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「それで、結局どうするんだ?」
「あ……えっと、師匠がどこに行ったのかわからないから何か情報がないかって探しに来たんだった! えっと……ミツヤスさんは待っててください! ちょっと師匠がここに行きましたーって書いてないか、そんな感じの書置きとかどこに行くかって資料残してないか調べてきます!」
「ああ、うん、わかった。頑張って来いよ」
「はい!」
そう言ってアーシェは師匠の残した何かとかを探しに行った。客人を置いていくのは失礼だな、と思うが別に客という立場でもないし、暇つぶしに彼女が気のすむまで調べて調べ終わるまで待つことにする。周囲においてあるものを確認すれば錬金術に関しても多少はわかるかもしれないし面白いものがあるかもしれない。まあアーシェの師匠の情報探しは恐らく……実らないだろう。弟子のことは師匠は意外とわかっているもので意外と何をするかを見抜いているものだ。実際にそういうことがあったからなあ。
案の定。暫く退屈しのぎで周囲にある物をどんなものだろうと思いながら見ていたら半泣きになったアーシェが戻ってきた。
「うええん……師匠がどこに行ったかわかりませーん……」
「まあ、そうだろうな。そもそもどこに行ったか残すくらいなら伝えていると思うぞ」
「そう思うなら最初に言ってください……」
「うちの師匠がそういう感じだからと言ってアーシェの師匠が同じ感じなのかどうかはわからないからな。調べて無駄になるかもわからないし」
「師匠……? ミツヤスさんも何か学んでるんですか?」
「ああ。剣士だよ、見た目通り。というかアーシェも襲われている所に技を使ったと思うんだが」
「へー、剣士さんなんですね。えっと、襲われている時はちょっと怖くて周りの事なんて見えなくて……」
「そうか」
まあ、別に自分の剣の腕を自慢したいわけでもないし構わないと言えば構わない。しかし、ここで話が切れて妙な沈黙が周囲に満ちる。なんとなく気まずい雰囲気。アーシェがそわそわとしてきょろきょろと視線を動かしている。この雰囲気は確かに妙な感じで嫌だから振り払いたいのはわかるが、何を放せばいいかわからないのだろう。こっちもアーシェのようにそわそわと動かない物の、確かに嫌な雰囲気でどうしようか迷う。
「えっと、ミツヤスさんの師匠さんはどうしたんですか!?」
意を決したようにアーシェが口を開き出てきたのはこちらの師匠に関しての事。まあ彼女の師匠のように急に出て行ったと言うわけでもないし話しづらいことも特にない。
「今日海の向こうの国に向かった。何か友人か知り合いかその手の人物から連絡があって急遽いかなきゃいけなくなったらしい」
「へー……そうなんですか」
また先ほどのように会話が止まる。なんというか、お互い会話慣れしていない。
「本来の話に戻そう。旅に出るんだよな?」
「あ、はい! そうです! 師匠を探さないと……何をすればいいかもわかんないし……だから探しに行こうかなって」
「でも今日みたいに魔物に襲われるかもしれなしい、場合によっては奴隷商人にさらわれたり盗賊にさらわれたり、川に落ちたり崖から落ちたり何か変な危険な出来事に巻き込まれるかもしれない。一人で旅をするとかなり危険なことになりかねないぞ」
「わかってます……だから、ミツヤスさん、私が旅をするの手伝ってくれませんか!? お願いします!」
結局そういう話に戻るわけか。まあ、そうなるな。
「だけど俺がアーシェの旅を手助けする理由もないだろ。今日アーシェを助けたのも、たまたま魔狼に襲われているアーシェを見かけたからだ」
「そんな……お願いします! 私だけじゃ、私だけじゃ旅なんて無理です……お願いします、何でもしますから!」
ぐらり、と心動かされる言葉だ。まあ本気で何でもするというわけじゃないだろう。仮に本当に何でもするからって言われても困る。
「……多分ここに来る前にも行ったと思うが、いうことをきちんと聞く、あまり勝手な行動はしないこと、危険に近寄らないことを守ってもらう。俺もあまり旅に慣れているとは言わないからアーシェを絶対守れるとは言えない。だから近くにいること。それさえ守れるならまあ、頼みを聞いてもいい」
「……それだけでいいんですか? こう、お前を守るんだからお金を全部よこせーとか、俺の言うことは絶対だーとかそういうのはないんですか?」
「ない。どんな横暴な奴だよそれ」
「でも、でも……それじゃあミツヤスさんは何も得がないんじゃ……」
確かにこちらの得になるようなことはないと言っていい。
「もともと旅をするつもりではあったんだ。だからそのついでのようなものだよ」
「え? じゃ、じゃあ最初から手伝ってくれてもよかったんじゃ……」
「無条件で手伝うわけないだろう、普通」
人に言われて言われたまま行動してもいいように使われるだけだ。イニシアチブはきちんと確保しておかないといけないだろう。
「……でも、手伝ってくれるんですよね?」
「ああ」
「じゃあいいです。その……これからよろしくお願いします!」
「よろしく頼む」
正式に一緒に旅をすることが決まり、あらためてお互いに挨拶をする。
「それじゃあ行くか?」
「はい!」
アーシェを伴い外に出ると、もう外は日がかなり落ちた時間になっていた。夕暮れが近い。
「………………」
「………………」
「明日にするか」
「はい」
旅の出発。その最初の出足でいきなり蹴躓いた感じである。
「はあ……なんかやる気が減るなあ」
旅に出るつもりではあったが、色々あって結局旅に出ることはなく、今日は人の家で休むこととなった。まあ言ってきたのはアーシェの方だが。今日は色々迷惑かけたし部屋も空いているし師匠もいないんので泊まっていってほしい、ということのようだ。まあ宿をとるにもお金がかかるし、そのお金を得るのがギルドに狼の牙を持っていくことだったが時間も遅いし。
食事は流石に食料がおいてないと言うことで……まあ置いていたら旅に出てたわけだから腐ってやばいことになっただろう。毎日買って毎日調理してみたいな感じだったようだから流石に夕飯は外でとった。お金は向こう持ちだ。まあ、一年生きられる分のお金が手持ちにあるらしいしそれくらい問題ないと言うことらしい。それを言っていいのかとも思ったが、それだけこっちを信頼しているのかもしれない……いや、そこまで考えてないだけだよな。あの感じは。
「あれ大丈夫なんだろうか……将来が心配……いや、もう大人と言ってもいいくらいかこっちなら? かなり心配になるな」
アーシェのことを考える。今日初めて出会った同じくらいの年齢の女の子。あんな状態でボロボロにされていて、これから先旅して大丈夫なのかと思うくらい散々な目に遭っている。なんというか、今日接してみた感じかなり能天気というか……まあ今日接しただけだからまだ断言できるわけではないが、わかる限りではかなり能天気な風に見えた。今日あった人間に何でもするからついてきてほしいなんて頼むのはどうなのだろう。いつか悪い男に騙されたりしないだろうか。それを俺が心配するのも的外れというか見当違いというか、そんな感じではあるのだが。
そんなふうに部屋で休みながら黙々と今日あったことを考える。今は夜、寝る前でベッドの上だ。後は寝るだけでのんびりしていると、こんこんとノックの音がする。誰だと訊ねようと思い、そもそもこの家には他に誰がいるかは明白である。
「アーシェ? 何か用事か?」
「えっと……その……ミ、ミツヤスさん入っていい!?」
「ああ……いいけど」
そう返事をするとアーシェが扉を開けておずおずと入ってきた。薄着で。
「アーシェ?」
「えっと、ミツヤスさん、だいてください!」
「………………意味わかってる?」
「え? いえ、わかんないですけど……なんか、お母さんが男相手にはこうすればいいって……」
どんな教育しているんだ母親。というか貴族だろ、貴族なんだろ?
「そんなわけないだろ」
「ええー!? おかーさんの嘘つき―!!」
まあ嘘とは言えないだろうな。相手によるだろうけど。相手によってはいいようにできるし、場合によっては激怒されそうだが。
「で、用事はそれだけか?」
「えっと……その……一緒に寝てください!」
「………………それはどういう意味で?」
「どういう意味……って、そのままだけど……」
深い意味はないのか。まあさっきの意味も理解していないのに一緒に寝るの意味合いが意味深なわけもないか。
「別に一人で寝れるんじゃないか?」
「そ、そうなんだけど…………今日、怖いことがあったから……その……」
子供か。いや、まあ……死にかければそうもなるか。自分の時はどうだったか。
「そういうことなら別に構わない」
「やった!」
「でも服はきちんと着てくるように。寝巻でもいいから」
「え? なんで?」
「なんででも!」
「はい! 着替えてきます!!」
そう言ってアーシェは部屋を出て行った。流石に薄着で側にいられると理性が持つかはわからない……そういえばその手の経験はないんだよな。ずっと剣の修行ばかりしていたせいか、性欲の類もかなり薄いみたいだしどんな感じかわからないが。
その後、きちんと寝巻に着替えてきたアーシェが部屋を訪れ一緒のベッドで眠ることになった、狭いから詰めてかなり密着した状態でこちらとしてもいろいろ気が気でない感じだが、なんとか眠りにつく努力はする。疲れて気づいたら眠ると言うこともできないから結構精神的につらい所はあったものの…………ちゃんと眠りにつくことはできた。




