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3.5




◇◆ロイ◇◆




また、聖女様のお側でお守りできる生活が始まった。


ウィリディス国内を移動の一ヶ月程と、スマラグティーに入ってからの一ヶ月と少しの間、第二騎士団(俺たち)は大いに張り切った。

やらなくてもいいスマラグティーの魔獣討伐までやるほどに。


そうして二ヶ月以上を聖女様の身近で過ごす事が出来て、スマラグティーの王宮に着くと、また別の意味で一緒に過ごせる事になっていた。


俺たちウィリディスの全員が、離宮に滞在する事になったのだ!

俺たちは一様に喜んだ!


本来なら天上人であらせられる聖女様は(王族なので第二王子殿下も)貴賓としてスマラグティーの王宮に最上級の部屋を用意されるのだけど、聖女様が、ウィリディスの皆と共に過ごすと言ったとか、言わなかったとか…。


聖女様なら、きっとそうおっしゃるだろう!

俺も又聞きの又聞きなので、本当かわからないけど。


とはいっても、聖女様と平の騎士(俺たち)とでは部屋のある階が違うし、礼拝堂への行き帰りはウィリディスの時と同じに殿下と副団長がお供する。


俺たちはウィリディスの時のように、昼飯の時や護衛で部屋の前に立つ時にお姿を見られるかもしれない、話しかけていただけるかもしれない、と期待するだけだった。

それもとても幸せな事だけど!




なんて思っていたのに、実際に聖女様がスマラグティーの礼拝堂で祈られる日々が始まると、前の時にはなかった、俺たちと昼飯をご一緒してくださるようになったのだ!


澱みを浄化する旅の時と違って、殿下や副団長もいない、まるっきり平の騎士(俺たち)だけの気楽な時間!

や、聖女様がいらっしゃるのだから気楽とは違うか。

でも(騎士全員でだけど)聖女様を独り占め!

最高!!


「スマラグティーの訓練場ってどんな感じ?訓練場ってやっぱりどこも似てるものなの?」


スマラグティーにきて数日がたった頃、昼飯用に作られた弁当を食べながら聖女様が質問された。


「そうですね、あまり変わりないように思います」

「私たちは旧訓練場を使わせてもらっていますが、新しい方はウィリディスと同じにだだっ広い訓練場でした」

「旧の方も何もない広場です!」

「でも少し狭いです!私たちが使う分には十分ですが!」


みんな我先にと答えていく。

少しでも聖女様とお言葉を交わしたいもんな。

気持ちはわかる!


「他国に来ても場所を確保して訓練を欠かさないなんて、みんな偉いわね」


「「聖女様……」」


聖女様に褒められた!!


みんな相好を崩す。

とても見られた顔じゃない!俺もそうだろうけど!


「当然の事です。聖女様をお守りするために鍛錬はかかせません!」

「「そのとおりです!」」

「「日々の鍛錬は大事です!」」


オッドが真面目な顔で言うと、これまた後から後から続いていく。


オッドよ、そんな顔してないで聖女様に褒められたんだ、素直に喜んどけって。


「お褒め下さりありがとうございます!我らますます鍛錬に力が入ります!」

「ロイ…。(何故か笑われる) 

うん、みんな頑張れ!私も頑張るからね!」

「「はい!!」」


日々、目についたものの話や、こんな風に聖女様から活力をいただけるお言葉など、和やかに昼食の時間を過ごす。

かけがえのない、聖女様との大切な時間だ。

これがあるから、一日おきの過酷な鍛錬にも耐える事ができるというものだ。




俺たちは一日おきに聖女様の(礼拝堂回りの)護衛と、鍛錬を繰り返している。

本当はみんなずっと聖女様のお側にいたいけれど、一日だけは我慢する。


鍛錬なくして鈍った身体では、最高の状態で聖女様をお守りできない。

いつでも何からでもお守りできるように、みんな聖女様を思って、礼拝堂から離れた訓練場で鍛えている。


もちろん昼食時には、どんなにへばっていてもダッシュで聖女様の元に馳せ参じる。


訓練で汗だくになっている組は、少し遠巻きに昼食の輪に加わる。

汗くさい匂いで聖女様をご不快にしてはならない。


聖女様とお言葉を交わす事は難しくなるけれど、お姿を見られ、お声を聞けるだけでも至福の一時だ。


暑い季節だから護衛の方だって汗をかかない訳ではないけれど、訓練をしてきた方より全然マシだ。

護衛側は内巻きに聖女様とお話しできる場所に陣取る。


話しかける事はできなくとも、より身近に聖女様の側にいられる幸せ!

俺たちのたわいもない話にも耳を傾け、笑顔も見せてくださる幸せ!


俺たちはこんな風にいくつもの暗黙の決まりを作って、不公平が出ないよう聖女様との幸せな時間を過ごしている。




慈愛あふれる聖女様は、下々の俺たちのような平の騎士にさえお優しいお心で接してくださっている。


ある日、スマラグティーの王女殿下が我々の昼食会に混ぜてほしいと言ってきたそうだ。(こんな言い方ではなかったと思うが)


けれど聖女様は俺たちのために断ってくださった。俺たちが緊張して飯が美味く食べられないからという理由で!


なんというお優しいお方だろう!今までも敬愛申し上げていたけれど、俺たちはますます聖女様が(俗な表現で申し訳ないが)大好きになった。


「聖女様とご一緒できている事が、ずっと夢の中にいるようで…」や、

「まだまだ幸運に酔っているような…」なんていう言葉に同感する。


まさにその通り!

俺もいまだにそう思っている。



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