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妄想設定作品集二  作者: 蒼和考雪
alchemist
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33



 現在アーシェと一人の女性……女性というには若いな。アーシェと同じくらいか、少し年上か年下か、まあそれくらいか? まあ女の子がいる。見た目的な印象からどう考えてもこの街にいた多くの魔法使いの同類、まあつまりは魔法使いだろう女の子だ。そもそもこの場にいる群衆が魔法使いの男ばかりなわけなんだが、つまりは魔法使い同士か何かの対立のようなもの、と最初は思ったわけだった。

 しかしどうやら話を聞いた所、なんというか……賭け試合のようなことをしているらしい。何度か既に男どもが挑んで返り討ち、持ち物を持ってかれてこの群衆の中に混ざっているとのことらしい。

 そもそもどうして賭けになったのか、というと女の子が生意気なことを言って喧嘩になりその流れでということらしいのだが。そもそもそれに何故アーシェが巻き込まれているのかというのが大いに問題だ。まあそのことに関してはおおよそここでこそこそ話している内容を聞けばわかるんだが。

 何人かが挑んで誰も勝てていない状態になったのが最初。当然この中で一番強い人物が挑むわけだが、それでも負ける。そうなると勝ち目がないわけだ。一番強い人間で勝てないなら一対一で勝つのはよほど運がいいとか、消耗しているとか、相性がいいとかでなければ勝つことができない。そこで他所のまるで関係ない人間を連れてきて相手をさせようと言うことになったらしい。それで巻き込まれる方のことはまるで考えない行動だが、別に自分たちに害があるわけでもない。勝てば得、負けても損はしない。


「ふざけた話だな」


 アーシェが勝っても負けてもいろいろと面倒な話になりそうだ。まあ、とりあえず負けを想定しておこう。負けた場合相手の物の所有権をあの魔法使いの女の子が持つ、そういう決闘条件であるらしい。無理にすべてを奪うつもりはないが、持っている物はほとんど持っていかれる状況になるらしい。まあ決闘という形態でそういう約束事になっている、みたいだ。ちなみにあっちが賭けているのは自分自身のようだ。ずいぶん自信があると言うか、向こう見ずというか? 女の子なのだからその身を大事にしてほしい、と思う所である。

 とりあえず、アーシェが負けて持ち物を奪われたら即行で奪い返してアーシェを連れて逃げる……当面はその方向性でいいか。アーシェが勝った場合はとりあえず問題は……ここの奴らだな。






「さあ、魔法で戦うわよ!」

「ええ!? 危ないよ!?」


 いきなり決闘に連れてこられたアーシェにはどういう状況かわかっていない。いきなり魔法で戦うと目の前の女の子が宣言してきても当然対応できない。その宣言をした女の子としては当然決闘を行うのが決定事項であるのでそんなふうに怖気づくアーシェに対してイラっと来てしまう。


「何よ! 私の前に来たなら戦うつもりなんでしょ! さあ、やるわよ! 怪我とかはしたら治すし、この決闘の条件でせいぜい気絶するくらいで済まされるわ! 言っておくけど、何もしてこないとしても容赦はしないわよ! フレイムボム!」


 女の子が手の上からいくつかの赤色の球を生み出す。炎の球、爆発現象を起こす炎の魔法の一つ。通常大きな球を一つ生み出すのだが、彼女の生み出した炎の球は小さい球が複数である。攻撃能力としては本来持ち得る爆発的な威力……高い攻撃力はなくなるが、その代わり避けにくい、広範囲を攻撃できる、複数を対象にできるなど様々な利点があるだろう。


「わっ!? ウインドストリーム!?」


 飛んできた炎の球をアーシェは風の魔法で防ぐ。風の流れを生み出し、その流れに炎の球が乗りアーシェから逸らされる。それをまともに受けるのは周囲の群衆だが、それに関しては決闘の要件なりなんなりで影響は少なく、また彼らも魔法使いであるのだからそれくらい自分で防げと言われることだろう。自衛できないのであれば危険の少ない場所で見ろと言うことである。


「へえ! やるじゃない! ファイアピラー!」

「ウインドバースト!」


 炎の着弾点、その点から発される火柱。角度を変えて斜めに狙いをつけられる炎の魔法。その魔法を着弾する前に、その着弾地点に風の魔法で攻撃をする。その余波で思わぬ形で炎の魔法が着弾前に発動し、アーシェから狙いが逸らされる。

 どうやればそんなことができるのか、と思わざるを得ないアーシェの成長。今までの光安に色々と教えられた薫陶があればこそ、だろうか。それとも彼女自身にその手の才能があるからだろうか。それはわからないが、確実にこの戦いで本能的に彼女の成長が促されている。下手に温い環境で育つよりも過酷な環境で育てたほうが成長力が高い性質なのだろうか。

 そんなアーシェに関する推察はさておき、アーシェと戦っている魔法使いの女の子はアーシェの対応力に楽しそうに笑う。彼女としては敗北は悔しいが、強い相手と戦えるのは嬉しいし楽しいことなのだろう。別に戦闘狂というわけでもないし、そもそもの発端はアーシェの後ろにいる群衆との口げんかなのだがもはや彼女はその発端を気にしてはいないだろう。


「フェニックス! これはどう!」

「ふええ!? ウォーターウォール!!」


 突如現れた炎の鳥にアーシェは驚きを見せるも、それが飛んでくることが分かるとすぐに水の壁を張る。アーシェの属性は全属性でありあらゆる魔法が使えるに等しい。全属性を持つことから魔力が高くそれなりに強力な魔法を使える。もっとも本人にあまり自覚はない。魔法よりも錬金術をメインとして活動していたせいであまり魔法の方の成長はしていないからである。それでも彼女は多種多様な魔法を覚えているし、そもそも詠唱とかあまり気にせずとも感覚で魔法を使えるほうなのでそれほど問題とはなっていない。


「二属性? ふうん……いいじゃない! フレアバースト!」


 炎の鳥は水の壁に負け消えそうになっている。そこに魔法使いの女の子は炎の球を打ち込んだ。その炎の球は水の壁にめり込み、爆発する。


「きゃあっ!?」

「……あら?」


 アーシェは咄嗟に目を瞑る。目の前で爆発的に膨れがあがった炎とそれが弾く水の余波を受けそうになったからである。本来ならばそれは魔法使いの女の子の狙いである炎の鳥の攻撃を受ける危険があったのだが、その爆発の余波を受けたのはアーシェだけではない。水の壁にぶつかっていた炎の鳥も当然影響を受ける。もっとも先ほどはなった炎の力があればそれを吸収して幾分か耐えきれると女の子の方は思っていたのだが、水の壁が思ったよりも耐久力が高く、水を多く飛ばしてそれを炎の鳥が被ったことによって減衰したのが悪かったのだろう。

 過ぎたことは忘れ、自身のミスも今は置いて魔法使いの女の子は次の手を打つ。


「予想以上、かしら! フレイムトルネード!」

「っ! アクアストーム!」


 炎の竜巻と水の竜巻が生み出されぶつかり合う。もはや周囲の被害を考慮しているのかと思うくらいのものだがそれはすでに関係ないのだろう。実力試し、決闘という舞台でどちらが勝つのか、それが求める目的である。


「さあて、もう一手! ウインドトルネード!」

「ええっ!?」


 二属性。別段魔法使いとして複数の属性を持つのは珍しくはない。しかし属性を持っているからと言ってそれらの属性を活用できるかはまた別の問題である。そして今回の彼女の行動は同時に別々の属性を使用すること。いまだに水の竜巻と炎の竜巻は維持されぶつかり合っている。炎の竜巻が維持されている状態で風の竜巻を生み出すとなるとそれは両手で別々の絵を描くようなもの、かなりの高難度である。

 そして風の竜巻は火の竜巻と合わさった。通常別の魔法がぶつかればそれらが相殺し合うようなものになるのだが、そうはならなかった。完全に制御された炎と風は風が炎を強化する形となっている。


「これでどうっ!」

「わわわわっ!?」


 強化された炎の力に押され水の竜巻は蒸発して消えゆく。それを見たアーシェは咄嗟にどうしようか迷った。


「もももももうっ!! ええいっ! これだー! フロストキューブ!」

「氷!? 三属性!?」


 別に三属性は珍しくもない。同時に使用しているわけでもないので使えてもおかしくはない。それでも複数属性を鍛えるのは面倒で大変、それもかなり強いレベルの実力を出せるのは珍しい。もっともアーシェは全属性、しかも錬金術でどうしても属性の魔力を扱うことには長けている。なのでそういった常識は通用しない。そして四角の氷は炎を氷の中に閉じ込めた。もちろん物理的に存在する炎を閉じ込めることは出来ず、炎と氷は互いに相殺し合う。氷が完全に説け切る頃合にはほぼ炎も消えていた。

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