


8:13 名古屋駅 ひかり631号内

「いやー新幹線なんて久しぶりだな」

「確かに…ここらへん、割と便利だからあんまり県外出ないのよね…」

名古屋市は一応日本三大都市の一つなので、なんだかんだものは揃うので旅行以外であまり県外には出なくなりがちだ。後は、愛知県は車社会だからというのもあるかもしれない。

「京都で何処か見て周りたいとことかあるか?」

「清水寺とか行きたいわね」

「それはもう予定の中に入ってる。他は?」

「うーん…」

「…はぁ、全くコレは遊びじゃないんだぞ。部活動何だから、事前に調べとかなきゃ…」

まあ、調べる隙を与えなかったのは俺だけど。

「アンタが!調べる時間を!与えなかったんでしょうが!」

「新幹線内ではお静かに」

勝ち誇った顔で笑いながら言うと、悔しそうな顔をして黙り込む。

黙り込んでいるのを良いことにしばらく煽り倒してたらスネを蹴られた。痛い。

「――全く…とりあえずはお任せするわ。どうせもう調べてきてるんでしょ?」

まあ、流石にね?

「なら、最初は嵐山にしようと思うんだが…」

「嵐山…?」

「ゑ?知らんの?」

「一々腹立つわね…」

「煽らないと死ぬ生き物なので…」

「あんたはマグロか!」

「それはさておき、嵐山は渡月橋なんかが有名だな」

「あー、あの景色が綺麗な」

…あ、やべ

「…綺麗かどうかはわからんが」

「…?」

「い、いやそれで次の予定なんだが…」

…渡月橋の川、今工事中なんだよね!!!


9:06 京都駅

人波に揉まれながら何とか改札口を目指す。

「さすがに夏休みは人が多いな…」

「本当にね…篁、はぐれないように手でもつなぎましょうよ」

凛が意地の悪い笑みを浮かべて言ってくる。その程度で俺が揺らぐわけなかろうて

「じゃ、そうしようか。ほら急ぐぞ」

「…ちょ、待って、速い!速いってえええええ!」

生意気なやつには、ちょっぴりお仕置きだぜ…ククク

…少し耳が熱いのは、きっと人が多いからだ、きっと。


9:11 JR嵯峨野線・園部行

「で、あたしあまり嵐山について知らないんだけど、どういう所なの?」

「なら目的の駅につくまでの間、少しだけ説明をしてやろう」

「ずっと上から目線ね…」

というわけで…

「教えて!篁先生――――!Foooo!!Yeah!!」

「大人しく説明もできないのかアンタは」

では早速説明しよう


時は遡ること平安時代。

嵯峨天皇が離宮嵯峨院(大覚寺)を建てたことにより天皇家ゆかりの地として、また皇族や貴族の別荘地としても栄えたそうで。

そして鎌倉時代初期にかけては、藤原定家が編纂へんさんしたとされる小倉百人一首など、雅な文学の舞台となり、たくさんの貴族文化が花開いたっつーわけだ。

有名な観光名所としては、古典文学にゆかりのある「祇王寺」や「野宮神社」、世界遺産登録された名刹「天龍寺」、十三まいりで有名な「虚空蔵法輪寺」など多数あってな…まあ多分今日は行けないと思うけど。

「え、行かないの?」

いやー結構距離あるからね、お土産とかも買い歩きたいなら時間的にしょうがないね。

それから、嵐山のシンボルでもある「渡月橋」は、836年に造られたとされている。

元々は「法輪寺橋」と呼ばれていたが、満月の夜に舟遊びをしていた亀山天皇が、曇りのない夜空に月が橋を渡るようなさまを見て「くまなき月の渡るに似る」と詠んだことから「渡月橋」と称されたと言われているそうだ。


「───というわけだ」

「渡月橋の名前の由来、中々おしゃれでいいわね」

「こうやって歴史的背景を知ったうえで実際に行くと中々おもろいんだよな…」

「本当にね…それと、詩に詠まれる程の美しい景観…尚更楽しみね、篁!」

「…」

…俺が悪いわけじゃないけど、なんかこう、ちょっと罪悪感が

「…篁?」

「あ、ああ、そ、そうだな…」





後編は明日投稿予定です

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