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反逆のロッテ  作者: ドロガメ
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ロッテ、鳥たちと戯れる。

 ロッテ、鳥たちと戯れる。




 消えた魔弓の探索とその弓使いロキシーを求めて、ロッテと美月そして護衛のラルフがその命を受けて旅立つ事となった。


 街娘のロッテには、だいぶ荷の重い役目ながら、勇者パーティーを集めるにあたってのキーマンとなっている。

 其の事が明らかになった為に、其の能力者を引き付ける不思議な力を買われて役目を押し当てられた。

 もちろんロッテは、金貨の報酬に目がくらみ容易くその役目を引き受けている。


 そしてロッテ達を運ぶのは、アダモスと共に転移去れて来たオスのオルトミムス。

 馬よりも小柄ながら力は強く、森の中や荒れ地、岩場など場所を選ばず、小回りも効いて自在性に富んでいる。

 ゴブリンのリンちゃんの訓練により、乗馬用の竜として使える様に成っていた。

 ロッテは、此の竜をオルチャンと呼んでいる。




「ぎゃ~っ! 追ってくるよ~ ラルフ様ぁーっ、もっと走って

 オルチャン、食べられちゃうよ~」


 静かな東の森の中に、ロッテの悲鳴が響いている。

 美月の転移できる最大距離を東に飛んで、更にエルフの住まう集落を目指しながら森の中を進んでいた。


 陽も差さない深い森の中を、手綱を握るラルフの背中にしがみ付きながら叫んでいる。


 二人を乗せたオルトミムスが、壁のように立ちはだかる巨木の(ばん)(こん)を軽々と飛び越えた。

 道なき道の木々の間を爽快な疾走を見せる。


 脚力自慢のオルトミムスとはいえ、この森の中では決して余裕を持って逃げ切れている訳ではない。

 追ってくるのは、森の牙と呼ばれるフォレスト.ファング.バードの群れ。

 体長1メートルほどと小柄ながら、鋭い牙を持ち、地を走る肉食の鳥の仲間だ。


 その群れに、ロッテとラルフを乗せたオルトミムスが追われていた。

 一匹では、さほどの脅威とはならないフォレスト.ファングだが、群れになると厄介な狡猾さを見せる。


「美月ちゃん、助けてよ~。魔法でなんとかして~~っ!」


「ロッテ、良かったな。今夜の晩飯が向こうからやって来たんだ。よろこべよ。お前の好きな鶏モモ焼きが食べられるぞ~」


「わーい、モモ焼きだ~。焼き鳥のタレが炭火に垂れて最高だね~って、ちが~うっ、今は、こっちが食べられちゃうよ~。」


 一人ぼけ、ひとり突っ込みを見せるロッテ。


「ところでラルフ、さっきから右へ右へと追い込まれているのに気が付いているか?」


「魔女様、そのようです。奴らが左からばかり襲ってくるものですから、オルが、右の脇道へと進路を変えてしまいます。」


「追手の奴らの数が減ったな。」


「…!!…待ち伏せですか?」


「ああっ 間違いない。ここは奴らの縄張りだ。いつもの狩のやり方なんだろう。待ち伏せの場所へと誘い込まれているな。」


「いずれにせよ、ロッテの実践訓練相手にちょうど良い。晩飯の調達にもなったしな」


「きゃぴっ!」


 前方の草むらから一匹のフォレスト.ファングが飛び出してきた。

 しかし勢いの付いたオルトミムスの足に蹴り飛ばされてしまう。

 藪の開けた場所へと飛び出ると、其処には数羽のフォレスト.ファングが待ち構えていた。


「ロッテ、獣人化はするなよ! 今のまま、地の戦闘力で対処してみろ。訓練の成果を見せてみろ。」


「ええ~っ 怖いよ。」


「代わりに武器を付けてやる。焼き鳥食いたいんだろ! 頑張れよ。」


 美月がそう言うと、ロッテの両こぶしには鉄のメリケンサック。

 エルボーガードにニーパッド、それぞれに鋭い突起が飛び出す仕掛けだ。


「う~ん、 焼き鳥…焼き鳥っ! わかった、此奴らみんな焼き鳥にするっ!! 」


 焼き鳥になる鶏モモの風景が頭に浮かび、ロッテは怖いと感じる気持ちより食べ物の誘惑へと変わったようだ。

 全身に凶器を施されたロッテが、オルトミムスの背中から飛び降りる。

 同時に、ポシェットから飛び出したゴブリンのリンちゃんは、オルトミムスを守るために六角樫棒を振り回す。


 ラルフとリンちゃんがオルトミムスの周りで守りに徹する中、ロッテは機敏性を生かして、フォレスト.ファングの群れの中へと突っ込んでいった。


 フォレスト.ファング.バードは、小型で素早い動きの敏捷性の高さが特徴の鳥だ。

 その動きで敵を翻弄する。

 一撃の力は弱いモノの、それが群れともなると彼方此方からと突かれ噛みつかれては、獲物は少しずつ疲弊し体力を奪われて倒されてしまう。

 まるで、群れで襲うピラニアの様な戦いを見せる。


 その群れの真っただ中で、ロッテは周りから襲い来るフォレスト.ファングと戦っている。

 素早い動きのフォレスト.ファング。

 しかし、ロッテはその動きに負けないスピードで鳥たちを翻弄する。


 獣人の血を受け継ぎ、最近の美月とリンちゃんとの武術の訓練で戦いの力を付けてきている。

 ロッテの最大の武器はそのスピードとトリッキーな動き。

 鳥たちの素早さを更に上回るスピードと積み上げた武術の動きも加わり単調な鳥たちの攻撃を難なく躱しては、鋭い一撃を入れていく。


 正面から突いてくる鳥のくちばしを掻い潜ると、その横ズラに裏拳を入れる。

 同時に後ろから、足に噛みついて来ようとする一匹に後ろ足を跳ね上げて頭をカチあげる。

 其れだけで、防御力の弱い鳥たちは動きを止め沈み込む。

 振り向きざまに、腰を捻っては満身の力でその胴体にメリケンサックを叩き込んだ。

 スピードが売りのフォレスト.ファング.バードのそれより遥かに早い動きで群れの中で鳥たちを打ち倒していく。


「おーい、こっちは終わったぞ~ ロッテ。」


「うん、こっちも此の一匹っ!」


「ポムッ!」


 ロッテに地面を転がるような動きで胴回しの蹴りを下から叩き込まれたフォレスト.ファングが、一瞬宙(ちゅう)に浮くとドサリと倒れた。

 辺りには、十五羽ほどの鳥たちがピクピクと痙攣を繰り返しては倒れていた。





 高い木々の茂る森の中は、夕暮れになると陽の落ちるのも早い。

 焚火の炎がチラチラと周囲を照らし、いっそう夕闇の到来を告げている。


 フォレスト.ファング.バードは、さっそくリンちゃんによって解体されて、串に刺さり、焚火の脇へとかざされて良い匂いを辺りに振りまいている。


「ひぃやぁ~~ 自分で獲った鳥のお肉は、やっぱサイコー!」


 こんがりときつね色に焼けて、肉汁の滴る骨付きの鶏もも肉を両手に抱えては、交互にかぶり付くロッテ。


 焚火の周りには、串に刺さった鶏肉のタレと流れ落ちた油が、炭火に落ちて香ばしい匂いを放っている。美月の取り出したメーカー品の焼き鳥のタレが匂いを放ち食欲を誘う。


「こんなに、お肉だけお腹いっぱい食べられるなんて夢のようだねえ~~」


 ラルフも初めて食べる日本産の焼き鳥のタレに付け込まれた香ばしい焼き鳥に驚きを隠せない。


「まさか、旅の食事にこの様なご馳走にありつけるとは思いませんでした。魔女様のお国の調味料はスゴイです。」


「ああっ よかったな。あたし達の国には、世界中の食べ物が集まっていたからな。世の中のすべての調味料が揃っていたからな。」


「遠慮しなくていいから、味わって食え。 ……あたしは、石板の中だから食えねえけどな。……遠慮するなよ」


 美月も女子高生として生きていた頃に食べた焼き鳥の味を思い出していた。


(何時か、この体を取り戻して日本へ帰郷して一人焼肉を腹いっぱい食ってやる。)


 生まれ出た魔王を倒し、亜空間に住まう運営の神どもに今度こそは絶対に約束を守らせてやる。

 そして十六歳の女子高生として日本へと帰る。

 戻ったら女子高生としての生活を思いっきり楽しんでやると、無邪気に肉にかぶりつくロッテ達を眺めては、決意を新たにする美月だった。





「!……魔女様っ」


 リンちゃんの首から下げられた石板の美月へと、ラルフが目配せをする。

 無邪気に焼肉をほおばるロッテの後ろの暗がりをラルフは見ている。

 すっかり周りは暗くなり、焚火の明かりだけが周囲に座る皆を照らし出していた。


 ロッテの後ろの藪から小さな影が、這うように進み出てきた。

 ロッテの横へと進むとそこで立ち止まり伏せる。

 その様子にラルフは首を傾げた。


「ううん? づた袋? 何だ?」


 小さな穀物を入れる様な麻で出来た袋がロッテの横に留まっている。

 皆が気付いて注目している事に、逆に気が付かないとでも思っているのか、大胆に焚火の肉の様子を見ている様だ。

 すると其処から、毛で覆われた黒い小さな猫の手が伸びてくる。

 ロッテの前の焚火に掲げられたモモ肉を掴む。


「ああっ!! こらっ~!」


 さすがに捨て置けず、ロッテが伸びてきた其の手を掴んだ。


「みやぁ~!」


 引きずり出される様に現れたのは、小さな貫頭衣を身に付けた黒い子猫だった。


「みゃあ~! みゃあ~。」


 ロッテが掴んだ先でぶら下がりながらも、モモ肉を離さない。

 ぶら下がりながら大声を上げる。


「子猫ちゃんだよ~、美月ちゃん。人の子供みたいに貫頭衣を着ているって、この森の獣、恥ずかしがり屋さんだねえ~」


「うんん? ロッテ、獣でもなさそうだぜ。気を付けろ。まだいるぞ。ラルフも剣を取れ!」


 ラルフが膝立ちに剣を構え、リンちゃんは、六角棒を持って飛び起きる。

 リンちゃんの警戒する構えから、フォレスト.ファング.バードの比ではない強敵が現れたのかと、ロッテもその闇の中から現れてくる者に緊張する。


 皆が緊張をもって身構えるその目前に、暗い藪の中から闇が進み出てくる。

 ロッテには、そう見えた。

 まるで焚火の明かりに当たらない暗闇が動いて進み出てきたように感じた。


「…………!?黒豹!!」


 ラルフが、近づいた黒いモノに一早く気が付いて剣を抜く。

 その言葉に、ようやくロッテもその動く暗闇に見えた物体が漆黒の毛皮を(まと)ったクロヒョウだと気が付いた。


「オマチクダサイ! 気概を加えるつもりはございません。このような容姿なれど獣人でございます。」


「其処に、あなた方の食事に無作法にも手を伸ばしたのは、我が娘にございます。どうぞお許しを……」


「うわっ喋った~!」


 獣の見た目で、其れは丁寧な人語を口にした。

 明かりの元に全身を現したクロヒョウは、美しい毛皮を纏いながらも、足を引きずり血を滴らせていた。


「……私がケガを負ったせいで……グッ…獲物が取れず、娘が御無礼にもあなた様のお食事に手を出してしまいました。…なにとぞお許しくださいまし……」


 苦しそうな表情でそれだけ言うと倒れ込んでしまった。

 ロッテ達は、驚くことになる。

 見る間に、その姿が形を変えて女の姿へと変貌していく。

 其処には、長く黒い髪に褐色の肌、粗末な貫頭衣を纏った女が気を失って横たわっていた。


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