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反逆のロッテ  作者: ドロガメ
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ロッテ、押しかけ従者に困り果てる。

 ロッテ、押しかけ従者に困り果てる。




「このような! っ! あちっ ハフハフっ うまうまっ 美味しいモノがっ あるなんてっ」


「うみゃみゃ~~っ! ミャウミャウっ うみゃっ~」


 ロッテ達の眼の前で、人型の獣人へと姿を変えた二十代後半かと見える褐色の肌の若い女が、焼き鳥のタレで味付けされた炭火焼きに夢中になってかぶり付いている。

 その横では、子猫にしか見えないその女の娘が、同じように肉に食らいついている。


 粗末な服を着ていても一見、色香の乗った妙齢の夫人に見える女が必死で肉にかぶりついている。

 あまりにもの目の色を変えて、食らいついている様に食い意地の張ったロッテでさえも固まった様にその食いっぷりを眺めている。


 怪我の出血で意識を失いかけていた女を、美月のポーションと魔法により治療を施したモノの、今度は空腹のあまりへたり込んでしまった。

 子猫の方は、我関せずと先ほどから勝手に肉に食らいついている。




「お姉さん、良かったらお肉、食べる?」


 ロッテの言葉を待っていたかのように。


「えへへっ よろしいので! 通りすがりの者に怪我の治療を施して頂いた上に、御相伴まで預かりまして。…………いただ…モグモグ…!……これはっ!!……ハフハフ」


 意識が戻りその治療の礼を言いながらも、その眼は焚火の肉に釘付けになっていた女。

 余りの空腹に耐えかねていたのか、礼もソコソコに子猫と一緒に肉にむしゃぶりついている。

 そこそこに食べ進めるうちに、その味付けにも打ちのめされたのか、涙さえ浮かべていた。


 太い骨付き肉をまるまる一本食い終わると、ほっと一息ついてその手にある肉の削げた骨を眺めてはダンマリと考えに沈んでいる。

 何事かの辛い境遇から逃げてでもいたのだろうと、美月も話し出すまで静かに待っている。


「申し遅れました。名乗りもせずハシタナイ。私は、この森の集落に住むジャオクゥと申します。其処な娘は、猫の様な出で立ちながら名はジャーナ。」


「私は見ての通り、森では動きやすいクロヒョウの姿、そして人型ではこのような出で立ちの女の姿に変わることが出来ます。娘はまだ幼く人の姿に変化する事は出来ず、暫くはその姿のままでございます。」


 美月も初めて見る種族なのか興味を引いた様だ。


「ほう、自在にその姿を変えられるのか? 森に住まう者としては便利だな。ロッテの変身とは真逆だな。」


 ロッテは、左手を胸に当てると、ナックルダスターをぴかりと光らせる。

 その頭に猫耳が生え、更に今日はシッポまでついて来た。


「あら、あなたも同族でしたか? お名前は?」


「ロッテだよ~。ジャーナちゃん、おいで~、ほれほれ~。」


「ミャウ ミャウ」


 変身したロッテに近づいてきた子猫を捕まえるとサワサワと撫でまわしだした。


「うにゃぁ~~」


「きゃぁわいい~~!」


 ロッテが子猫を撫でまわしだすとラルフまで横からちょっかいを出す。


「ロッテちゃん! 今度は僕にも触らせて、子猫ちゃ~ん、お肉だよ~。」


 その横では、リンちゃんまでもゴブリンの顔で怖がらせないように、夜店で売っているプラスチックの美少女仮面のお面をかぶっては焼けたお肉をちらつかせる。


 勢いを落とした焚火が、柔らかい明かりでまどろむ皆を包み込んでいる。

 食事が終わり、皆にゆとりの時間が訪れている。

 満腹になった子猫と、その可愛らしさに目を細めるロッテ達の間に和やかな空気が流れている。


「このような姿で森をさ迷っていた訳をお話いたします。」


 物思いに沈んでいた女が、子猫をあやすロッテ達を見ている内に心を開いたのか、その怪我に至った経緯を話し出した。


「娘を連れての狩の最中に人族の狩人に襲われたのでございます。最初、獣と間違われての事と思いまして女の姿となって獣ではない、獣人だと言っても襲ってきます。」


「そして娘を捕らえると、私にまたクロヒョウの姿に変身しろと脅しました。」


「何事かと思いましたが、其の男の後ろの男達が背負う毛皮に思い当たる毛色を見つけたのでございます。」


「其れは、我が村に住む男の獣人が獣となった時の姿でした。此の人族の狩人たちは、獣人の私たちを獣の姿になった所を襲い、その毛皮を剥いでいたのです。許せません! 私たちを獣人だと知りながら獣として狩っているのです!!」


「私には、クロヒョウと姿を変えた時に隠匿の術が使えます。森の緑.暗闇に紛れてこの姿を消すことが出来るのです。その力を使い姿をくらまし、娘を捕らえる男を襲いました。」


「男の喉笛を噛みちぎり娘を取り戻すと、一目散にと逃げ脱したのです。」


「『追え! 逃がすな。めったに見ない美しい毛皮だ。』と喚く小太りの男は狩人には見えずその雇い主の商人のようでした。私が抱える子供で見当を付けたのでしょう。あてずっぽうで撃った弓矢が、運悪く後ろ足にあたりましたが、何とか逃げ切る事が出来ました。」


 子猫を撫でるその手を止めて聞き入っていたロッテが怒り出した。


「酷―い! 獣人だと知っていながら獣として狩るなんて人殺しじゃない。しかもその毛皮を剥いで商売にするなんて許せないよ~~っ!!」


「まったくです! 捕らえてその商人共々、衛兵に突き出しましょう。美月様!」


 正義感の強いラルフも震える様に憤慨している。


「そうだな。ラルフの言う通り、とっ捕まえて仕置きを加えたのちにでも衛兵に引き渡すもよし。それとも被害を受けた獣人の残りの村人にでも裁きを任せてもいいかもな。」


 そこまで言って、美月が思い当たる事を言った。


「その狩人を使って毛皮を集めている商人ってのは、バレドニアの商人ではないな。バレドニアは、建国の時に獣人たちに世話になっている。ジークも獣人の毛皮を剥ぐなんて野蛮で下劣な事は絶対に許さないだろう。それがバレドニアの官憲にでもしれたらタダでは済まないからな。」


「おそらく、そいつ等はバレドニアの南にあるバンガニーナ湖の向こう、アルト山脈を越えた海沿いの国、商業共和国アルステリアの奴らだろう。」


「何でも金がモノを言う。権力を掴むにも金次第と言ったところだ。国の中枢も大商人が占めていると話を聞く。金が全てな為に人道的な道徳観など皆無だ。商売の為なら相手を追い落とし、死に至らしても何の感情も待たない商人がほとんどだ。」


「ましてや獣の姿の獣人では、奴らにとって美しい毛皮を纏う獣人は、金を生む商品にしか見えていないんだろう。」


 褐色の頬の涙が流れてジャオクウゥは声を震わす。


「人族から私たちが、そのように思われていたなんて信じられません。なんて残酷な人達なのです!」


「人族すべてが、そう言った残虐非道と言う訳ではないぞ。実際バレドニアでは、人も獣人も亜人そして時には、交流を持つ魔族さえ人々と共に暮らしている。時にはそれぞれの持つ信念の違いからの多少の(いさか)いは有ったとしても、毛皮をはぎ取るなどの狂った感情は持ち合わせてはいない。」


「金に狂った商業共和国アルステリア、恐ろしい国です。」


「そうだな。大金への渇望が人としての生き方を狂わせる。生きるに十分な金で良しとするのを心掛けるべきだな。余計な欲は、人の生き様を無様なモノへと変えてしまうからな。」


「なあっ! 小金持ちのロッテ。」


「ええっ! あたし~っ おっおっ お金は大事だよ~。黒パンが買えるし、オイシイ串焼きだって食べれるんだから~。え~と、え~と……そうだねえラルフ様、屋台の串肉大事だよねっ」


「ふふっ ソウダネ。ロッテちゃんのお金の使い方なら問題ないさ。 魔女様のアドバイスに従って、人の為に其れが自分の為にも成るんだから。いいお金の使い方をしてるよ。」


「ロッテちゃんは大丈夫。」


「ほらね!」


 ラルフに助けを求めて、良い返事が返ってきた事にほっとするロッテだった。

 ロッテのシドロモドロノ困り様に周りに温かい雰囲気が返ってきた。


「よし明日に成ったら、ジャオクゥの村の様子を見に行ってみるか。狩人の人数からして全てが殺されているとも思えん。ゲリラ的に出没しては、村人を攫っているのかもしれんな。」


「村人を助けてやろう。商人どもを捕まえて村人に裁いてもらうのがいいな。まあ死罪は免れないだろうが。」


「ありがとうございます。魔女様!」 「ニャニャッ! ニャン! ニャオーン」


 村を救ってくれるとの美月の言葉に、思ってもいなかっただけにジャオクウゥは、また途切れていた涙が溢れ出した。


「なに、礼を言うのは、此のロッテに言いな。此のパーティーのリーダーは、此奴だからな。」


「えええっ! あたしが、リーダー? うっそぉ~~っ!」


「ああっ 言ってなかったか? ジークも言ってたぞ。お前がパーティーメンバーのキーマンだからロッテがリーダーでいいだろうとな。お前の好きにこのチームは動くんだよ。」


「ロッテちゃんがリーダーだね。」


「ギギッ、 ギギィーイ、ギギッ!」 (そうだ、 リーダーは、ロッテ!)


 当然だとばかりにラルフとリンちゃんが頷く。


「それではロッテちゃん、改めて命を娘共々救って頂きありがとうございます。更に憎っくき狩人共の討伐に手を貸してくださるとは、御恩をお返しする当てもありません。」

「ですから、私目をロッテちゃんの従者として働かせてください。森に滞在する間の食料は、私目にお任せいただきとおございます。こう見えても狩の腕には自信がございます。好きな獲物を仕留めてまいります。」

(娘共々、面倒をみて欲しいな。ケガも直してもらえるし。 此の魔女様の側なら安心して娘を育てられるし、何よりも安全だわ。それにアノお肉の味付け、忘れられませんわ! 色んな獲物の肉の料理を食べられそうだわ。狩の遣り甲斐が沸くわ。)


 素早くロッテ達の有用性を感じ取ると、ロッテの従者へと願い出た。

 子供を育てる女のしたたかな判断は素早かった。


「ええ~っ! あたしの従者ぁ~っ」


「そうだな。森の案内に役立ちそうだ。私は構わないぞ。」


「僕も森の探索、斥候として働いて貰うのにお(あつら)え向きだと思うよ。」


「……毎日、お肉が食べられるなら……」


「もちろんでございます。」


 こうして、ロッテ達の一行にジャオクウゥ.ジャーナの獣人の親子が加わった。


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