幼なじみのパーティリーダーから追放だと宣言を受けた女の子の話
真実の水晶。それは手にした者の嘘を暴き、真の姿を露わにすると言われている、パーティリーダーのカイウスの発案で私達は真実の水晶が眠るとされている迷宮へと赴いた。モンスターにトラップを潜り抜け水晶を手に入れ脱出。今は鑑定のスキル持ちのザガルドが水晶が本物かどうか確認している所だ
「本物だ。これは確かに真実の水晶に相違ない」
鑑定を終えたザガルドから水晶を受け取ったカイウスは頭を掻いて申し訳なさそうに口を開く
「俺の荷物袋はいっぱいになっちまってな。すまないけどリアンが持っていてくれないか?」
確かにカイウスは金がないとか言って道中で見つけたアイテムを手当たり次第に袋に入れていたな。私の荷物袋にはまだ余裕がある……水晶を受け取った瞬間、手に高熱を感じた。なんだ!? 思わず水晶を放り投げる
困惑する私を鼻で笑いカイウスは水晶を拾い上げた
「……てめえはパーティから抜けろ」
突然の宣言を私は理解出来なかった。追放ということか……なんでだ? 私とカイウスは幼なじみで最初は二人で始めたのに。パーティメンバーの魔術師のメルアとシーフのザガルドに目線で助けを求めるが二人はただ黙っている。庇ってくれないのか? 特にメルア! お前とは一緒に風呂に入ったし、最年少だから可愛がってきたのに!?
「な、なんで? カイウス……私達一緒に頑張ってきたじゃない! ザガルドも何か言ってよ! メルア……貴女の事、妹のように思ってたのに……酷い!」
カイウスの腕に縋り付くも、彼は今まで見たことが無いような冷たい目で私を見下ろして、縋り付く私を乱暴に振り払った
「わ、私は。ずっと一緒に一流の冒険者になろうって貴方との約束を果たそうと努力してきた! 強化魔法や回復魔法で貴方達皆を助けて来たの! 漸くギルドの評価も上がってきて……これからなのに!」
もしかして、私の行ってきた事が理解されてなかったのか? このパーティが評価されたのは私のお陰だと言うのに!
「いや……てめえの働きは良く分かってる。昔から……ガキの頃からリアンには助けられてた。てめえの魔法の実力にも驚いてるぜ」
なら……何で?
「私の何が駄目なの!」
カイウスは憤怒の表情を浮かべている。私の何が彼を怒らせているのかさっぱりだ
「分からねえか?」
分からん。カイウスはゆっくりと私に近付いてくる
「それはなあ……てめえが。リアンじゃねえからだっ!」
体に衝撃が走る、殴られたのか!? 拳が見えなかった。カイウスはそのまま俺の上に乗り何発も拳を振り下ろした後、襟首を掴んで持ち上げる
「俺は、リアンに水晶を持っていてくれと言ったんだ。だが水晶はお前に反応した……それに、俺はガキの頃からリアンと一緒だった! アイツの口調、仕草、癖、全てリアン自身より分かってんだ……俺を騙せると思うなよ! てめえはリアンの体を乗っ取った何者かだ!」
そう言って俺の体を投げる、地面に強く叩きつけられ息が出来ない。苦しむ俺を見下ろしているカイウスは目付きだけでも俺を殺せる位に怒り狂っている! だ、だが俺だって言い分はあるのだ
「……バレたのか……だけど! 俺は転生したくてしたわけじゃない! 何時の間にかこの娘の体に入ってたんだ! 俺も被害者だろ!」
そうだ! 黙っていたのは悪いが、不可抗力だ……殴られるいわれはない! だが、カイウスは矛を納めるつもりは無いようだ
「てめえがその体で何をしたのか……知らねえわけじゃない……水晶なら戻せるかも知れないと思ったが……無理か……おい、てめえは二度と俺達の前に姿を見せるな!」
助けを求めようとメルアを見るが、彼女はザガルドの後ろに隠れてしまった。俺の豹変に驚いたようだ。メルアを庇ったザガルドが重い口を開く
「お前が誰かは知る由も無いが……リアンの体で男を誘うことに抵抗は無かったのか? リアンの真似が出来るなら彼女の記憶を持っているのだろう? カイウスに申し訳無いとは思わんのか!」
……それもバレてるのか。最初は一人で満足出来ていたが次第に女での行為に興味が出て来た。金も貰えるし一石二鳥だったのだが……何も言えない俺にカイウスはゴミでも見るような目を向けている
「……もういい。行くぞ」
吐き捨てるとカイウスは踵を返し、パーティの他のメンバーも続く。俺を捨てて帰るつもりか……ふざけやがって。俺は奴らにバレないように手に魔力を溜める。このままコケにされてたまるか
「……感謝すべきかなあ、この女結構可愛いし、いい声で喘いだし。気持ちよかったぜえ!」
俺の言葉を受けて弾かれたように振り向いたカイウスは、手に溜まる魔力に気付き剣に手を伸ばす。だが、遅すぎる! 俺の事を馬鹿にした報いだ! 魔法を放とうとした瞬間に体が動かなくなった。何だ……何が起こった。思案する俺の意識に他の奴が入ってくる感覚がある
「私の姿で、カイウス達を殺すなんて。絶対にさせない!」
意図せず口が動く。まさか……リアンの意識が! 消えたわけじゃ無かったのか!?
「リアンか!?」
カイウスが信じられない物を見たという表情を浮かべている。悔しいが俺も同じ気持ちだ、まさか俺の中に女の意識が封印されてたとは……だがなあ、この体の主人は今は俺なんだよ!
「カイウス、今の内に私を斬って! 抑えているのには限界がある!」
何を言いやがるクソ女あ! カイウスはほんの一瞬だけ躊躇ったが直ぐさま剣を抜いて突っ込んできた
「や、やめ……」
「このクソ野郎があっ!」
俺に向けて刃が振り下ろされ
リアンの首を切り落とした瞬間、魔術師のメルアが全力の炎の魔法を放つ。回復魔法で蘇生する可能性があるからだ……目の前で焼き尽くされ灰になる幼なじみの体を見て俺は膝から崩れ落ちた
「すまない……リアン……俺は……何もできなかった……!」
情けなく泣きじゃくる俺をメルアが抱き締める、彼女も嗚咽を上げていた
「カイウスは…何も悪くないよ……」
俺とメルアの背中に手が置かれる。ザガルドが傍らにしゃがみ込んでいた。彼の大きな手は震えているのが分かる
「リアンは我等を助ける為に最後まで戦った。勇敢な子だ」
そうだ……此処で嘆いているのでは命を懸けたリアンに申し訳ない。それにやるべき事がある
「帰ろう……リアンを……弔ってやらないとな」
出来る限り灰を掻き集め、俺達は歩き出した