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御伽猫  作者: うるばっきー
9/9

 



 …………。



『おい。お前。にゃあに突っ立ってんだぁ?』




「…………あれ?……猫ちゃん?……私は……。猫ちゃんどこ?」


 


 いつもの気だるそうな声が聞こえ、私は意識を取り戻した。 と言うより意識を失っていた事さえ覚えていない。



 しかし、先ほどまで抱えていたはずの猫の姿は何処にも見当たらない。……そしてあの物体は何処に? そこには古びた神社の景色が広がるだけだ。 誰もいない。





 『んにゃあ。』



 

 「???」




 あれあれ?おかしいな。確かに猫ちゃんの声は聞こえるのだけれど。 ……と言うより感じると言うべきか。とにかく聞こえる。




 『とりあえず、帰るといいにゃ』



 それもそうだ。なんだかもの凄く疲れた。一旦帰ろう。 猫も大丈夫そうだ。なんとなくそう感じる。




 疲れているのに、私の身体は、足取りは何故だかすごく軽かった。





 家に帰りベッドに横たわる。考える。先程までのあの出来事を。考えれば考える程によくわからない。 夢か何かだとすればすっきり解決するのだが、そうとも思えない。





『にゃあ。あまり難しい顔をするにゃ』




「猫ちゃん? もう。ねぇ出てきてよ。心配したんだよ。もう大丈夫なの?」




『まあ。とりあえず休むといいにゃ』




 猫の言うとおり、正直いろいろと考えられないほどに疲弊していた。 もう何日も寝てないみたいな感覚にいつの間にか目を閉じていた。














 ……朝……いや、昼かな? だいぶ寝ていたようだ。時間の感覚がよくわからない。 相変わらず下着まで散乱しているベッド周りを見渡したが猫は居なかった。





 とりあえず裸だし、シャワーにでも入ろう。 今日バイトだったんだけどな。 なんて言おう……。 









「!!!!!!!」








 突如衝撃が走る。






 喋る猫を見た時よりも、更に大きな衝撃だった。




「ええええええ?! 何これ?どうなってるの?」





 鏡に映る自分に問いかける。 理解が追いつかない。 最近は追いつかない事ばかりである。




 確かにそこには私がいた。20数年見てきた顔だ。 そこには確かに私の身体がある。 だけどどうだろう。 確かに私が私たらしめる身体はそこにあるのだが、鏡に写るその姿にはおまけが付属されているというか。私たらしめぬ追加要素がプラスされていた。



 猫耳が。おそらく猫であるだろう耳が。尻尾が、そこにはあったのだ。



『やっと気づいたのか?鈍感と言うか鈍いと言うか』




「猫ちゃん?! ねぇこれって……」




『まぁボクも詳しくはわからにゃいんだけど、いつまでも端ない格好でそんにゃ所にいにゃいで、まずは湯浴みでもしにゃがら説明するにゃん。』





「そう……だね…………」











『まぁにゃんと言うか、わかりやすく言うと合体したにゃん』



「あの……猫ちゃん? 全然わからないんだけど」



『鏡をみたら一目瞭然だろう?そのままの意味にゃん。お前とボクは一つににゃった。ボクは自分で動かにゃくてよくにゃったから幾分楽ににゃって良かったにぁ』




「良かったって……全然良くないんだけど!どうするの?バイトとか……って言うよりこんな姿じゃ外にも行けないよ」



『まあにゃんとかにゃるだろう』



「……」



「ところで合体したって言うのに何で猫ちゃんの声が聞こえるの?」



『聞こえるって言うより感じていると言う方が近いかにゃ? ボクの声はお前にしか届かにゃいし、ボクの知識も本来お前の知識ににゃってるはずにゃんだけど』



「知識?全然そんな感じはしないんだけど……。って言うかなんでそんな事わかるの?」



『んにゃあ。前にも言ったがもともと僕はネコでもなければ身体を持たにゃい生命体だからにゃ。 ここへ来る前は宇宙の果てでたくさんの者たちと混ざっていたにゃん。いわば意識の集合体。それがボクたちの種族にゃん。 それがこの地球へ来た時に、お前に初めて会った時に、たまたまお前の認識がネコで、ボクはそう振る舞う事ににゃっただけにゃ』



『まあ、その影響は未だに出てはいるのだが、ネコになった事で得られた事も色々あるにゃん』



「んと、猫ちゃんは猫ではなくて、宇宙人で、セイシンタイで、合体してて……」



『まぁ、そのうちこの身体ににゃれれば勝手に知識として上書きされるだろう』



「あの、猫ちゃんは宇宙から何をしに来たの?」




『それは……後で話すにゃ』




 まぁそんな事よりも私は今、この状況を解決する事の方が重要だ。 重要なのだけれどそれよりも今はお風呂を堪能する方が大事だ。 私はそう言う人間なのだ。 










 鏡の前、私は何度も私を見る。 本来あまり鏡を見るのは好きでは無いのだけれど、見ずにはいられない。



「これはこれで……可愛い……にゃん」



 そう。私は単純なのだ。考えてもわからないと諦めた事はもう一旦置いておける性格だ。



 それよりも“今”を大事にしている。





 「この耳もモフモフで、しっぽもほらっ!なんかよくわからないけど動くの!」





『ご機嫌だにゃあ』




「んふーだって可愛いでしょ!こんなの世界で私1人だけだよきっと!なんかそう考えると得した気分になれるね」




『ポジティブな性格でよかったにゃ。お前』




「いいのいいの!難しい事は後で考えるから」




『それにしてもあのモノリス。お前あれと会話したのか?』





「へ?モノリス?」




『あの神社にあった柱の事にゃ』




「へぇ。モノリスって言うんだ。なんか聞いたことあるような?無いような? お話したのかはよくわからないけど、なんかよくわからない空間でよくわからない声が聞こえて……うん。たぶん話した」




『そうか。ボクは本来あのモノリスを正当な形でニンゲンに触れさせる義務があったにゃ。それが何年先か何百年先か何千年先ににゃるのかはわからにゃかったけどにゃ。だからその時まで隠しておく必要があったにゃ』




『隠していたつもりだったのだけれど、少なくてもあの時、初めてお前があれを見た時、お前とボクは少にゃからずリンクしていた。故にあれを目撃する事が出来たにゃ。 今とにゃってはリンクどころか一体とにゃってしまったんだけどにゃ』




「それって、そのモノリスのせい? そういえばあの時、猫ちゃんを助けたら私が死ぬとか何とか言ってたような。 ところでなんで猫ちゃんあそこで倒れてたの?」




『ああ。お前にも見えにゃいように結界を強化しようとしたにゃ。しかしまあ、失敗したと言ったところだにゃ』




『して、あのモノリスはお前を試したんだろう。進化に適した心を持っているのかを。別に死にはしにゃいだろう。元来モノリスは生命に新たな進化を授けるモノだにゃ。進化にそぐわにゃい場合。触れたとて何も起こりはしにゃいはずにゃ』





「ふーん。進化ねぇ。なんかたまごっちみたいだね。」




『たまご?にゃんだそれは』






「あ、そうだそうだ。洗濯しなきゃね」





 ともあれ私は日常を送る。これが進化だとしても、進化したのが私だけなのならば、社会に適応していかなければならないのはやはり私なのだから。……前より生きにくくなったなぁ。




 そんな事を思い洗濯をしようと服をまとめていたら、昨日来ていたパーカーのポケットから石?が飛び出した。






『これは……』






「あれ?これって……あの柱じゃない?ちっさ! 消えたと思ったらこんな所に」


 


『うーん。こんにゃ事は……。やはり完全ではにゃかったからにゃのか?』




「まあ、綺麗だし、アクセサリーにでもしちゃおっかなぁ」



『お前にゃあ……まぁ、にゃんとにゃく的を得ていると言うか、身に付けておくのは悪くにゃい考えだにゃ。にゃくすこともにゃいだろう』




 猫曰く長い歴史の中でこのような事例はないのだと言う。 きっと不完全な状態での進化、そして本来と違い、猫を媒体にした強制的な進化が原因らしい。 だから本来蓄積される猫の知識なんかも上手く上書きされないんだとか。 モノリスが小さくなったからなんだと、私は思うのだけどね。





 ともあれ私はネックレスにする事にした。猫耳と尻尾。それと綺麗なネックレスをゲットしたのだった。



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