046 迷宮都市リトット
俺達はマヒロシ王国に入り、王都チャマグに向かっている。
御者席にはジャイアントハーフの聖騎士リン、馬車の中に俺と向かい合って、ブラックジャガー獣人のノワが座っている。
ノワもリンもマヒロシ王国には何度か来たことがあるらしく、地理には詳しいと言っていた。
御者席よりリンが声を掛けてきた。
「タクミ様、本日は次の町で宿泊します。」
「そうねー。それが良いかもー。やっぱ地竜の馬車は速いわー。」
ノワが同意している。
「任せるよ。」
俺は地理が全く分からないので、二人にお任せだ。
「タクミ様ぁ、次の町リトットにはダンジョンがあるんだけどー、行ってみる?」
「おお、それは良いね。行ってみよう。」
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俺達はリトットに着いた。
門番がいるが入場は無料で、冒険者証を提示したら、問題なく町に入る事が出来た。
「先ずは宿屋だな。地竜を預けられる宿屋は何処にある?」
「中央部の高級宿屋ですねー。」
ノワが答える。
「そこに向かおう。」
「畏まりました。」
御者席からリンが答えた。
高級宿屋に地竜と馬車を預けて、チェックインした後、歩いて冒険者ギルドに向かった。
リンが無言で先頭を歩き、俺とノワが並んで話ながら続く。
「獣人が多いね。」
道で擦れ違う者、露店の店員も獣人が多い。
「そうですねー。この辺りは獣人の割合が人族より多いんですよー。」
「ふむふむ。」
冒険者ギルドに到着した。
木造だけどかなり大きい建物。
扉を開けて中に入る。
扉を開けると正面に受付、右側のホールが酒場になっていた。
夕方の依頼報告の時間帯と被ってしまった様で、受付は混んでいた。
酒場にも依頼報告後なのか、仕事後の一杯を楽しんでいる者も多い。
受付に並ぶ者も酒場で飲んでいる者も、獣人が多い。
列の最後に並ぶ。
俺達の前に並んでいた、ジャッカル獣人の男が振り向き、ノワに声を掛けてきた。
「見ない顔だな。どこから来た?」
「ミヤキザ王国から来たんだよー。」
「ほほう、ミヤキザでは獣人と亜人が、国を造ってると聞いたが本当かね。」
「獣人と亜人と人族の種族の差別の無い平等な国だよー。」
「何と!噂は本当だったか。俺も国造りに参加しようかと思ってたんだ。」
「冒険者でそれなりに稼いでるんでしょー。態々危険に身を投じなくても良いんじゃない?」
「それとこれとは話は別さ。今まで虐げられてたんだ。獣人が普通に生活出来る為に協力したいんだよ。」
「そうだねー。それは同感だよー。頑張ってー。」
「おいおい、お前はどうなんだ。」
「あー。私の家族達はその国の首脳陣でー。私は特別任務なんだよー。」
「え!そ、そうか。森の守護者であるジャガー獣人だもんな。特別任務については敢えて聞かないが、お前も頑張れよ。」
「お前?私の名はノワだ。」
「すまんすまん、俺はジャキだ。」
バアアアアン!!
その時、冒険者ギルドの扉が音を立てて、勢い良く開けられた。
「何だあああ、このギルドはあああ、獣臭いなあああ。」
「人族の男達ですねー。」
ノワが俺に囁いた。
全身鎧を来た数人の人族の男達が、冒険者ギルドにドカドカと入ってきた。