057 ダンジョン内の昼食
迷宮都市リトットのダンジョンを攻略中。
このダンジョンに出てくるはずのない、インプを数回楽勝で倒して、素材を採取して先に進む。
「もうそろそろお昼の時間じゃな。」
と狐獣人の薬師ババ。
「お腹空いたー。」
ブラックジャガー獣人のノワが、お腹を撫でて俺を見る。
「お昼にするかぁ。この近くにお昼を食べる場所はぁ・・・。」
俺は冒険者ギルドで貰った地図を見る。
「ここに比較的安全で、モンスターがあまり出ないホールがあるのじゃ。」
ババが俺の見ていた地図に指を差す。
「近いねぇ。ここでお昼にしよう。」
「承知しました。」
ジャイアントハーフの聖騎士リンが、地図を見て行き先を確認した。
「早く行こー。」
ノワも地図を見て急ぎ足になった。
ノワは早く食べたいのか、モンスターの居ないルートを選んで進んでる様で、モンスターとは遭わずにホールに着いた。
そこは広い空間で3組の冒険者達が休憩していた。
どのパーティーもかなり厳しい戦いを経たのか、装備がボロボロで傷を負っていた。
俺達が入った入口の、1番近くにいたパーティーの1人が声を掛けてきた。
「おい、回復薬を持ってるか?」
「持ってますが、何か?」
おいおい、此奴ら回復薬が無いのか?
「数本寄こせ!」
はぁ、買うならまだしも、寄こせってあり得ないだろう。
「お断りします。」
傷は負っているが、ここはまだ地下1階だ、帰る事は出来るだろう。
ここから帰れない冒険者パーティーって、ダンジョンに潜る実力はないよなぁ。
「何!」
脅す様に睨む男を平然と見返す。
少しの間、睨んでいたが、諦めた様に・・・。
「ちっ、ケチだなぁ。」
「回復薬ぐらい、充分に用意してダンジョンに入った方が良いですよ。」
「ふん。そんな事分かってるよ、お前等に言われたくねえ。」
男は不貞腐れた様子で仲間達の元に戻る。
「インプが出現した為、かなり苦労した様じゃのう。」
「まあ、そんなところだろう。しかしまだ地下1階だぞ。休憩して帰れば良いだけだ。」
「もしかしたら、ここから帰る際に使う回復薬にも不安があるのじゃろう。」
「知った事じゃないね。」
お願いするならまだしも、「寄こせ」ではなぁ。
と俺とババが会話しているとノワが俺達を呼ぶ。
「タクミ様ー!こっちの開いてる所でお昼にしましょー。」
俺達はノワが手を振って待っている方向に向かう。
そこは、他の3組のパーティーから離れた場所。
俺はアイテムボックスから食材と調理道具を出して、ノワとババに渡す。
「え!こんな新鮮な素材で料理を作るのかのう。ダンジョンの中じゃぞ。」
ババが驚いている。
「食は重要だ。」
「まあ、そうなんじゃが、やっぱりタクミ様のアイテムボックスは規格外じゃのう。」
通常は干し肉やドライフルーツと乾パンの様な昼食らしい。
荷物になる為、アイテムボックスが無いから、大量の食材は持ち込まないらしい。
持って帰る素材も考えると、調理道具を持ち込むなんて考えられない様だ。
お昼はババの指導で、ノワが昼食を作成。
具材の多いスープと言うか殆ど鍋だね。
それと柔らかなパン。
そして焼いて味付けした肉。
「美味しいー。ババのレシピ最高ー。」
「うむ。ノワもなかなかやるのじゃ。」
「確かに美味しいです。」
「うんうん。美味いね。」
都市の飲食店で食べる様な昼食を食べてる俺達。
周りの冒険者パーティー達は、驚愕の顔と涎を流して見ていた。
「おい!良い匂いだなぁ。見ない顔だが、余所から来たのか?」
近付き声を掛けてきた冒険者がいた。
回復薬をくれと言った冒険者とは別のパーティーの男だ。
「・・・。」
無視して黙々と食べる俺達。
「おいっ!無視すんじゃねえぞ!美味そうな物を喰ってるじゃないか?俺達にも寄こせ!」
しかし冒険者って、どうして皆が皆、無礼な奴等ばっかりなんだ?