11話『マイルームマジ万能』
「あはは、せっかくだから全部屋確認しておこうかな」
農具倉庫の扉を閉めて後ろを振り返ると明るく照らされた孤児院の姿がはっきりと見て取れる。
そう、夕食を食べ終わり片付けを済ませた時点で太陽はすっかりおちて夜になっていた。
篝火をばんばん焚き上げている中でお花摘みと言って出てきたのだ。
なのにマイルーム内はまるで昼間のように明るく外も孤児院内も差し込む光と、謎の光源が外の光が届かない室内を明るく照らし出している。
うん、謎すぎる……まあ動きやすくていいけど。
孤児院内の各部屋を改めて確認してみて、なぜかベッドや寝具類、家具類がエミーの記憶のままに残っていた。
うん、助かるよ。この広さの建物に家具類寝具類、粗末ではあるもののリネン類がひとそろえ揃っているので、少しずつ買い替えていけばいいだろう。
正直いちからそろえるのは正直骨が折れるもの。
これならもしも不測の事態が発生したとしても、マイルームを避難所にすることが出来るかもしれない。
四六時中カンカン照りなのが玉に瑕かな……
孤児院は実は簡易診療所のような設備もあったので、もしやと思い覗いてみれば、多くはないものの薬草やケガの応急処置くらいは可能そうだ。
うん、これなら最悪魔物や山賊に出くわしても、ほとぼりが冷めるまでマイルームに引きこもれば安全の確保はいけるかもしれない。
あとは外に野菜やよく使う薬草、少し珍しい薬草なんかを栽培できれば、マイルームは無敵の要塞拠点になるんではなかろうか。
考え事をしながら孤児院の玄関に向かい、ふと視線をあげると出入口の脇に不思議な模様の絵があった。
二重の円になっており、外側の円は二つに分かれており太陽と月が描かれている。
そしてその内側にある円は四つに分かれており絵は晴れ、雨、曇り、雪……いやいやいや……曇りと雪はいらなくない?
どうやら外円から内円の中心に一本ある棒に意味がありそうだ。
現在棒は外円が多分昼を示す太陽と、内円がこちらも晴れを示す太陽マークになっている。
「これ、動かしたらどうなるんだろう?」
好奇心が抑えきれず、とりあえず外円をくるりと回して月マークの範囲に回すと外が暗くなり、外に出て上を見上げれば一面のの星空と月が暖かな光を放っている。
そろそろと孤児院内に戻り、夜のままだと周囲が見えにくくなるのでもう一度外円を太陽エリアに戻す。
確認のために外を覗けば太陽が燦燦とマイルーム内を照らし出していた。
「ふふふっ、うふふふふっ」
内円をくるりと雪マークに合わせた。
今マイルーム外は秋、雪が降る季節にはまだ早い上に、昨年の冬に氷室に蓄えられた雪は高値で取引され、夏場ですべて消費されたはずなのだ。
もし厨房の隣の食糧庫を雪で冷やすことが出来れば、野菜や傷みやすい食品の保存期間を延ばすことが出来るんじゃないだろうか?
もしかしたら雪が売れるんじゃないだろうかと頭の中に浮かんできたのだ。
幸い今は畑に何も植えていないので、雪が降ったところで霜に当たり枯れてしまう心配をしなくて済む。
ね?やるなら今じゃない?
外に出れば空から白い雪がしんしんと降り、既に地面の一部が白くなり始めている。
雪エリアに合わせたからだろうか、マイルーム内の温度も急激に下がってしまった。
「寒い……マイルーム内から外に出よう……」
両腕をさすりながらエミーはマイルームから外に出た。




