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御伽猫  作者: うるばっきー
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ネコとチュールと全裸なワタシ



 鳥が鳴いている。カーテンの隙間から日差しが溢れている。どうやら今日は晴れのようだ。そういえば最近暖かくなってきたな。 寝ぼけている私の視線の先に、黒いモフモフのモノがあった。




「あっ!」



 そうだそうだ。猫ちゃん。 ……可愛い。

私の隣で寝てくれてたんだね。 …まあこの場合、私が隣で寝た。と言う方が適切ではある。



 それにしてもこれは……もしかしてチャンスなのでは? モフモフチャンスなのではないか。




 私はもう止まらなかった。 香ばしくも芳ばしい匂いを嗅いでしまった私は、ただただ本能に従うだけだった。




 私は左側にあるモフモフに顔を少しずつ近づけていく。 すぐにでも顔を埋めたい気持ちを何とか抑えつつ慎重に、起こさぬ様、このモフモフチャンスを成功させるため、全神経を使う私。 少しずつ……少しずつ……。


 



ーーーーモフ。




 ふわぁ。  私の顔は目標を捉えた。

 あまりにもあっさりと。……もうだめだ。抑えられない。 




 私は全力でスーハーする。顔を左右に押し付けながら全力でモフモフする。 何と思われてもいい。 嫌われたって構わない。 この時を、この瞬間を私は……私は………。




『にゃあにやってんだ。お前?』


 眠たそうに猫は言う。気だるそうに猫は言う。




「あっ。あの……お、おはようございます」


 私は顔をモフモフしながら挨拶をする。 もう止まらないのだ。嫌われたとしても。 私の愚行を気持ち悪いと思うだろうが、わかる人にはわかるだろう。 そう言う事だ。たまらんのだ。



 あれ?猫は反応しない。嫌がるそぶりを見せない。 すぐにでも猫パンチ、あるいは必殺のひっかくが発動するものかと思ってはいたのだが、これは…




『おい、ニンゲン。』



 私は身構えた。 猫からすぐにでも発せられるであろう罵倒の言葉を今か今かと待ちかねる。




『ボクは腹が減った。にゃにか用意するにゃん』



「そうだね。ーーーーあはははは」







『それと次に許可にゃく今のようにゃ気持ち悪い事をしたら……殺すにゃん』





「あはは…………はい」




 やはりダメだったようだ。思っていた反応とは若干違ったのだか、気をつけようと思った。 それにしても許可……許可さえ取ればOKなのか? そうなのか? そうなのだろう。と同時に思った。




 私はベッドから身体を起こす。 裸体を起こす。

 恥ずかしげもなく全裸体を起こす。

 何故全裸なのかって? そうなのだ。私はおそらく”裸族”という生き物なのだろう。 といってもこれは常にという訳でもなく、意識的にという訳でもないのだ。



 あくまで無意識下に行われる脱衣。 服を着て寝てはいるのだが、起きた頃には霰もない姿になっている。という訳なのだ。 そういう点で”おそらく”なのだ。  しかしこれが実家で寝ていても、はたまた友人、それに今はいないのだがかつての恋人など誰と一夜を過ごしても常時発動するのだから恐ろしい。



 そんな私の真の姿を見ても全く動じない猫には正直救われる。 気が楽だ。気軽に脱げる。…ではなかった。 今から私は服を着るのだ。



 服を着てコンビニに向かう。もちろん1人で。 家にはあまり食材がないのだ。 料理はあまり得意ではないからだ。 それに猫が食べれるような物もなかった。



 「あの猫ちゃん何食べるかな?」

 


 コンビニについた私は、普段は絶対的にスルーしている棚の前で悩む。 そこには猫缶的なやつとかまあ、いろいろあったのだ。




 まあ悩んでは見たもののよくわからないし猫の絵とか写真が挿してあるものを、それっぽいものをとりあえずカゴに入れる。 ついでに私もおにぎりを買った。







「じゃじゃーん!みてみて!いろいろ買って来たよ猫ちゃん」



 楽しそうに袋を広げる。 そう。楽しいのだ。 猫とはいえ、久々に誰かと朝食を食べるというのは良いものだ。





『にゃんだよこれ。これをボクに食せというのか?』


 猫は不満そうだ。いつも気だるそうにしているが、ますます、と言ったところだ。



「ダイジョウブだよ!ほら、猫の写真あるでしょ? ほらほら!」




『だからボクは……』



 嫌そうにしている猫に、私は最終兵器を出した。 これに関しては私も知っていた。 猫を飼ったことがない私でも知る兵器。チュールでる。




「ほらほら♪一口だけでも!クセになりますぜ猫のアニキ」


 楽しげにしてる私とは裏腹に猫は気乗りしていない様子だ。 しかし私の押しに負けたのか、あるいはこの兵器の誘惑か、猫は一口ペロッと舐めた。




『!!!!』


 逆立つ件、ビックリした表情。



『こ…これは…』




 そういうと猫は、私の右手に握られたチュールに貪り尽く。 グルグルーっと喉を唸らせながら必死に舐める。 まるで今朝の私のように全力だ。全力で本能のままといった感じだ。






『美味であった』



 あっという間に食べ尽くし、はっとした顔を見せたと思ったら、すぐにいつものように気だるそうな顔をした。だか少し目が輝いていたように思う。









それがただただ嬉しかった。




 


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