100 衛兵隊長シミョー
俺とジャイアントハーフの聖騎士リンと、ブラックジャガー獣人のノワは宿の裏庭に行き、地竜の馬車に乗り込もうとした。
「タクミイイイイイイイ!」
叫び声がしたので振り向くと、十数人の衛兵達が現れた。
「居たぞ!」
「あいつらだ。」
その中央にトナル商会のキーアがいた。
叫んだのはキーアか?
「タクミ!すまねぇ、ヨイ伯爵にはドラゴンの情報を報告しねぇと、罰を受けるんだ。」
「ふ~ん。それで?」
「けしてお前の損にはならねぇ。ヨイ伯爵は何も無理矢理奪おうって訳じゃねぇ。ドラゴンの亡骸を買って貰うんだ。」
「断る。ドラゴンの肉は俺達が食べる。」
「そうだ、そうだ。私達が食べるんだからぁー。」とノワ。
「素材だけでも売れば良い。」
「それも断る。角も牙も爪も・・・。骨も皮も内臓も血の一滴も売る気はない。」
「おい、小僧、俺は衛兵隊長のシミョーだ。買って遣るって言ってるうちに、大人しく売った方が身のためだぞ。冒険者ギルドに納品出来ないんだ、どうせ、不正に入手した物だろう。」
衛兵の中から全身鎧の一際大きい男が前に出てきた。身長は2m弱だろうか、ノワと同じぐらいだな。
「不正?不正ってなんだ?」
「ははは、お前らがドラゴンを倒したとでも言うのか?どうせ、誰かが倒したドラゴンを盗んだんだろう。さあ、出せ!」
「ドラゴンは俺が倒した。断る。」
「おいおい、小僧を虐める趣味はないんだがな。どうしても断るならしょうがない。」
「シミョー!何をぐだぐだ言ってる。もう、さっさと殺して奪うのだ。金もかからなくて良いだろう。」
シミョーの隣に貴族の男が現れた。
「そいつがヨイ伯爵か?」
「そいつだとおおおおおお!無礼者!平民風情がああああああ!!不敬罪確定だ!」
「あんたは誰だ!貴族と聞いてないぞ!不敬罪にするなら、名前ぐらい名乗ったらどうだ。」
「ふん。ヨイ伯爵の次男モスクだ!」
「伯爵じゃ無いなら、貴族では無いな。不敬罪は適用出来ないだろう。」
「なにいいいい!」
「坊っちゃん、あいつの言う通りですよ。伯爵の息子は貴族ではありません。」
「シミョーオオオオオオ、煩い!あいつらを殺してしまええええええ!」
「悪いな。これも仕事だ。」
シミョーは剣を抜いて構えた。
「抜刀おおおおおお!!」
十数人の衛兵達も剣を抜いて構える。
「ひ、ひぃ!タクミ!すまん!」
キーアは崩れ落ちる様に両手を地に付け、泣きながら謝る。
「かかれえええええええ・・・え・・・。」
シミョーが号令をかけている途中で、シミョーと十数人の衛兵の首が落ちた。
「な、何が起こったあああああ!」
叫ぶモスク。
「あんた達馬鹿でしょぉー。ドラゴンスレイヤーを、これっぽっちの人数で倒せると思ってたのぉー?」
ノワが吐き捨てる。
「ま、まさか本物のドラゴンスレイヤーだったのか・・・。」
唖然とするモスク。