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御伽猫  作者: うるばっきー
2/9

はじまりのねこ

「お疲れ様でした」

その日も特段何もなく、平然といつものように、いつもと変わらずバイトを終え、帰路に着く私。



 夕方、綺麗な夕日、逢魔時。黄昏時。

こんなに素晴らしい景色は見た事がないと印象に残る夕日だった。


 太陽が沈む時、一匹の猫が通りかかる。




ーーーー黒猫だ。



黒猫は私の前で止まり、私の顔を一度見て素っ気なく、興味なさそうに横切っていった。



「かっわいいなぁー」



 連れ去りたい気持ちを抑え、普段通りの道を歩く。



 しばらくすると坂の上に神社が見えて来るんだけれど、その道を左に逸れると私の家だ。


 コンビニによる訳でもなく、真っ直ぐに直向きに進む私の前にまたしても猫が現れた。



ーーーー次は…子猫だ。白っぽい猫。



 白っぽいという曖昧な表現なのは、既に周りが暗くなりかけてのもあるが、ところどころ赤かったのだ。



 そう。赤い毛並みと言う訳でもあるまい。あれは血液…か。自身の血なのか返り血なのか。はたまたペンキか何かついてしまったのか。



 私は今すぐにでも抱きしめて抱きかかえ、病院なのか家に連れて行こうか。とりあえずは何とかしてあげたい。そう思った。

安易に安直にそう思った。



 結果から言うと、私のその想いも虚しく子猫は私から遠ざかってしまった。

 私の想いとは裏腹に、子猫は私を怖がってしまったようだ。ケガをしているのかしていなかったのかはわからないが、子猫とはいえ流石の身体能力だ。




 

 一瞬で私の前から居なくなってしまった。




 なんだか、今日は猫ちゃんによく会うな。

なんて思いながらまもなく私のアパートが見えてきた。




ーーーーその時だった。






『おい、お前』




!!!!!




私はビビる



私は声の方に振り返る



私はビビる



誰もいない…?




『にゃあにやってんだ?お前』



私はビビる



私は声の聞こえた方をみる…下を見る…



私はビビる



 今まで生きてきた23年間を疑うくらいにビックリした。



「え…えっと……猫?だよね?」

 



『ネコ?お前がそう思うのにゃらそうにゃんじゃにゃいか?』



 確かにしゃべっている。無愛想に、退屈そうに、それでいて真っ直ぐこちらを見て会話している。会って話をしている。この猫と。黒くて小さく細い体、緑色の綺麗な目をしている猫と。



 この時の衝撃はきっと今後の人生の中でもベスト3に入り続ける出来事だろう。




 『お前、さっきのネコどうしようとした?』




 相変わらず退屈そうに猫は話す。質問をしてきたのだ。




「え?さっきの…?さっきのって子猫の?」



 もう衝撃的な事で頭がいっぱいになりながらも私は答える。



「さっきの子なら…血が、血がついてると思って、怪我をしてると思って。だから、あの…助けてあげようと…」




『だろうにゃあ。だからお前は愚かにゃのだ。お前らニンゲンは愚かにゃのだ』


 黒猫は言う。無愛想に言う。愚かだと。愚かとはなんだろう? 助けてあげようと思ったのに愚かだと言われ。あまりいい気分ではなかった。




 愚か。その意味を考えるのをやめた。

確かに私は愚かな人間だ。それは否定しない。そんな事はわかっている。決して出来た人間だと胸を張る事は出来ない。




 猫が喋る事実を受け、それでもなお私は家の方へと振り返る。愚かと言われ、反論する訳でもなく振り返る。



 もういいのだ。これはきっと疲れているだけ。これは私の妄想。バイバイ猫ちゃん。



そう思い私は足を踏み出す。




『まぁ待つにゃニンゲン』


 引き留められる。猫に。黒猫に。



『あのネコはお前が助けてやらんでも、全然にゃんともにゃかったにゃあ。だけどお前の純粋な気持ちは伝わったにゃん。偽善的でも不純的でもにゃい純粋にゃ気持ちがにゃ。』


『こんにゃニンゲンもいる…』




 私は困惑した。



なんだなんだなんだなんだ?

何が言いたいんだこの猫ちゃん。




『まぁよろしくにゃニンゲン。ボクはしばらくお前について行くにゃ』






ーーーー私は困惑した。






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