追われる女性
「へぇ……。」
僕の口からは思わず声が出ていた。
それ程までに今僕の目の前に広がる光景は綺麗で圧巻だった。
目の前にはただただ綺麗な草原があるのみ。
五分ほどその場で見とれていた後に僕は気づいた。いや、気づいてしまった……。
見渡す限りの草原が辺り一面に広がっている。つまり少なくともここから見える範囲には何もないということだ。
さらに道の一本すら見えないのだ。
「どうしよう……。悩んでても仕方ないか!」
そう言い適当な方向に歩き出す。
それからどれ位歩いただろうか、ここに来たときには真上にあった太陽がもう既に沈みかけている。
「な…い……。」
そう!歩き出してから人一人道一本街一つ見ていないのだ!
「本当にこの世界には人いるんだよなぁ?」
そう呟いた時だった。どこからか女の人が男二人に追いかけられているのを見つけた。
「居た!」
そう叫ぶと僕はそこに向かって走り出した。
「やめろ!その女性から離れろ!」
僕はそう男たちに叫んだ。
「誰だ貴様は!もしかしてあいつの仲間か?」
男のうち一人が僕にそう問いかけた。
「僕の名前は零斗だ。よってたかって苛めて楽しいか?」
「零斗…聞かん名前だな。取り敢えず部外者は黙っていろ!」
そう叫び男二人が剣を抜いて襲い掛かってくる。
しかし、僕の目には二人の県の軌道が見えた。
体は軽く、男たちの剣を避けると、男の内一人の腹を殴る。勿論一般人の拳が効くとは思えなかった。しかし、拳が男の腹にめり込み男は後ろに吹き飛ぶと気を失った。
「貴様!よくも!」
もう一人の男がそう叫びながら県を振るう。その剣を軽く避けるとさっきの男と同じように腹を殴った。この男を先程同様吹っ飛ぶと気を失った。
「貴女は誰?それにさっきの魔力……」
「僕は零斗。君の名前は?」
「私の名前はダクリス。それにしても貴方凄い魔力してるわね?」
「魔力?使ってないよ?」
僕は正直に答えた。ここで嘘をついても仕方がないし、まだ僕は魔法を使い方すら…いや、魔法が使えるのかすら分からないのだ。
「無意識に使ってたって言うことかしらね?使えそう…」
女性の最後の言葉はあまりにも小さくて僕には聞こえなかった。
「街ってどこにあるか分かる?」
「街ならここから向こうに行けばあるわよ。」
そう言って指を指した方向には確かに仄かな光が見えた。
「君はどうするの?」
僕はそう女性に問いかけた。
「私は…ついてくわ」
そういい二人で街に歩き出した。