045 オーガの盗賊
俺はジャイアントハーフの聖騎士リンと、ブラックジャガー獣人のノワの3人で、地竜が引く馬車に乗り隣の国に向かって東に進んでいる。
東隣の国はマヒロシ王国。
北に山脈が聳え、東に高原が広がり、西に森林が広がる。
自然豊かな環境で中央部に王都チャマグがある。
人族の王と貴族が治める国ではあるが森林部には獣人族も多く住む。
俺達は森林の道を進む。
御者席にリンが乗り、俺とノワは馬車の中だ。
「「タクミ様、前方にオーガが数人います。」」
リンとノワが同時に声を出した。
「何だろう?盗賊的な感じかね。」
盗賊が出ても数人程度は全く怖くない。盗賊だったら倒しちゃうかぁ。
って感じだね。
「どうですかねー。」
「まあ、様子を見てみよう。」
「はい。」
リンは馬車を止める。
馬車の前では3人のオーガが道を塞いでいた。
「何用だ!」
リンは御者席より3人のオーガを見下ろす。
「ジャイアントハーフか。」
3人の内、真ん中で1歩前に出たオーガが呟く。
3人のオーガは、斧を肩に担いで身構えている?身構えているのか?
割と暢気な感じだね。
ノワも馬車から飛び降りてオーガと対峙した。
「用件を聞いているのだ、答えろ!」
「獣人か、ブラックジャガーか?」
「答えろ!」
リンが腕輪から剣を展開し、飛び掛かる。
オーガは斧でリンの剣を受け止めた。
ノワは短剣を出して構えた。
「待て!待ってくれ、答える。」
リンは飛び退きノワに並んだ。
「早く話せ。」
「俺達は盗賊だが・・・。」
ノワは踏み込んだ。
「ちょ、ちょっと待てよ、攻撃しないでくれ。」
オーガは斧を下に捨て、両手を上げる。
「だ・か・ら!早く話しなさい!」
リンがイライラし始めた。
「お、おう。俺達は隣のミヤキザ王国で亜人と獣人が国を造るって聞いて、参加する為に向かってるんだ、獣人と亜人に手出しはしないよ。」
「ふ~ん。人族だったら?」
「人族が通れば、勿論襲うよ。今まで虐げられてたからなぁ。手土産だな。それよりあんた達は隣から来たんだよなぁ。どんな感じだ。」
「それは困るな。」
俺は馬車から降りた。
「ひ、人族!」
オーガ達は下に捨てた斧を素速く拾い身構えた。
リンとノワが1歩前に出る。
「貴様らタクミ様に無礼だぞ!」
リンは左手に盾、右手に剣を展開する。
「隣国ミヤキザで造っている国は、人族も含めて亜人や獣人の全ての種族が、平等に差別の無い国だ。人族を打倒するのが、目的では無い。人族を襲ってる奴等は受け入れないぞ。もし、そんな考えならこの場で討伐対象だな。」
「そ、そうか・・・。」
「その国はタクミ様が造った!ひかえろおおおお!」
リンが大声を出して、剣を振った。
「おおおおお!それは申し訳ない。無礼をしました。」
オーガ達は斧をおさめ跪いた。
「いやいや、跪かなくても良いよ。顔を上げてくれ。」
オーガ達は顔を上げ立ち上がり、リーダー格のオーガが口を開く。
「人族はまだ襲っていません。これから襲わないでミヤキザ王国に向かいます。」
「人族をまだ襲っていないなら許そう。」
「我々3人の他にも十数名の群れのオーガ達がこの近くにおります。受け入れていただけますか?」
「そのくらいの人数は問題ない。是非、国造りに協力してくれ。」
「「「有難う御座います。」」」
オーガ達は平伏するのであった。




