105 王都
俺達は王都に着いた。
王都は高い石壁に囲まれた城壁都市だ。
そして広大な敷地を持つ。
王都の城壁が見えてから地竜の馬車で暫く進むが、門が見えて来ない。
「ノワ、方向は間違って無いよね?」
「はい。間違い無いですー。」
「そっかぁ。」
心配になるほど、城壁が続く。
「そろそろ門が見えてきますよー。」
「どれどれ?」
ブラックジャガー獣人であるノワの声に、馬車から身を乗り出して見ると、馬車の列が並んでいた。
「混んでるなぁ。」
「そうですねー。あっ!リンさん、馬車の後ろに並ばなくても良いですよー。」
ノワが御者をしているジャイアントハーフの聖騎士リンに話し掛けた。
「ん? 貴族用の門からは、入れないよねぇ?」
「冒険者用の門もあるんですよー。王都では冒険者を優遇しているので、冒険者証を見せるだけで通り抜けられるから、早く入れますよー。」
「分かった。」
俺は2人の会話を黙って聞きながら、商人達の馬車の列を見ていた。
門に到着すると、門番が二人槍を持って門の両側に立っている。
俺達は馬車から降りて、冒険者証を門番に見せた。
「ん! ちょっと待て!」
「何でしょうか?」
リンが門番に確認する。
「Eランク冒険者のタクミ・・・、女性二人と・・・、地竜の馬車。」
「レク王子の通達の人じゃないか?」
門番二人はヒソヒソ話し始めた。
「冒険者証は確認したんだろ?中に入るぞ。」
俺は馬車に乗ろうとする。
「おいおい、ちょっと待ってろ!」
門番の一人が慌てて俺の腕を掴む。
「離せ!」
俺は門番の手を振り解く。
「ん! Eランク冒険者の若造が大人しくしてろ!」
門番が俺の頭に拳骨を落とすが・・・。
バシッ!
俺は左手で門番の拳を掴み、握り潰す。
バキバキバキッ!!
「ンギャアアアアア!」
お!魔王の手甲を着けてるから、相当痛がってるな。
門番の悲鳴に他の門の門番も駆け寄って来た。
「どうしたぁ!」
俺に拳を握られ、悶絶する門番を見て剣を抜いて構えた。
「狼藉者ぉ!」
俺は手を握っていた門番を、後から来た門番に投げ飛ばす。
「何だ? 剣を抜いたと言う事は、俺を殺すつもりだね。と言う事は殺されても文句を言うなよ。」
「きさまぁ!王国の門前で狼藉をはたらく者は極刑だ。」
「ほう、俺に喧嘩を売ってるんだな。」
俺は右手を握り、拳の右側で門を強く叩いた。
空手の横鉄槌と言う技だ。俺は『拳神』のスキルを持っているので、怒りに任せて拳を振っただけなのに、スキルに補正された様だ。
開いた足が踏み込まれ、腰の回転の延長で腕が回る、曲げた肘を伸ばす力も加わる、身体全身の力が拳に乗る。
そして魔王の手甲は攻撃力を増加させる。
その結果。
ズガガガアアアアアアアアン!!!
吹き飛ぶ鋼鉄の巨大な門。
舞い上がる土煙。
驚愕の門番と門前に並ぶ者達。