052 薬師ババ
第三王子レクは、改めて冒険者ギルドに来た。
無言でしおらしく、受付を通りギルドマスタードンゴルの執務室に入る。
ソファーに向かい合うドンゴルとレク。
「あのタクミと言う者は何者だ。」
「ギルドでは、アンタッチャブルの指定をされておりますので、何も答えられません。」
「ぬ!王家からの要請でもか!」
「はい。ギルドからは何も言えません。国が消滅するリスクを負うのなら、直接尋ねて下さい。」
「な、なんと!それ程の御仁か!」
「何も言えません。」
「むむ。」
「ご用件はタクミ様の件でしたか?」
「いや、元々はこちらの迷宮に入るのに、案内を頼むつもりだったのだが、護衛隊長が例の件で再起不能になった為、護衛兼案内の冒険者を紹介してくれ。」
「承知しました。何階ぐらい迄行くつもりですか?」
「地下30階迄は行く予定だ。」
「承知しました。Cランク以上の冒険者パーティーを紹介させていただきます。」
「うむ。頼むぞ。」
「はい。」
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<タクミ視点>
タクミ達は冒険者ギルドの騒動の後、ダンジョンに入る為の買い出しをした。
「ダンジョンには、何が必要だ?」
「食糧や回復薬、解毒薬・・・。」
ジャイアントハーフの聖騎士リンが考える。
「テントや寝袋、野営道具も必要だよー。」
ブラックジャガー獣人のノワが答える。
「野営道具なら、俺のアイテムボックスに入ってる奴でいいな。」
「そうですね。基本的に野営道具があれば充分です。」
「食糧はいっぱいあった方がいいなー。」
「そうだね。自炊するのに食材と、そのまま食べられる屋台の料理もいいな。」
「回復薬は何処で売ってる?道具屋かい?」
「そうですねー。道具屋にも売ってますが、薬屋の方がいいですねー。」
「小さい町だと道具屋しかありませんが、大きい都市には製造元の薬屋があるんです。後は逆に何でも売ってる総合商会も良いですね。」
「この都市には、暗部の系列の薬屋があるんだよー。」
「おお!そこに行こう。やっぱり初めての店よりは知人の方がいいな。」
俺達はノワの案内で、裏通りの薬屋に入った。
「こんちわー。」
引き戸を開けて気軽に店に入るノワ。
その後ろから俺とリンも店に入った。
「いらっしゃい。」
狐獣人の老女がカウンター越しに座っていた。
「ババ様、ダンジョンに潜るから、特級の回復薬と解毒薬をあるだけ出して!」
「おお!お嬢じゃ無えか!久しぶりじゃのう、いつこちらに来なさった。」
「今日の朝着いたんだよー。」
「そうかそうか。後ろの2人は知り合いかい?」
「主のタクミ様と仲間のリンだよー。」
「ほほう、主様ねぇ。私はババですじゃ。お見知り置き下され。」
「タクミだ。宜しく。」
「リンです。」
「お嬢、特級の回復薬と解毒薬は各10本で良いかねぇ。」
「あるだけだよー。主様はアイテムボックスのスキルがあるので、荷物にはならないんだー。」
「なんと!伝説のスキルじゃ無いかえ!じゃが、在庫は各10本じゃのう。上級でも良ければ出すぞい。」
「んじゃ、上級もあるだけねー。」
結局特級は各10本、上級は100本づつ出して貰う。
「ところで、お嬢、薬の錬金の腕は上がらんのかえ。」
「ん~。良くて中級までかなー。」
「自分で作る事が出来れば後々楽じゃぞい。」
「分かった!ババ様も一緒に来てー。ダンジョンで指導してよー。料理も自信ないしさー。」
「おやおや、主様のお許しは必要ないのかえ?」
「タクミ様、ババ様は私の錬金の師匠で、料理も上手なのー。一緒にダンジョンに来て貰っても良いでしょー。」
「そだね。良かったらお願いしよう。料理もノワに教えて欲しいしね。」
「しょうがないねぇ。在庫がすっかり無くなったで、商売が出来ないから、一緒に行くとするかい。」
「ありがとー。」
「じゃあ、錬金道具と材料も持ってくれんかい?」
ババと一緒に倉庫と錬金の作業場に行って、材料と錬金道具をアイテムボックスにしまった。
狐獣人のババが仲間に加わった。
結局食材と屋台の料理も、ババのお勧めを大量買いしたのだった。