089 Aランク冒険者ルイ
「何の目的で俺に話し掛けた?」
俺はリーマバに尋ねた。
「因縁を付けて地竜を手に入れる為だ。・・・あ?何を・・・。」
「成る程、此奴らもそれを知っているのか?」
俺はリーマバの仲間3人を指差す。
「・・・そうだ。俺が上手く因縁を付けたら、皆で襲うつもりだった。え?・・・俺は・・・何を言ってる?」
「やっぱりなぁ。俺達3人に勝てると思ったのか?」
「糞ガキと、お、女2人程度は問題ないと思ってたが、遠目からはこんなデカ女だとは思わなかった。・・・何で俺は、こ、こんな事を喋る・・・。」
「「デカ女!!」」
ジャイアントハーフの聖騎士リンと、ブラックジャガー獣人のノワが同時に声を出す。
「「殺しましょう。」」
「ちょっと待て!こんなに美しい二人に対して、失礼この上ない言葉だけど、周りの目があるからね。」
「「美しい・・・。」」
二人は頬を赤くしてぽーっとなっているので、取り敢えず殺すのは思い留まった様だ。
「2度と悪い事をしない様に、取り敢えず腕だけ落としておくか。」
「ひぃ、そ、そんな・・・。」
俺は時を止めた。
アイテムボックスから聖剣を出す。
リーマバの後ろに回って右手を斬り落とした。
聖剣をアイテムボックスに収納する。
元の位置に戻り時を動かした。
「ぎゃああああああああああああ!」
リーマバの叫び声が野営地に響いた。
「何をしてる!」
怒鳴り声がした。
声がした方を向くと、何時の間にか、女性の剣士が俺達の横に居た。
う!ちょっとビックリしたぞ。
また変なのが来たな。
「強盗を成敗してるんだが、お前も此奴らの仲間か?」
「な、何!私はAランク冒険者のルイだ!お前等は何者だ。」
「俺達はただの旅人だ。」
冒険者って言うと、面倒な事になりそうだからなぁ。
「旅人?強盗の証拠はあるのか?」
ルイは訝しげに俺達を見る。
「此奴が白状したぞ。なあリーマバ!俺達の地竜を奪おうとして、剣を抜いたよなぁ。」
「俺・・・は・・地竜を・・・奪おうと・・・して・・・剣を・・・抜いた・・・。」
「ほらね。」
「う!しかし・・・。縛って逃げられない状況で手を斬る事は無いだろう?
この男は冒険者だ、裁定は冒険者ギルドに任せるべきだ。」
「手を斬った?・・・誰が?」
「え?貴方達が斬ったんじゃないのか?」
「どこに斬った証拠がある?」
「証拠?」
「斬った瞬間を見たのか?誰が何で斬った?」
「え?」
ルイは斬った瞬間を見ていない。
そりゃそうだろう時を止めてるし、見える訳が無い。
そして俺達は誰も武器を手に持っていない。
証拠は無い訳だ。
「魔法・・・魔力の残骸が無いし、魔力も感じなかったから、魔法じゃ無いか。・・・スキル?・・・そうだ何らかのスキルを使ったに違いない。」
ブツブツ独り言を言うルイ。
お!良いところをつくな。
しかし、面倒な女だ。
「お前も此奴の仲間だろう。」
「いや、違う違う。私は強盗等しない。」
「強盗の仲間じゃない証拠はあるのか?」
そんな証拠ある訳無いだろう。
まあ、リーマバに聞けば一発で仲間かそうじゃないか分かるんだけど。
多分リーマバの仲間じゃ、なさそうだが、お節介女は懲らしめないとね。
「いやいや、違うぞ。」
「なんか仲間がやられそうになったタイミングで、急に出てくるなんて怪しすぎるだろう。証拠も無いしな。」
「いやいやいや、悲鳴が聞こえたから、来たのだ。」
「信用出来ない!仲間じゃ無いなら、その証拠を示せ!」
「わ、私は強盗じゃないぞおおおお!無礼者おおおおおおおおお!」
ルイは剣を抜いた。
げっ、切れやがった。