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悪逆無道の異世界冒険記  作者: ボルトコボルト
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019 決闘3

フカクオ公爵の次女カノンから決闘を申し込まれて、代理で出たジジイを俯せにして、たこ殴りにしていたら、王家の騎士がやって来た。


「そこで、何をしてる!」


「この平民が何か卑怯な事をして、神聖な決闘を汚してるのです。」

カノンは必死に騎士に説明している。


騎士はカノンに敬礼して、詳しく聞いてる様だ。


俺はジジイを殴ってるので、視線の片隅でその様子がぼんやり見える。


「リン、説明しておいて。」

殴る合間にチラッと見て、聖騎士リンに説明を頼んだ。


俺の顔を見た騎士達。

一瞬俺と眼が合う。


騎士達は一斉に俺に跪いた。

「使徒様、御目見得する事が出来て恐悦至極で御座います。」


リンはしゃがんで、騎士達に決闘の誓約書を見せ説明している。


「はあ?シト?誰それ?」

カノンは目を見開く。


俺の召喚に立ち会った騎士の生き残り9人の内、何人かがいたようだ。


「ちょっと待ってて。」

俺はジジイを押さえて、騎士を待たせた。


「畏まりました。このままお待ち致します。」

騎士達は跪いたまま待つようだ。


「ちょっとちょっと、おかしいでしょう。公爵令嬢の私に敬礼で、此奴に跪くってどう言う事?」


カノンは騒ぐが、騎士達は無視。


「おい、ジジイ!降参するか?」


「は、はい。降参します。私の負けです。こんな痛み耐えられません。これ以上殴らないで下さい。」


「騎士さん、決闘の決着は降参でも良いのかな?殺さないとダメ?」


「降参すれば決着は着きます。」


「じゃあ俺の勝ちだな。ジジイ、俺はこれでフカクオ公爵家の財産を全て手に入れた。王家暗殺部隊もフカクオ公爵家の財産と認識しているぞ。お前も俺の部下になったと言うことで間違い無いか?」


「え?何故私が暗部の者だと知ってるのですか?」


「そんな事、どうでも良いだろう!今でも暗部には所属してるんだろう?」


「確かに前隊長で今でも暗部には所属してます。」


「だったら、俺の部下でいいな?」


「は、はい。大筋に間違い御座いませんが、聖騎士リン様が決闘の当事者。聖騎士リン様の部下になった認識で御座います。」


ジジイは息を切らし痛みに耐えながら答えた。


「ああ、そう言えばそうか。リン!」


俺がリンの顔を見ると、リンは頷き。

「私はタクミ様の従者。私の物はタクミ様の物で問題ありません。それでも誓約上認められぬ場合は、権利をタクミ様に譲渡します。」


「リン、有難う。ジジイ、どうだ。」


「畏まりました。タクミ様の部下になる事に異論は御座いません。」


「良し、決闘は終わりにしよう。」


俺は立ち上がり、騎士とカノンを振り向いた。


「ちょっとおお!おかしいでしょう!何で爺がお前の部下になるのよ!」


「暗部は公爵家の財産だからね。あ、騎士の皆さんは頭を上げて立ち上がって良いですよ。」


「はい。畏まりました。」

騎士達も立ち上がり、俺とカノンに向き合った。


「この平民は卑怯なのよ。決闘する前に『剛剣』カイト様を殺害したわ。」


「ただの平民が『剛剣』カイト様を殺せるのですか?」


「え!そんなのどうでも良いから、いつもの様に連行して、拷問して無理矢理自白させてでっち上げなさい!

そして、この平民は殺人の罪で死刑にして、この決闘を無効にするのよ!」


この女、堂々と『でっち上げろ』って言い切っちゃったよ。


「はぁ、誰か使徒様が『剛剣』カイト様を殺害したところを見たのですか?」


「私が見たわ!」


「失礼ながらお嬢様、『剛剣』カイト様は、いつの間にか死んでいました。誰も殺された瞬間は見ておりません。」

お嬢様に反論するジジイ。


「爺!私の言う事に反論するの?」

カノンは『信じられない』って言う顔で、目を見開きジジイを凝視する。


「はい。真実ではありませんので。」

とジジイは無表情。


「むきいい!私が黒と言ったら黒なのよおおおおおおおお!」

カノンは怒り心頭だ。


「どうやら、誰も見ていない様ですね。恐らく、『剛剣』カイト様が亡くなったのは天罰でしょう。」

騎士はチラリと俺を見て微笑む。


「この決闘が正しく行われた事を、王家騎士隊が証明します。」


騎士がカノンに結論を述べ、俺を見て満面の笑みを浮かべた。


「何でそうなるのよ!公爵家に楯突いてただで済むと思っているの!」


「神に逆らうよりましです。それに財産を全て失った公爵家に、明日は無いと思いますよ。」


「ひぃ。何なのよおおおおおおお!」騎士の冷たいセリフに、カノンの泣き叫ぶ声。

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