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妄想設定作品集二  作者: 蒼和考雪
alchemist
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4

 冒険者ギルドでの登録はあっさりとしたものだった。名前などの書くものはそこそこあったが問題なく記入できた。文字もこの世界に来て奴隷商人の下で、師匠の下できちんと教えられたので問題なく書ける。冒険者証の作り方はかなり不思議な光景だったが今まで散々不思議な出来事には縁が多かったのでそこまで気にするようなものでもない。魔法の存在も知っていたし、そういうこともできるのかと思うだけだ。

 冒険者証を作ったのはいいのだが、問題は依頼を受けることだ。何の依頼を受けるのか、別に何でもいいのかもしれないが自分のできることをするのであればやはり討伐系の依頼だろう。よくある冒険者物では依頼を掲示板に貼り付けるような形式をとっているが、この場所でも似たようなものだ。ただ、一部のものは貼り付け形式ではなく、貼り付けた依頼の用紙に袋のようなものがあってその中に木板が入っているような形式だった。他の依頼と比べるとそれは常設依頼、常時依頼のようなもので誰でもいつでも受けられるようなものであるらしい。主に基本的な採取や討伐のようだ。

 また、依頼は受領条件が色分けされている。依頼を見た限りでは討伐依頼での比較になるが、難易度が高いほど色の種類が減り、難易度が低いほど色の種類が多い。冒険者証の色、それを確認する限りではほぼ最低レベルの難易度の討伐系にしか自分の冒険者証の色はない。上の方が色が少ないことを考えると、受けられる難易度を色分けしているということだ。わかりやすいと言えばわかりやすいのだろうか。

 とりあえず討伐系の常設依頼を受けようと思っていると、入り口の方から声がする。


「失礼しまーす」


 冒険者ギルドには珍しい可愛らしい女の子の声。冒険者に女性がいないというわけではないが仕事内容を考えれば戦闘能力の高い腹筋が割れて良そうな女性だったり厳つくごつい肉体の女性だったりが冒険者の女性の主なイメージ。まあ魔法使いみたいなのがいないわけでもなさそうだが、今のところそういった存在の確認はしていない。

 声の方を見るとやはり声の通り可愛らしい女の子だ。ただ普通では見ないような服装の女の子だったが。服装だけでなく性格も普通ではなさそうだ。この視線の中、とくに委縮した様子もなく受付の方へと行っていた。度胸がある。依頼か何かだろうか。何であれ自分には関係ない。薄っすらと声が聞こえてくる。あの妙な剣技を習った結果、多少身体能力も上がっており気配や音、空気の動きや物の動き、足音やその接地の振動など、多種多様な感覚の感度が上昇している。女の子の声も聞こえてくる。どうやら冒険者登録するつもりであるらしい。

 珍しい、とは思うもののそこまで変ということもないだろう。彼女が魔法使いである可能性も大いにあるわけだしあの見た目で実力があるという可能性もある。まあ武器を持っているようには見えないのは変な話だが。まあ、冒険者というものは自由なものだろう。

 そんなことを考えるとその女の子はすでに出て行った。依頼を受けるでもなく、ただ冒険者登録をしただけで。一体何の目的だったのか。ただ登録したいだけだったのか。謎は尽きない……が、別段追究するようなことでもないだろう。何かあっても基本的に彼女の自由、彼女の責任、彼女の問題だ。俺は俺らしく生きればいい。ひとまず何か依頼を受けよう。


「……これでいいか」


 今受けられる依頼は少ない。討伐依頼でも最低難度の常設依頼くらいしかまともに受けられるのはない。なのでそのうち数を狩りやすく冒険者としてのランク上げができるような依頼を受けさせてもらう。常設依頼の木板を提出し依頼を受ける。依頼の受領条件と同じように木板も色分けされていた。恐らくその色分けで常設依頼の管理をしているのだろう。あの色分けに限度はないのか、とも思ったが探していたところ常設依頼自体は低難易度がほとんどで上の方の常設依頼というものは基本的に無いようだ。まあ、例えばドラゴン退治が常設依頼にあっても困るだろうしある意味それもそうかと思う。常設にするほど魔物の数が出ないし必要とすることがないのだろう。

 ひとまず森の魔狼やスライム……スライムと言ってもどちらかというとゼリーやプリンといった方が良い存在、それらの狩りを受ける。まあ普通のスライムでも倒せないことはない。実体の有無に限らずあらゆる魔物を斬ることができる剣技を習っている。本当にこの剣技は剣技と言っていいのかわからないくらいのチートだ。まあ自分が使えるならどれだけチートでもいい。

 依頼を受け、街の外へと向かう。こういった依頼は基本的にこの場所の近辺でできることが主だ。特に下の方の依頼はその手のものだろう。確か近くに森があったはずだ。街道からはそこそこ外れているが街道沿いで一番近い所から森に入るか。


「……ん?」


 何か音……いや、声だろうか。それが聞こえたような気がした。悲鳴のようなものだ。かといってどちらから聴こえたかというのはわかるが距離やそのほかのものは不明である。助けに行こうにもどうしようもないものかもしれないし、救う必要性もないと思う。

 そう思って街の入り口に向かうと入出管理をしている兵士がそわそわとしている。何かあったのだろうか。まあ何でもいい。気にするようなことでもないだろうし、冒険者証を見せて外に出ようとする。そうすると兵士の人の表情が変わる。さっきもいろいろと悩んでいるような感じだったが、さらに……なんだろう。痛いところを突かれたような、そんな感じだろうか。まあ何でもいい。冒険者証を見せて外に出してもらう。こちらに声をかけようとしているような気配はあるものの、別段聞くつもりはない。頼むならさっさと頼めばまだ動くかもしれないが、迷うってことは安易に頼れるようなものでもないってことだろう。

 街道を歩く。別段珍しくもない光景だが……普段とは違うものが一つ。女の子の声だ。しかも悲鳴。さらに言えばこれはさっき冒険者ギルドで聞いた声だ。結構近い……というよりは行く先から声がする。


「これか? まあ、放置するのも流石にひどいか」


 先ほどから聞こえた悲鳴や兵士のそわそわとした態度。先ほどの女の子が街の外に出た、それもあのままで出たというのなら色々とわかる感じだ。まああの見た目で戦えるか怪しいし魔法使いにしても……っと、見えた。玉のようになっている、というほどでもないが囲まれて襲われている。魔狼の類、指定された討伐対象のものだろうか。魔物としては一番に弱いと言っても狼は狼、あれだけの群れに襲われれば死んでてもおかしくはない。まだ声は聞こえるから死んではいないが、よく無事でいられるものだ。


「神儀一刀」


 剣を抜き、力を籠める。剣に力が渦巻き、剣に沿った風の層ができる。


「閃剣」


 横一文字に振るう。その剣の軌跡がそのまま斬撃となり、剣に沿った力が一直線に真っ直ぐ空を飛んでいく。その行先は狼たち、それも全ての狼を真横に切り裂く一撃である。防具もない狼であれば攻撃を防ぐのはまず不可能。攻撃が狼たちを切断する。


「勘の鋭い」


 狼の一部は仲間が斬られたことに気づき飛び退るなり飛び上がるなり伏せるなりで回避したようだ。最もそれで生き残ったのは二匹ほど。攻撃をしたこちらに唸ってはいるもののそれだけだ。まあ数の有利もない。二体一でも一瞬であれだけの数を切り捨てる相手と戦いたいとは思わないだろう。恐らくリーダーは先ほどの一撃で死んでおりあの二匹だけで判断するしかないが、一緒に襲うにしても相手が悪いはず。まともに考える頭を持っているのであれば襲ってくることはないだろうけど、相手は魔物……油断はできないし、どう判断するかもわからない。

 狼二匹と暫くにらみ合うものの…………狼二匹は大人しく逃げて行ったようだ。流石に二匹で相手をするには分が悪いと思ったのだろう。逃げるようであれば討伐対象だとしても追うつもりはない。いつでも相手できるしすでに常設依頼をこなすだけの数は狩っている。討伐証明は……二対の牙だったか? 魔物の素材としては毛皮と牙、そのうちの上下の特定の牙が四本だったか。そういった証明素材は依頼に書いてあるからありがたい。真横に切断したから皮はとりづらいから牙だけでいいだろう。切れていないといいんだが。


「っと……おい、大丈夫か?」


 狼の牙の回収をしながら女の子に声をかける。一応服はある程度ぼろぼろになっているものの、死んではいないようだ。ひっくひっくと泣いている。まああの数に襲われれば怖いし痛いしぼろぼろにされてかなり不安だろう。あんな経験も普通はないだろうし。

 そう思いながら声をかけた後も牙の回収を行う。そうしていると女の子が立ちあがる。どうやら無事なようだ……と思っていると。


「うええええええええええん!!」

「うおぅ!?」


 唐突に抱き着かれる。狼の唾液か何かでちょっと湿っぽい、ちょっと何とかしてほしいんだが!


「おい!」

「だずげでぐれでありがどうございまずー!!!!!!」


 泣きながら感謝を言われる。それはまあいいんだが!


「とりあえず落ち着け! 抱き着いてないで落ち着け! ちょっと湿っぽいから離れてくれないか!?」

「うえええええええええええええええええええええん!!!」


 駄目だ、聞いてくれない。泣き止むまで待つしかないのか…………このまま。

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