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7話『肝っ玉母ちゃんのマイルーム』

 ちょっと待て、いや待って本当に……


 自分で授かったジョブスキルが、とても珍しい物だと言うのは、レオが魔王として覚醒した日に嫌と言うほど理解した。


 前例のない特殊なジョブスキルだけでも困惑しているのに、【祝福】大地母神の寵愛って何よこれ!?


 よくよく確認すれば、端っこの方に小さく追記があるようだ。


 【祝福】大地母神の寵愛

 大地母神の寵愛を受けると母性本能に補正がかかる。

 

 ……あっ、察してしまった。


 自分よりも幼い子や弱いと認識してしまうと、ついつい守ってあげたい衝動に駆られ、何度レオに呆れられた事やら。


 母親とはぐれた子どもを見かければ一緒に捜してあげたり、迎えが来るまで隣で座って待っていてみたり。


 孤児を見つけては孤児院に連れてきて、シスターになんどため息をつかれたことか……。


 孤児院だって無限に子どもを養うことなんて出来やしないのに、それでも見捨てることが出来ず連れ帰った。


 そうかスキルの影響だったのか!とまぁ、自分にとって都合よく解釈しておこう。


 なんにしてもこれからの人生、この祝福とスキルといかに上手に付き合って行くかが今度後の課題よね。



 どんなスキルだとしても孤児院での経験がスキルに反映されているのならば、日常の延長と同じでしょう。


 「とりあえず『肝っ玉母ちゃんのマイルーム』」


 ぼそりと小声でつぶやくと、目の前にどこからともなく木製の扉が姿を現した。


 いやいやいやいや……どっから出てきたこの扉。


 恐る恐る扉に触れるとさして力も入れずにゆっくりと引き戸が開いた。


 残念ながら扉の向こう側は引き戸を境界にして空間が歪んでいるのか見ることはできないようだった。


 とりあえず近くにあった木の棒を境界の歪みに差し込んでみたり引き出してみたりしたものの変化はなかったので、覚悟を決めて自分の右手を、その次に身体ごと歪みに踏み込んだ。

  

 閉じていた目を開くと広がっていた空間の広さに息をのむ。


 エミーが暮らしていた孤児院がすっぽり三軒は入りそうな空間が広がっていた。


 孤児院と似た建物が一軒向かって右側に建っており、真ん中にむき出しの地面、残りの敷地の半分を日当たりが良いふかふかの畑によさそうな土地と綺麗な湧き水が壁から出ており、小川が池へと続いている。


 その光景に背負っていた荷物を入口のわきに置き、池を覗きに向かえば池の底にある穴から魚が出入りしているようで食べ応えがありそうなお魚が泳いでいる……意味が分からん。


 マイルームというより孤児院つきの箱庭じゃん!


 そのまま建物を確認してみたけれど……エミーの記憶通りの間取りが広がっている。


 残念なことは家具の類がないことだろうか。 まぁもともと孤児院にはろくな家具もなかったけどね。


 それでも使い慣れた厨房や洗濯に使っていた井戸と洗い場があるのはありがたい。


 トイレは……ぼっとんトイレの先が歪んでおりどこかに消えていく謎仕様。


 ここで暮らせちゃうんじゃない?


 とりあえず重い荷物を背負って移動しなくて済みそうで安堵する。


 検証が必要だけどエミー以外が立ち入れないのならば避難場所として機能する。


 荷物の鍋やお玉を厨房におろし、重い食料やらなんやらも収納して軽くなった荷袋を背負いなおして扉から外へ出る。


 空いたままの扉を閉めれば、扉は初めから何もなかったかのように消えて行った。


 あまり人に知られないほうがいいよね、異空間スキルはあたりジョブスキルとしてその容量にもよるが商人や軍から引く手が絶えない。


 断言できるけどあの『肝っ玉母ちゃんのマイルーム』は規格外な予感しかしない。


 レオに再会する前に絶対に厄介ごとに巻き込まれる自信しかない。 そしてなにより備品が圧倒的に足りない!


 むむむぅ……とスキルが表示された空中を睨みつけていると、ザワリと周囲が色めき立った。


 どうやら勇者ご一行が正門に着いたらしい。


 悩んだ末にエミーは露店へと走って戻ることにしたのだった。


 


 

 

 



 


 

 

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