こんなミッキーは嫌だ。
「あっミッキー」
付き合って6か月、目じりが下がっておっとりしている彼女が指さす。
ここのテーマパーク何かと高価だが、彼女のはしゃぐ一面を見られて甲斐があったなぁと感じる。
「写真撮りたい」
肩掛けのサックからスマホを早速取り出す彼女。
可愛いなぁ、と思いミッキーを呼びに行くと快く協力してくれた。
どうせなら俺も写りたかったが、スマホ越しに彼女が喜ぶ姿を見られただけで満足だ。
「はい、チーズ」パシャリ。
3枚程撮って二人に近づくと、ミッキーがジェスチャーで何かを伝えてきた。
身振り手振りの中で彼女が「あっ、岡ピとも撮ってくれるんじゃない。」と答えを出す。
「うんうん」と大きく頷くミッキーに、少し照れ恥ずかしかったが、撮ってもらうことにした。
ポーズはミッキーと肩を組んでのものだ。
男と男の友情のように肩を寄せ合い、彼女が構えるスマホのレンズを見つめる。
撮られる瞬間、目の乾燥と戦いながら笑顔を張り付けていると、横から、裏声のような高さで、俺にだけ聞こえるように語り掛けてきた。
「お前年収なんぼ?ん?」
ん?え?動いていないはずの口で何言ってんだ?
好奇心のようなものが働いて真面目に答えた。
「790万くらいですけど」
その方が面白いと思ったのだ。
すると、すかさずミッキーが
「本日31位」
とおそらく他には子どもでも聞こえないだろう小さな、甲高い声ではっきりと発表してくる。
表情が変わらないミッキーから愉快さを感じる。
少し不愉快だが、ブラックジョークみたいで面白い。
「一位はねぇ」
ミッキーもレンズを向いたまま続ける。
「ミッキーだよ。ミッキーミッキー。」
ハハっと言い終わったタイミングでパシャリと音がした。
それからは何も言ってこないでバイバイ、とジェスチャーしてきたが、本当に夢を見てるみたいだった。
ミッキーは現実でも高笑いできるネズミだったのだ。
なんとなくそのツーショットは、生涯変えることなく待ち受けにした。
文章力向上させようと思って書きました。
なんでもいいのでコメントしてくれると満たされます。
気軽にリクエストしてくれると更に満たされます。
仕事の依頼とか何でも飛びつきます。靴とかなめるし。