034 亜人の国
ノワの母でジャガー獣人のミズキが、俺に問い質す。
「タクミ様、大切な事を確認させて下さい!我々はタクミ様がここに亜人の国を作ると言う認識でおりますが、認識はあっておりますか!」
まあ、亜人達にとっては大切な事だろうな。
オクオ達に自分達で国を造れって言ったものの、領主が務まらなそうなので、ジジイや教主レンを領主にしようとしてるし。
ジジイは兎も角、教主レンは会った事も無い人族だしね。
今までの虐げられてた境遇を考えると、人族はあまり信用出来ないんだろうね。
「勘違いするな。いいか、今から言う事を最後まで聞け!」
「はい。」
皆、無言で真剣に俺を見詰めた。
「俺が亜人の国を造る事は無い!」
「え!・・・。」
亜人達は驚き、諦めの表情になる。
特に奴隷であるコボルトのコウキとコボオ、オークのオクオは明らかに落胆した。
「お前達が国を造るんだ。」
「え?」
皆驚愕の表情になる。
「俺に国を造って貰って、そこに暮らすだけの安定を求めてどうする?」
「・・・。」
唖然として俺を見詰める皆。
「それがお前達の国か?俺の国に住ませて貰ってるだけだろう。そこに自由があるのか?もし、俺が死んで、危なくなったらまた逃げるのか?」
「・・・。」
「自らの手で苦労して自らの国を造れ!それが本当のお前達の国だ。自らの家族や種族の為に死ぬ気で守れ!そこに本当の自由があるはずだ。」
「その通りで御座います。私が間違っていました。タクミ様に全てを任せる他人本位の考えでした。」
ミズキが恥ずかしそうに、しかしやる気を見せて俺を見つめた。
皆もやる気に満ちた目に変わった。
「まあ、話は最後まで聞け。」
「は、はい。」
「亜人の国と言う事は・・・。
今此処に俺とジジイとヤマトの3人の人族がいる。また、ノワとリンは半分人族だ。俺達を追い出す気か?」
ノワの父は人族で母はジャガー獣人だし、リンはジャイアントハーフだ。
「そ、そんな事は・・・。」
「俺からのお願いだ。亜人だけの国では無く、人族も含めて全ての種族が、差別のない平等な国にして欲しい。」
「も、勿論です!」
ミズキが強く反応した。
「この土地と建国の資金は、俺が出してやる。そして、政治に詳しい者が、当面は領主として纏める事が必要であろう。」
「有難う御座います。その通りで御座います。」
ミズキは納得した様だ。
他の皆も希望と決意を胸に燃えている。
「この国は荒れる。チャンスだと思わないか?このチャンスに自分達の国を造ってみろ!」
「はい!」
皆の声が響いた。
まあ、成り行きで国を造る方向になったけど、王になったりするのは面倒なんだよね。
書類仕事嫌いだし、冒険したいし、得意の丸投げです。
土地と資金を出したから、俺が死ぬまでは良いように使う気満々の俺です。
俺って悪だよなぁ。