118 悪魔討伐なんてしないよ
第二王女ラナの目的が悪魔討伐と知り抗議する、Bランク冒険者パーティー『栄光の大剣』の冒険者達。
「悪魔の討伐なんて聞いていません!悪魔は騎士隊の総力を持って倒すモノです。Bランクとは言え冒険者5人では、到底敵いません。我々に死ねとおっしゃるのですか!」
『栄光の大剣』リーダーのタスイは、強くラナに抗議する。
「騎士隊が後で来るのですよね?」
カトヨナがラナに問う。
「騎士隊は来ません。」
否定するラナ。
「そんなぁ。」
絶望の表情を浮かべるカトヨナ。
「騎士隊は最近建国したばかりのサトウ国との、戦争の準備で出動出来ないよ。」
俺がカトヨナに説明してやった。
「戦争?」
「タクミは、そこまで知っていたのですね。」
ラナは俺を訝しげに見詰めた。
「いいか、この国は、悪魔が出現しているかも知れない情報を掴んでいながら放置して、攻めても来ない国と体面を保つ為に戦争の準備をしてるんだ。」
「ほ、本当ですか?」
と『栄光の大剣』の冒険者達。
「その為に私が来てるのよ。悪魔を何とか退治出来れば王国は大丈夫よ。」
ラナは冒険者達に説明してるが、冒険者達に戦えって事だから、不安を煽るだけなんだよなぁ。
「あんた馬鹿か?王女1人と冒険者5人で、悪魔を倒せる訳無いだろう!」
俺が無礼な事を言っても、もはや誰も注意をしなくなっていた。
「だからデーモンスレイヤーのタクミが必要なのよ!貴方が、悪魔を討伐しなさい。」
ラナが俺に命令した。
「ヤだよ。自分の国の騎士で対応すればいいでしょ。」
「この村の村民が、殺されても良いって言うのぉ!」
ラナの台詞にビクッとする村長。
「問題をすり替えるな!国民の命を守る為に国軍を出さないで、他人任せにしてどうする。俺が悪魔を倒すとだな、結果的に戦争の片棒を担ぐ事になるだろう。俺に悪魔を討伐させておいて、しなくても良い戦争を起こし、大勢の人を殺すつもりなんだろう?」
「しょうが無いじゃない。それしか方法がないもの。」
「はぁ、それしかないって・・・。ラナは悪魔討伐に命をかけるんだろう?同じ命をかけるなら、戦争を中止させて騎士に悪魔討伐をさせる事に命をかけろ!」
「あんたなんかに、私の行動をとやかく言われたくないわ!」
「このまま進むと、戦争に負ければ王家は滅亡。例え戦争に勝っても、兵は疲弊しているから、悪魔が現れれば国が滅びるぞ。」
「えええええええ!!」
「マジかぁ。」
「ヤベぇじゃん。」
「こんなところで、護衛なんてしてる場合じゃないわ。」
『栄光の大剣』の冒険者達は嘆く。
「依頼は護衛だけのはずです。悪魔討伐は含まれていません。依頼の変更はお受け出来かねます。」
マイコもラナに食って掛かる。
無言でマイコを睨むラナ。
「おいおい、マイコさん、先程俺に『王女に声を掛けて貰ったら二つ返事で従え』って言ってたよな。従わないといけないんじゃないの?自分の都合で変えるなよ。」
「な、何を言うのよ!私達の命が掛かってんのよぉ!」
「どうせ詳しい内容を聞かず、王女のお願いだから浮かれて依頼を受けたんでしょ。護衛対象が悪魔に向かえば、戦わざるを得ないんじゃないの?依頼内容の変更では無いでしょう。」
「だ、だったら、どうすれば良いのよぉ!」
「大人しく悪魔から王女を護衛するか、護衛の為に王女を眠らせてでも無理矢理王都に連れ帰るか、依頼達成を諦めて逃げ出すかじゃないかなぁ。」
「そ、そんな事出来ないわよぉ!」
「知らんよ。俺達はそう言う事で村を出るから、もう絡まないでくれ。行くぞ!」
俺はノワとリンとルイを伴い、村を出て行く。
呆然としている村長と『栄光の大剣』の冒険者達は動けず、憤慨して言葉の出ないラナは俺達の後ろ姿を睨んでいた。