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「…………そんな」
がっくりと項垂れているフェリ。
「ええっと…………」
「特に何も言ってやるな」
何故フェリががくりと項垂れているのか。今俺たちは街から離れて野宿をしているのだがその上で自分たちの身の上の話をしていたのである。まあ、俺の身の上話は特にこれと言って何でもない話だが。フェリの身の上話も特に面白い話ではない。魔法使いになって、高い才能と実力を得て、それで調子に乗った結果が先の決闘騒ぎということである。それ以外に取り立てて特別なことはない。アーシェも……アーシェは自分の事情を隠しているようなのでそれなしで、錬金術師の弟子をやっていた話である。
そこでフェリが愕然とする羽目になったのである。何故ならアーシェは魔法使いではない。魔法の才能は高いし、魔力も多いし、何故かたくさんの魔法も知っているのだが、そもそもからして魔法使いではなく錬金術を使っているのである。錬金術で全属性の魔法の才能を必要とするもので魔力も使うのでそこで魔法の力も高まるのでは、とかアーシェの魔法の実力が高い色々な理由は思いつくのではあるが……まあ、アーシェの実力が高い理由はおいておくとして、アーシェは魔法使いとして本職ではない。その本職ではない魔法使いに魔法使いとしてしっかりと経験を培ってきた自分が負けた、という事実にフェリが気づいてしまった。
「魔法使いじゃなかったなんて……」
同じ魔法使い相手に負けたのであればまだ納得も言ったのかもしれないが、残念ながらアーシェは錬金術師だった。素人に負けたということで落ち込んでしまったようだ。
「フェ、フェリちゃん……」
「……実際アーシェが決闘で勝てるとは俺も思わなかったんだが」
「ええー……でも、私もちょっと勝てると思って戦ったわけでもなかったかな? 旅に出たばかりの時の私じゃ戦うって選択肢もなかっただろうし」
「ここに来るまでいろいろとあった……ってほどでもないがあったからな」
なんだかんだで今までの経験でアーシェ自身も成長している、ということなのだろうか。
「ミツヤスさんの色々とすごい戦いを見てたからねー。私もちょっとは頑張らないと、って思っちゃうかな」
「……何? これそんなに強いの?」
「人をこれ扱いなのはどうなんだろうな?」
ちょっぴりイラっと来る。しかし……フェリがこちらに見せる気配は基本的に友好的な感じではある。しかしそこに敵意を含んでいるのもまた事実だ。なんというか、嫌いでないし仲はいいのだが相性が悪い、という感じだろうか? まあ、悪意を含んでいるわけではないしこちらのことを嫌いというわけでもないし、普段は何でもない感じだが……アーシェが絡んでくるとちょっと雰囲気変わるなこいつ。まあ友人だから、だろうか……?
「凄いよー。高い所に飛んでいる魔物を落としたりとか、盗賊の人たちをたくさん……倒したりとか、ともかく凄いんだからー」
「へえ…………」
アーシェの言葉を話半分に信じる程度で聞いている感じのフェリ。まあ実際にそんなことができるのかは疑問だろうな。アーシェみたいに魔法で、ならわかるが剣技でってなると一般的ではないだろう。この世界はファンタジーっぽい世界ではあるが、物理法則的には普通だ。俺も魔法以外、師匠から学んだ剣術以外でその手のとんでもない武術系統は見た覚えがないし。
「強いのよね、ミツヤス?」
「まあな」
「じゃあ実力を見せてもらおうかしら。少なくともアーシェよりは強いんでしょ? いいわよね」
「……そういうところが今回の決闘を招いたんじゃないのか?」
「……否定できないわね。で、どうするのよ」
フェリは俺の言葉は否定しないようでそこそこ自覚はあるようだ。しかしだからと言って先に言ったことを覆す気はないようでもある。これはあれだ……一度、フェリの自信、高くなった鼻をへし折ったほうがいいかな。容赦なく叩き潰して、誰が一番強いかわかったほうが自重する……とは思わないが、まあ比較的いうことを……聞くかな? ちょっとあれだが、まあ実力を見せたほうが後々に都合がいいと思う。
「はあ。どうせやらなきゃ納得いかないんだろ?」
「そうね。ここでやらない、って言われたら……まあ、話もしてやらなくなるでしょうね」
視線がかち合う。まあ、なんだろう。仲良くなれる相手なのにこう、戦わなければならない相手というか……悪い奴ではないんだけどな。
「じゃあ、いつでもいいぞ」
「剣は抜かなくていいのかしら?」
「こっちが剣を抜くのはそっちの詠唱と同じようなものだからな。対等に戦うべきだろ」
「ふーん……まあ、いいわ。アーシェ、合図お願い」
「……二人ともやめようよー」
アーシェはこの戦いに乗り気ではない。まあ連れと友人が戦うことになるっていうのはあまり良い雰囲気ではないか。
「それはできないわね。アーシェは実力が分かってるからいいけど、ミツヤスはわかってないもの。しっかりと実力を把握しないと仲間として認められないじゃない」
「だとさ。何、殺し合いをするわけでもないしお互い傷つけあうってわけでもないだろ」
「ええー……」
「言っておくけど、容赦せず魔法をバンバン使うけど?」
「その程度で勝てると思ってるなら安いな」
さっきと同じように視線がぶつかり合う。というか、向こうが睨んできている。お前は弱いというわけでもないし、なめているわけでもないんだが、実際俺がするべきはフェリに斬りかかって倒すのではなく、フェリよりも強いことを示す、それだけでいいはずだ。なので近づく必要も、フェリを倒す必要もない。俺が相手をするのは魔法だけでいい。
「……本気行くわよ」
「どうぞ」
「アーシェ! 早く合図!」
「もう! 二人とも知らない! 始めー!」
アーシェの合図とともにフェリが魔法の詠唱を行う。それと同時に剣を抜き構える。
「フレイムシュート!」
炎の球が飛んでくる。速度が速い。当たれば火傷ですまないどころかかなり遠くまで吹き飛ばされそうな強力な炎の一撃……だが、この程度に対処できないほどではない。剣を振るい、その流れに沿わせ炎の方向を逸らす。
「……はああ!? 何よそれ!?」
「剣で魔法を逸らしただけだが」
「出鱈目に過ぎるでしょうが! ああ、もう! 絶対ぶっ倒してやるわ!」
いかん、フェリがキレた。
「フレアビット! フレイムレイ! ファイアーレイン! フレイムピラー!」
「どれだけ魔法撃ってくる気だお前!」
飛んできた炎の魔法の球、直線の動きではなくジグザグとした無軌道的な動きをしてきた。恐らくはランダムな動きを加えながらの誘導攻撃、斬り捨てて対処をしようとしたところでレイ、光線系の炎の魔法。その攻撃を回避しながらフレアビットを切り落とし、次に来るのが炎の雨。もっともファイアーボールの雨ってところなので回避しながら当たりそうなのには対処。最後にフレイムピラー。これは空中で迎撃。アーシェもこんな感じのことはやってたな……よくアーシェの実力でできたものだ。
「はあ……はあ……何よ、もう……全部無傷で対処するんじゃないわよ……」
「いや、あたったらやばいだろ今の……で、魔法をたくさん使って疲れてるみたいだが?」
「一度に四つも使えばちょっとは疲れるわよ。でも、まだまだいけるわ。ファイアーストーム! ウインドストーム!」
今度は二属性の魔法を同時に使用……前のように合わせてこないようで二つの魔法の竜巻が向かってくる。
「はあ……まったく、普通なら最初の時点で終わってる……だろうに!」
気合一閃。魔法を切り裂いて消し去る。
「………………私の負け、ね。まだまだ魔法は使えるけど、ミツヤスもぜんぜん本気じゃないわよね」
「まあな」
「近づいて気絶させるってこともできるのにしてこないんだもの。完璧に私の負けでしょこれ」
「……フェリがそれで納得してるなら決着ってことでいいよな?」
「はいはい。アーシェ、私の負け。ミツヤスの勝ち。審判よろしく」
「はーい。ミツヤスさんの勝利ー!」
なんか、軽い。でもまあ変に重くなるよりはよかったか?




