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ハロウィン  作者: 湖南久留未
3/3

第3話


 僕の考察は外れてしまったが、そんなこと気にする必要はない。もしかしたら、ご主人様が自覚していないだけで、どこかで退屈を感じている可能性がある。その退屈を、何か趣味でも見つけさえすればいい。


「せっかくインターネットも導入しましたし、ブログをしてみたりですとかどうでしょう?世界中の方に見てもらえば、反応もあって楽しいと思いますよ」


「変化がなさ過ぎて、あまり書くことが思い至らないんだが……」



 そうだった。ご主人様は、一日中場内を散歩したり、食事をしたり、本を読んだりくらいしかしてらっしゃらないんだった。

 ブログに書ける内容といえば、せいぜい庭の花が咲いただとか、今日の食事の内容、読んだ本の感想程度だ。これでは、せいぜい小学生の夏の読書感想文に引用されるとか、世のお母さま方の夕食の献立替わりくらいしか、閲覧者を想像できない。


「そうか、書くことがないなら、旅に出よう。サーチェ、私と一緒に世界一周旅行へ行こう。ブログに書くネタを集める旅だ」



 突然何を言い出すんですか。



 ご主人様からの思いがけない発言で、僕の口はまるで魚のように開いたり閉じたりを繰り返している。たしかに、書くことがないならば、ネタ集めは必要でしょう。ですが、その旅にかかるお金はどうするんですか?旅の間のお城の維持は?考えれば考えるほど、疑問がわいてでてくる。

 まぁ、ご主人様のことですから、何とかしてしまうんでしょうけども。一応、質問しておこう。


「わ、かりました。ただ、お金やお城の維持などはどうされるんですか?」


「金なら私がいくらでも生み出せる。城は他の下僕たちに管理させればいい。彼らは口頭での会話はできないが、それ以外は問題ない。畑もあるし、食事は自給自足できる。心配ならば連絡を取りあえばいいだろう。城にはパソコンを導入したんだ、私たちがスマホなりタブレットなりを持てば、メールもできるしな。サーチェは何も心配しなくていい。ただ、私には生活力やコミュニケーション能力はない。サーチェにはそれをフォローしてほしいんだ」



 あぁ、ご主人様の目が輝いている。



 というか、いつの間にそんな知識を仕入れたんですか。インターネットですか?余計な知識ばかり仕入れてしまったのかと心配になりましたが、こんな知識も手に入れていらっしゃったんですね。ご主人様の生き生きとした目と顔を見れば、生を実感できないと悩んでいた先ほどまでの姿がウソのようだ。

 これで、ご主人様がニンニクを欲しがることはしばらくなさそうだ。


「わかりました、ご主人様。このサーチェ、お供させていただきます。その代わりと言ってはなんですが、ニンニクは禁止でよろしいですか?」


「仕方ない。しばらくは我慢するかな。旅の途中で倒れたままというのはサーチェも困るだろう」


 外の食事には、城の中と違いニンニクを使っていることもある。ご主人様は重度のニンニクアレルギーということにして、食事の際は気を付けるようにしないと。


 あぁ、そういえば重要なことを忘れていた。


「後、外でご主人様と呼ぶのは現代では合わないので、差し支えなければ、その、ご主人様のお名前をお教えいただけますか?」


「ん?私の名前か?ないぞ。必要がなかったのでな。そうだな、確かにこのご時世、ご主人様などと呼ばせていては無駄に目立ってしまうか……よし、サーチェ、私に名前を付けてくれないか?」



 そんな責任重大なこと、私がするんですか?本気ですか?というか、私のようなただの下僕にそんな恐れ多いこと、できるわけがないじゃないですか!



 今日のご主人様には驚かされてばかりです。ご主人様に似合う、気品があって、誰もが跪きたくなるような、そんな素敵な名前を私なんかが思い浮かぶには数千年は要してしまう。いや、数千年あっても思い浮かぶ気がしない。

 今まで培った言葉が脳内で回っているが、一向に思考がまとまる気配などない。どうすればいいのかすらわからない。あぁ、自分はなんて馬鹿な質問をしてしまったんだろう。あの質問をした口を縫い縛ってしまいたい。


 しかし、ご主人様のご要望だ。

 ニンニクを食べたいなどという無茶な要望ではない。


 僕も、ご主人様に名前をもらったとき、どれほど嬉しかったことか。ご主人様は、いまだにこの喜びを体感していないのかと思うと、なんとしてもご主人様に似合うお名前を考えなくては。考えなくてはならないと思うのに、なにも思い浮かばない。あぁ、僕はなんてダメな下僕なんだろう。

 というか、たかが下僕のくせに、本当にご主人様の名前を付けようと考えている時点で、やはり間違っているんじゃないのだろうか。


「ご主人様、申し訳ありません。なにも思い浮かばないのですが」


「なら、ゆっくりで構わない。サーチェがもらってきてくれたハロウィンのお菓子でティータイムをしつつ、みんなで考えようではないか」


 そう言って、柔らかな笑顔のご主人様を見て、みんなで考えるならきっといい名前が思い浮かぶだろうと、僕は少しだけ安堵した。お城の下僕全員分のお茶の用意となると、少し大変だと思いつつも、全員でのお茶の準備をするために、僕はキッチンへと向かった。

 この後、下僕全員の頭から煙が出そうなほど悩むとは、この時の僕はまだ想像もしていない。




Fin.


いかがだったでしょうか?

ほんわかくすっとなっていただければ、大成功です(`・ω・´)フハハハ

初めての投稿で四苦八苦してしまいました。

誤字脱字など御座いましたら、ご一報いただければ幸いです。




以下裏話。


サーチェちゃん、名付けた割には作者が1番言えずにかんだのは秘密です。ホントは、サイシェだったんです……。

3回に1回くらいしかちゃんと言えず、泣く泣く改名しましたよ。゜(゜´Д`゜)゜。

名前は、スマホのフリックで、ブラインドタッチで出来た言葉からの抜粋です。作者のセンスは皆無なので orz

まぁ、せっかく名付けても呼べなくて、かんだままの名前になっちゃったんですけどね。ごめんね!!

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