ロッテ、舎弟を増やす。
ロッテ、舎弟を増やす。
「……やったのか!」
アダモスが浮雲な言葉を投げかけるが、サイコロプスは起き上がる事はなかった。
「ああっ やったな。お前が村の仇を討ったんだ。ロッテもよくやった。強くなったな」
リンちゃんが、サイコロプスの使っていた金棒をアダモスに手渡してくれた。
「戦利品だ。勝利の品だ。お前が持っているといい」
アダモスは其れを手にすると、ようやく村に平和が戻ってきたことに目を潤ませる。
「ああっ あんた達のお陰だ。この村も俺たちも救われた」
「サイコロプスの体は、ジークハルトに持って行こう。魔物討伐の褒賞が出る。売り払えば武具の材料として売れるだろう」
ロッテのポシェットへと吸い込まれていく。
「さて、サイコロプスの討伐は、無事に終わったが、ロッテ土産が残っているぞ」
「グーゥ」
柵の中でオスのオルトミムスが鳴いた。
オスの頭に目隠しの袋をかぶせるとタズナを付けてアダモスが引く。
其の後をメスの群れが付いて来た。
村へと帰ると村中の皆が暗くなったのにも関わらず、村の入口で出迎えてくれた。
アダモスが、無事を知らせる様に片手をあげる。
サイコロプスの討伐が無事に成功を収めた事が伝わると人々の間に安堵の声が伝わっていく。
村長が進み出てきた。
「アダモス、ケガが無くて何よりだ。皆さんご無事でよかった。という事は? もう、ひとつ目サイコロプスは?」
「ああ、誰も怪我することなく討伐出来たぞ。お前たちのアダモスが村の仇を取った。此れからは、安心して暮らせるぜ。……もう盗賊の真似事なんかするんじゃねえぜ。」
村長をはじめ、年寄りたちが一斉に頭をさげた。
サイコロプスの討伐が確信に変わり、人々のざわめきが歓声に変わった。
肩を抱き合い涙する者もいる。
「村長、それに土産だ。サイコロプスの所に囚われていた竜だ。草原を根城にしている草食の竜だ。後ろ足が強靭で、二足歩行で草原を風のように走り回りながら暮らしている。こいつ等を飼いならし、荷馬車を引く馬の代わりになる様に訓練してみろ。」
「慣れると大人しく従順な竜種だ。少なくなった男手の代わりに役立つはずだ。」
アダモスの持つタズナの先で、袋をかぶせられたオルトミムスのオスが、グーグーと鳴いた。
それに応える様に、離れて森の暗がりに付いて来ていた雌の群れが一斉に声を上げる。
アダモスが、オスの頭に被せられていた袋を取ると、更にメスを呼ぶ大きな声を上げる。
「クオッ! クオッ! クオッ!」
「よかったね~。お前たち、もう仲間を食べられることはないよ。村で美味しいエサを貰ってこれからはイッパイ働くんだよ。」
ロッテも嬉しくなってオルトミスの顎を撫でてみた。
オルトミスの鼻が大きく膨らむ。
ロッテは、その様子を不思議そうに見つめる。
「おっ ロッテ!」
「ブシャアァーー!」
美月が何かを言いかける間もなく、オスの鼻から盛大な鼻水がロッテの顔めがけて飛び散った。
「グーグー」
「うへえーーっ! ひどいよ~~。きったねええ。」
「良かったな。ロッテ! お前、気に入られたみたいだぜ。それ竜の愛情表現だぜ。」
「美月ちゃん~ わけわかんないよ~。ひど~い。」
涙目で顔を拭くロッテが可笑しかったのか、周りが和やかな空気に包まれた。
美月の提案で、穏やかな性格のオルトミムスの群れを飼いならし、荷馬車を引く馬のようにしつけては、其れを増やしていく事業をすることとなった。
「それでだロッテ! お金持ちのロッテよ。この村の為に一旗脱いで金貨十枚(百万リダ)村長に預けて置け。村の当面の生活.事業の回転資金に使って貰え。」
ケチで貧乏性のロッテの眼が丸く見開かれる。
美月が言った事が、イマイチ理解できない。
「ええーっ! 金貨十枚っ! 金貨十枚だよ! あたしが出すの~っ」
「ウルセ~~ッ!! お前が出さなくて誰が出すんだよ! どうせポシェットの中で使い道がねえんだ。大人しく出しやがれっ! たかが金貨十枚だろ。」
しぶしぶ、ジャラリと村長の前へと金貨を差し出した。
村にとって金貨十枚は収入の破綻した今は、思いもよらない恵みだった。
「村長、勘違いするんじゃあねえぞ。貸してやるだけだ。半年もすれば此の竜も使える様になるはずだ。この金で荷車を買い増して、荷役の仕事を増やし仕事に励め。」
「そして、この村の荷役の収入の一割を毎月このロッテに持ってこい。いいな!」
美月の有無を言わせぬ強い口調に村長も押される。
何よりも、この金で竜の飼育と荷役の仕事を大きく増やせる展望が見えた。
「ありがとうございます。サイコロプスの討伐の助けだけでも、頭も下がる思いでしたが、この村の今後の生きる術まで与えてくださり、この御恩決して忘れません。必ずや此の群れを、荷役に使える様に飼いならし、村を発展させてみせます。」
金貨を手に押し包むように頂くと、村の長老たちが頭を下げる。
アダモスも一緒になって礼を言った。
「アダモス、お前にはあたしから頼みがある。あのサイコロプスを押し止めた力、あたしたちの為に力を貸してくれないか?此のロッテが、お前の力が必要になった時、一緒に戦ってほしい。もちろんタダとは言わない。あるお方から、必要ならば褒賞や金子が出るから悪い話ではないぞ。」
村を救ってくれた美月の言葉に、一瞬考えたモノのアダモスに嫌はない。
何よりも短調な荷役の仕事よりも、サイコロプスと戦っていた時の自分は心が躍った。
(ぎりぎりの戦いの中で俺は、あの時生きている実感を感じていた。一人では到底倒しきれぬアノ化け物を、此の魔女様たちと倒した心の高まりが忘れられん。)
「この俺の力が魔女様の役に立つのならば、是非お使いください。何時でもはせ参じます。」
ゴブリンのリンちゃんが、美月の作った魔法陣が描かれた護符をアダモスの左手の甲に張り付ける。
一瞬、その紙が燃え上がるとアダモスの左手に魔法陣の刺青が浮き上がった。
「お前の左手に転移の魔法陣を焼き付けた。アダモスは何処にいても構わないが、あたしが転移で召喚したら何時でも駆けつけてもらう事になる。」
何時でも何処にいても、美月とロッテが戦いに巻き込まれた時には、美月の強引な召喚に応じる事にアダモスも約束する。
美月は、勇者チームの盾持ちにアダモスを試してみるつもりのようだった。
城にある世界樹の大盾を巨人のアダモスが扱いきれるか楽しみにしている。
「よし粗方、話は終わった。村長、後は頼んだぞ。 盗品のすべての荷車は、あたしが収納に納めて王都の衛兵所の前にでも、ぶん投げといてやる。後は勝手に役人どもが、荷物を取られたと申し出ていた者たちに返すだろう。お前たちも役人が来たら知らぬ存ぜぬで押しとおせ。」
「いいな」
盗品を衛兵所へと渡し、後はジークハルトに事の始末をぶん投げることにした美月だった。
明るくなってから、ペペとロッシュの荷車も収納すると王都へと転移する。
ペペ達を荷車と共に見送ると、ジークハルトの王城へとやって来た。
「えへへへっ♡」
さっそく討伐の褒美をもらって金貨を撫でまわし、ロッテの口角は上がりっぱなしだ。
「こんな怪物が、ナハフテスへの街道の人々を襲っていたのか。人の姿に扮していたのか。盗賊の出没が頻繁だとは聞いていたが。」
「ああ、盗賊の仕業に見せかけて街道の往来を妨げていたそうだ。盗品の荷車を回収して、憲兵の衛兵所の前にぶん投げて置いたぞ。後の始末はよろしくなジーク。」
「また盗賊の疑いを掛けられていた村は、此のサイコロプスに襲われていたそうだ。討伐依頼を新王都の役人に届けたそうだが、見捨てられていたそうだ。」
ジークハルトが頭を抱える。
「儂もデューク王の心変わりを調べてみた。旅の商人に成りすまし、王宮へと入り込んでいるエルノバと言う女商人がデュークをそそのかしている魔族の様だ。」
「其の女魔族に唆される様に成ってからというモノ、新王都の街にのみ力を注ぎ、他の地域を見限るような扱いが増えているな。」
「街道の往来の治安を妨げ、新王都と他の街の繋がりを断ち切ろうとする動きも気にかかる。魔族による何某かの企みが始まっていると考えたほうがよかろう。」
「まずは、デューク王に取り入っている女魔族とデュークを切り離し、城に囚われているエレナテレスを助けねばならんな。表立って儂とデュークが争うわけには行かぬ。国を分けての戦にでもなれば、其れこそ魔族共の思うつぼだ。」
「取り入っている魔族の女だけを殺しても、デュークに植え付けられた女を思う気持ちは断ち切れん。女を殺されれば怒りの憎悪を燃え上がらせかねん。またデュークを操る魔法を断ち切ろうとすれば、気づかれた途端に魔族に操られながら、ワシとの戦に突入しないとも限らん。」
「どうするのだ?」
「デュークにかけられた操りの呪いを解く、其れと同時に時を同じくし、女魔族を倒すのが、戦に繋がる事なくデュークを開放する方法だと魔法師たちの意見はそろったようじゃ。」
美月が思い当たった様に口にした。
「其れが、出来るのはあれしかないな。」
「ああっ 聖なる光の矢で魔族を倒し。同時に光の矢でデュークにかけられた呪いの呪縛を打ち砕く。」
「同時に幻想の光の矢を放つ事の出来る弓。」
「…エルフの魔法具か。」




