093 ドラゴン
マッドバイソンを狩った後、俺達は近くの町を目指す。
ジャイアントハーフの聖騎士リンが御者で地竜の馬車を操縦し、ブラックジャガー獣人のノワが馬車の中で、俺の隣に座る。
「タクミ様!ドラゴンがいます。」
リンが叫ぶ。
「ん、ドラゴン?」
おお!流石ファンタジーだ。
ドラゴンかぁ。
「人を襲っている様ですよー。」
ノワが魔力探知で状況確認をしたらしい。
「ドラゴンは危険です。遠回りで町に行きましょうか?」
リンが不安げに俺に聞いた。
「ドラゴンも美味しいんだよねー。素材も高く売れるしー。」
ノワはワクワクしている。
「ノワ、3人でドラゴンと戦うのは、危険です!」
リンが厳しい口調でノワに叫ぶ。
「だってー。タクミ様なら・・・。」
「ははは、行ってみよう。」
「承知しました。」
リンは意を決して、ドラゴンに向けて馬車を走らせる。
襲われているのは、剣聖ルイ達だった。
数台の馬車がドラゴンから逃げている。
ドラゴンは空中を飛翔し炎を吐く。
ルイの馬車は左右ジグザグに走り、何とか炎を避けているのだが、馬車はあちこち焦げていた。
ルイが馬車の屋根に乗り、片膝で立ち左手は屋根に右手で剣を構えている。
曲芸の様だ。落ちないのかなぁ?
なんて心配してると・・・。
ドラゴンが下降して、爪で馬車を襲うが、馬車は蛇行して避けながら、ルイが剣で何とか爪を受け流す。
何度か、ドラゴンの攻撃を受けた様子で、壊れた馬車も見えた。
「ルイいいい!助けは必要かああ!」
俺は大声でルイに叫んだ。
「タ!タクミ様ああああああああ!!助けてくださあああああああい!!」
ルイが泣きながら叫ぶ。
「分かったあああああ!素材は貰うぞおおおおお!」
俺は叫ぶ。
念の為確認ね。
ルイは何度も頷く。
良し、言質は取った。
ニヤリと笑う。
「こんな時に何を言ってるの」って言う顔で呆れるリンと、「流石タクミ様」って言う顔で頷くノワ。
ドラゴンは俺の声に反応し、此方を向いた。
そして飛んで向かって来た。
俺は時を止めた。
魔王のブーツで宙を駆けて、最短距離でドラゴンに向かった。
アイテムボックスから聖剣を出す。
ドラゴンの背中まで駆け上がると、首を後ろから斬り落とした。
時を動かす。
ブシュッ!!
ドラゴンは首と身体が分かれて落下する。
俺は聖剣を肩に担ぎ、背中に乗っている。
ズズダダダアアアアン!!!
俺はドラゴンが地面に落ちる寸前、魔王のブーツで宙に留まった。
「・・・。」
ルイ達は馬車を止めて、誰も声を出さず、茫然と見ていた。
「おおおおおおおおおおおおおお!」
「やったあああああああああああ!」
「助かったあああああ!!」
「有難うおおおおおお!!」
大騒ぎで駆け寄るルイ達。
俺は地面に降りて、聖剣をアイテムボックスに収納した。
リンとノワも馬車で俺に向かって来た。