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依頼を受けたりしつつ、フィアレイエでしばらくの時間過ごした。すぐ次の街に向かうのも悪いわけじゃないが、一応ギルドとかで確認したがまだ本当に安全かははっきりとしていない。もしかしたら街にギルドや入り口の兵士とは別の私兵でも見張りにしていてそちらが情報を持っていくと言う可能性だってある。まあ流石に他所の街に自分の私兵を置くのは難しいと思うし、そこまでするほどの事かとも思うのだが、やはり可能な限り注意しておいた方がいい。そういったことを考えながら過ごしていた。
もっとも杞憂だったようで特に何事もなく普通に過ごすことができた。
「はふー……」
「気を抜きすぎじゃないか?」
「別にいいでしょー。ミツヤスさんは気を張りすぎだよー。せっかく街の中でゆっくりできるのに、ずーっと色々と気にしすぎだったよね」
確かにちょっと周囲に対しあれこれと気合入れて注意していたのは事実だが。
「俺から言わせてもらえばアーシェが色々と気にしなさすぎな気もするけどな……まあ、ちょっと俺もいろいろ気にし過ぎなのは確かだろうけど」
アーシェのういう通り俺自身あったことに対し最悪を想定し過敏に考えているというのは確かだろう。だがそれを言うならアーシェはあまり気にしなさすぎというか、油断が過ぎると言うか、考慮が足りていないと言うか。アーティレンでも……いや、あれはアーシェが悪いわけではないのだが、アーシェはアーシェでかなり隙が多い。こう、不意打って気絶させて連れ去ることができそうなくらい油断しすぎな感じだ。最初に会ったときもそうだが、色々と考えが甘い所も多い。まあ、今は当時と比べて……比べて……どうだろう。全然成長していないのではないだろうか? いや、少しは成長しているか流石に。
「むう」
俺の言葉にアーシェも不満があるのかむっとした表情をしてこっちを見る。不満はあるが思う所はあるのか文句は言ってこない。でも非難の視線で見られるのはこちらとしても居心地が悪い……特に今いる場所は狭いし。
「ほら、むくれるな……どうせ船の上だ、街並みの方にでも目を向けたらどうだ? せっかくの観光船なんだからな」
「……そうだね」
今俺たちのいる場所は船上。フィアレイエの中を流れる川で観光事業をやっている観光船の上に乗っている。こういった観光事業は多くの街でもやっているところは多くない。まあまず見どころがある街というのが少ないのもあるし、あったとしても街の中の安全な場所にあるとは限らないのでしかたがない。そもそも観光事業というものがあまりこの世界においては一般的でないと言うのもあるだろう。
そういった観光事業だが、川の上の船でゆっくりとするということ以外はあまりこの船でやれることはない。せいぜいが街並みを川から見て楽しめるくらいだ。せめて桜で花見とか、大きな塔みたいな見どころのある物を見て回るとかそういうのがあればまだしもただ街並みを見るだけというのはあまり面白みがない。物珍しさはあるが、売りとしては弱いだろう。
「あんまりわくわくはしないね」
「まあ、そういうものだろうな。船に乗ること自体が珍しいからそれを楽しむのはありか?」
「うーん、確かにそういうのはあるかも? でもずっと座ってるのもつまらないかな」
まあ動き回るのは難しい。船の大きさの問題がある。
「釣りとかもできればまだいいかもしれないが、ただずっと座って周囲を見るって言うのは結構暇だな」
「釣り? うーん……できても私はやらないかな。得意じゃないし」
「やりたい人はいるかもな……川にどの程度釣れる魚がいるかは知らないが」
一応魔物とかもいる場合があるようだが。でなければ護衛の依頼など出ていないだろう。そういうこともあって釣れる魚自体があまり入ってきていない可能性はある。柵もあるし。でもそれならこの街中の川を生け簀として使うことはできないか? いろいろ考えは浮かぶが……しかし、それを俺が考えても仕方がないな。この街のことなのだからこの街の住人、ひいては観光事業を受け持っている人が考えることだろう。
フィアレイエでのんびりとした時間を過ごした後、必要なものを買ったり旅の準備をして街を出発する。すでに当初の目的であるアーシェの師匠を追う感じではなくなっているがしかたがないだろう。いつの間にか目的が変わっている気もする。
「うわー……すごーい!」
次の街へと続く道の先には黄金の原が姿を見せる。これが全部穀物ならばいいのだが、この黄金の原はそういうものではない。使い道のない背の高い雑草の群れである。火に強く切りにくく、刈っても刈っても数日で半分程まで生えなおすくらいに生命力の高い草。そのくせ必要とする栄養素が少なくて生えてくるうえに他の生物が食べる分には有用的だ。
「あまり近づくなよ。背の高い草だから魔物がいても見えないからな」
「えっ!」
この街道もなんとかして草を生えない不毛な状態にしてようやく維持されている状態らしい。もしかしたら錬金術か何かでそういう風にできるのだろうか。どうせならば全域にそうすればいいのではとも思うが、完全に不毛な大地にしてしまうとそれはそれで問題が出るのだろう。魔物も食べられる草木ではあるが、当然他の草食生物もこの草を食べられる。であれば利用しない価値はない。なにせ刈っても刈っても生えてくるのだから。
なのでこの草を目当てに来る冒険者もいる。得られた草は牛や羊などの草食動物の餌として使われるようだ。放牧できるのが一番だが魔物がいるのではどうしようもない。まあ人によっては無理やり囲いを作るなどして魔物の侵入できない場所を作りそこで放牧するらしいが、生えなおすのも早いのでなかなか難しいだろう。
「こ、怖い……」
「魔物の気配がわかるからあまり気にしなくてもいいぞ」
「そうなんだ……」
「まあ、わかるが近づくのはやめておけ。近すぎると守れない場合もあるからな」
それに気配の読めない魔物がいる可能性もある。絶対の安全は保障できないからな。
「とりあえずこの黄金の原を早く抜けるぞ。見通しも悪いから野営も難しいし休む場所も碌にないからな」
「街道の上で休むのは流石にだめだもんね……馬車とか通ったら轢かれちゃうもんね」
そのまま早足で道を進む。途中魔物の気配が近づいてきたりするがある程度の距離までは来るがそれ以上は寄ってこなかった。こちらが警戒していることに気づいたからだろうか。魔物も匂いや気配、雰囲気かなにかでこちらのことを察知しているのだろう。この背の高い草のせいでろくに相手のことが見えないのは向こうも同じだろうし。
近づいて来ないのはありがたいのでうまく魔物を牽制しつつ、安全に黄金の原を越える。境目というか、この草原の途切れる場所がある。川だ。橋もかかっていて結構な広さのある川である。川は散々フィアレイエで見たので今更なところはある。橋も別に観光地にできそうな橋というわけでもなくただの川の渡しだ。その橋を渡り、川向こうに進み、そのまま街道を進む。途中いくらか野営しつつ適度に魔物や獣に襲われながらも旅は順調に推移し、次の街……クルフェレアにたどり着いた。




