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エクソシストは死神の夢を見るかforZERO  作者: サトウイツキ
2人の願い
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6-10 さくらんぼ

『絶対に離さない!』


僕とジェシカの気持ちがひとつになった気がした。


かぐやとモンファさんは離れた位置で僕たちを見ている。


「主の名の下に、我、汝を祓わん」


「悪魔、地獄からの侵略者、力を欲しすべてを統べんとせん者、汝が誰であろうとも、我等は汝を追い出さん」


僕とジェシカの詠唱に呼応するように、剣と麻縄で作られた魔法円が鈍い光を放つ。


「ggggggrrrrrrrraaaaayaaaaaa!!!!」


これから起こることを察知してか、悪魔は断末魔の叫びをあげる。

しかし僕たちは詠唱を続ける。


「汝はもはや我等を欺くことはできない」


「主は神の言葉を肉にして、汝に命ずる」


魔法円の光が更に強くなる。


「真の神、聖なる神、全ての神によって」


「永遠の懲罰を与えん」


魔法円を中心として円柱状の光の柱が悪魔を包む。

悪魔の声が聞こえなくなり、光によって、その姿さえも見ることができなくなる。


「去れ、去れ、我等から出て行け」


ジェシカは手を繋いでいない方の手で拳銃を生成すると、その銃口を光の柱に向けた。


僕とジェシカは向かい合い、ひとつの銃を握った。

もう一方の手は握ったままだ。


ジェシカは、少し笑っているようだった。

もしかしたら僕も笑っていたのかもしれない。


詠唱する度、光は強さを増し、やがて周囲の壁や天井を吹き飛ばす程の突風が吹き荒れる。ドーム型の天井は剥がれ、頑丈そうだった外壁さえも砕いて吹き飛ばしてしまった。

辺りが少し明るくなり、灰色の空が見て取れるようになる


「うちらは先に離脱しとるからな!」


降下してきたヘリコプターに乗ったモンファさんがこちらに向かって叫んでいる。

不安定な姿勢のヘリコプターは光の柱から遠ざけられ、灰色の空に消えていった。


僕たちは光の柱を見つめたまま、銃の引き金にゆっくりと指をかける。

吹き荒れる突風が僕たちにかかることは無く、まるで僕たちをこの場所に置き去りして、試しているかのようだった。


でも僕たちはひとりじゃない。


隣にいるだけで、助け合える。そんな仲間がいる。


「悠輝、光が消えてリュネットが出てきたら、うまくキャッチしてください」


僕は声なく頷く。


「じゃあ、いきますよ」


不安とか、緊張とか、そんなものはどこかに行ってしまっていて、ただ、リュネットを救い出す、それだけを考えていた。さっきからの笑顔を見る限り、ジェシカもそうだろう。


「リュネット!君を救い出す!帰ってこおおおぉぉい!!」


僕たちはありったけの力で引き金を引いた。


銃口から閃光が放たれ、その反動か、僕たちの周りを更に強い風が吹き荒れる。


光の柱が一層輝きを増し、痛いほどの閃光が辺りを包む。


反射的に目を瞑りそうになるが、それをこらえて光を見つめていると、魔法円の中心に向かってゆっくりと光が収束していく。


やがて光が完全に消えると、宙に浮く金髪の少女が現れた。

少女は仰向きで浮いていて、緩くウェーブのかかった金髪がふわふわと揺れている。

その横顔は、リュネットの顔だった。


ジェシカの指を解いて握っていた手を離し、リュネットの方に走り出す。


少し名残惜しい感じがしたが、ジェシカとの約束だから仕方ない。


僕がちょうどリュネットの下に行ったタイミングで、リュネットを吊っていた糸が切れるようにリュネットが落ちてきた。


リュネットの身長は僕より少し小さいくらいだったが、予想よりだいぶ軽かった。お姫様抱っこの形でリュネットを抱き留めた後、何も着ていなかったので僕の制服の上着を着せた。リュネットに意識はない。


その状態でジェシカの方を振り返ると、ジェシカは倒れていた。


駆け寄るが、どうやら息がない。つまり、心臓が停止している。ということだ。


僕と繋がったことでキャパシティを超えた魔力を消費してしまったのだろう。魔力は生命を維持するのにも無意識的に消費してしまっている。魔力が完全になくなるということは、それは死を意味する。

ジェシカにはそれがわかっていた?わかっていたからリュネットの事を僕に頼んだのか?


でもジェシカはまだ死んでいない。死ぬはずがない。


よぎった選択肢、僕に迷いなんてない。


魔力が無いなら、足せばいい。


ジェシカが最初に魔力欠乏症になったとき、会話できるようになるまで一週間ほど病院にいたはずだ。それなのに、ルシファーに会った後も、ついさっき魔力欠乏症の症状がでたときも、僕が近くにいただけでそれが回復したように思う。


リュネットを近くの床に寝かせると、ジェシカの手を握った。


少し卑怯かもしれないが、おそらくこれが一番効率のいい方法だ。


整った顔立ちに、新雪のような白い髪。

もう成長しない体、宝石のような紅い瞳。


僕はゆっくりと顔を近づけ、その小さな唇に、


口づけを落とした。

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