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閏春

作者: 歓人

2月と3月の間で君は花に囲まれていた。

来年はみんな少し変わってるのかな

そう思いながら頬に着いた雨を拭き取る


「今年でもう1年になるのか」

眩しい電球を眺めてまぶたの裏で溶かす。今までを思い出しながら。おどけている君が懐かしい。

また息苦しくなって、視界がぼやける

悲しさと寂しさが入り交じった感情が、声にならない声になって出てくる。


僕の顔は少し変わったかな。あれから3年は経ったことだし、そろそろみんなも変わってるのかな。

君の顔を見る。"あの時"と変わらなかった。

鏡に自分と君とで写って、時間の流れに気づく。

「僕はこんなにも変わったんだな」そう言って、芽の付いた桜を見る


心地よい風と青白い雲

"あの時"と変わらない

顔も声も日付も…

ただ違うのは高くなった背丈と、大切な人がいることくらい


もうこんな時間か。


2月と3月の間で、君はまた歳を重ねる

送った二通と、手元にある十一通の手紙

春と冬の境に、僕は三通目を書いていた

雪溶けする一瞬、思い出で字が滲む

晴天の空、でも今は雨のせいに


また会いたいな


誕生日、おめでとう。









拝啓、大事な人へ


2月29日、私の生まれた日

私の1年はあなたの4年

ただ1人その時間を愛してくれた人

あなたをきっと今後何百年と、忘れることは無いでしょう。


あなたも同じならいいのに…

釣り合わない時間の中で、すれ違っていく。

時代と共にあなたも変わる。

また誕生日を祝って欲しい、でもあなたについて行くには私が遅すぎる。


あなたが私を置いて時間が経ってしまうのが怖い。私の中であなたの今を閉じ込めておきたい。

でも、どうか忘れないで欲しい。

あなたの中でも私は変わりたくない。

ただ今の一瞬を記憶に閉じ込めていて欲しい


この前の手紙で聞いたことだけど、今は守るべき人ができるでしょう。私と同じように大事にしてください。

私の見ない間に成長していて欲しいものです。

涙を流した時、降ってもない雨のせいにしないように…


あなたにもらった三通の手紙は肌身離さず持ち歩いています。この十二通の手紙はあなたの言っていた、お宝箱に入れていて欲しいです。


誕生日、おめでとう。

今日からはあなたが、ひとつ年上ですね。


またどこかで会えるといいですね、

どうかお幸せに。


敬具

一つ一つの単語を大事にした作品を作りたいなと思いこのような作品を作らせて頂きました。登場人物が場面で入れ替わって、それぞれのお互いの見え方を書いてみました。

これからも色んな作品を作っていくつもりです。色んな想像とコメントをしていただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 4年に1歳だけ歳をとる、時の流れが違うふたりの愛情は美しくもせつなくて、お互いの視点から語られるその言葉が胸を打ちました。 手紙でのやり取りというのもロマンチックだと思いました。 歓人さん、…
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