【1】始まりはいつも日常系
雨が降り続く梅雨の時期、俺はある猫と会った。凄く綺麗な猫と。
俺はある高校に通う普通の男子高校生だ。
「まだ雨は止まないか〜」
俺は降り続ける雨を見て呟く。雨の匂いが心地よい。
「そろそろ帰らないとな」
俺は傘を持って学校から出た。傘を開く。今朝に降った雨の残りが傘を開いた時に飛び散る。キラリと光る雨粒。
水溜りを踏みながら歩く。雨は嫌いでは無かった。特に雨上がりに日光を反射する水溜り。見ていると心が洗われるようだった。
「はぁ」
下を見ながら歩いていると
ニャー と鳴く声が聞こえた。
「ん……? 猫?」
声の方を見ると白い毛に蒼色の目をした子猫だった。ニャー と言って俺に擦り寄ってくる。
「可愛いな。 捨てられたのか」
その子猫には首輪が着いていた。毛並みもよく野良猫には見えなかった。
「ごめんな。家には連れてけないんだ」
俺は一人暮らしをしていたが、アパートに住んでいて動物は飼えなかった。
俺はその猫に傘をあげて少しだけ撫でてやった。撫でると可愛い声で鳴いた。
「ごめん」
そう言って俺は家に急いで帰った。
7時頃に家に着いた。下着まで雨で濡れてしまった。
「風呂に入ってからご飯を食べよう」
雨で濡れた体に風呂のお湯はとても気持ちの良いものだった。
「あの猫、可愛かったな。置いていって可哀想だったけど…ハァ」
ずっとあの猫が気がかりだった。置いていって良かったのだろうか。俺は風呂からあがりご飯を食べ、すぐに寝た。明日は休みだ。何をしようか。そうだ! あの猫の様子を見に行こう。
…………今は何時だ?
「うーん」
まだ眠い。時計を確認しようとするが、いつもならベットの近くにある時計が無い。
「あれ?」
俺が声を出した瞬間、
「え? 起きちゃった? 嘘? ドッキリさせようと思ったのに」
は? なんで俺の家に誰かいるの?
「誰だーー!!?」
がばっと起き電気をつける。そこには耳がある少女が立っていた。
「ニャーー!!? 急に電気つけないでー!」
その場でその娘はうずくまる。
「俺の家だぞ!! なんで入ってきてる!? てか誰だお前!」
少女は顔をあげて首を傾げる。
「誰って傘かしてくれたじゃん。」
は?
「誰にも傘なんて貸してないぞ」
誰にも傘なんて貸してない。あの猫にはあげたが。
「かしてくれたよー。『ごめん』って謝りながら。雨が酷くて寒かったんだー ありがとね」
え?
「もしかして 昨日の子猫!?」
いやいや そんな事あってたまるか。アニメかゲームの世界じゃあるまいし。
「そーだよ」
……ハァ
「疲れてんだな。もうちょっと寝よ」
布団に潜る。
「ニャー!? だめー! 恩返しする為にきたんだから!!」
そんな事あるわけないだろ。どう考えてもおかしい。確かに俺は猫に傘をあげた。でもこんな女の子にあげた覚えはない。てか猫が女の子になる筈ない。
「え? ホントに寝たの?」
寝る。頭がおかしくなりそうだ。
「寝た! なんでさ!そんなに格好おかしいかな?」
夢だ。そう言い聞かせて布団を深く被り頭を空っぽにして寝た。
チュンチュン
「朝…か。起きようか」
体を起こそうとするが思い通りに動かない。何か重いものがのっている感じだった。
「なんだ?」
見ると夢に出てきた女の子だった。俺の上で寝ている。
(なんでいるんだー!? 夢じゃなかったのかよ!?)
それにしてもかわいい。俺のクラスにいる女子なんて比べ物にならないくらい。銀色の髪に少し照れているような薄い紅色の頬、そして猫耳。
一応俺は高校生だ。こんな可愛い娘が朝起きたら俺の上でスースーと寝ていて……。
心臓がバクバクと高鳴る。
(落ち着けぇぇ! コイツは勝手に俺の部屋に入り勝手に寝てるやつなんだぞ!!)
「う、ん」
少し寝返りをうった。そのときにフワッと甘い春のような香りがした。その匂いにドキッとする。
(なんでこんなにいい匂いなんだよーー!!)
俺はコイツが起きるまで待つことにした。起こしてやるのも可愛そうだし、なにより、別に嫌でも無かったから。
続く