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エクソシストは死神の夢を見るかforZERO  作者: サトウイツキ
2人の願い
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6-7-A 僕の向かう場所

それから2週間あまりの時間が経った。


僕の待つ連絡は一向に来る気配がなく、なんとなくそわそわしながら毎日を送っていた。


しかしそわそわしているのは僕だけではない。学校全体が浮き足立っている。

なぜならば、我が校の文化祭が、明後日に迫っているからだ。


我が校は、私立高校であるためか、なんと2日間の準備日に加え、金、土、日と3日間の予定で行われるのだ。


午前中の通常授業を終えた瞬間、春を待っていた花が一斉に開花するように学校中が活気で溢れる。我がクラスの《シェークスピアカフェ》をはじめとするクラス展示、バンド、劇、果てにはマジックショーなどの部活動展示。部活動を精力的に行っている我が校では、この部活動展示が毎年とても人気があり、最終日の後夜祭には最も人気のあった展示を行ったクラスが表彰される。


そしてこの賞は、非常に栄誉ある賞であるため、各々が、毎年趣向を凝らした展示を行っている。


しかし僕はそれどころではない。


大規模侵攻作戦が近々行われることはわかっている。


ヨキさんに「大規模侵攻作戦の詳細を教えて欲しい」といった主旨のメールを送ったところ、「詳細が決定し次第、送ります」と返ってきた。ここまではいいとして、それ以降の進展が一切ないのだ。


侵攻作戦の遂行が決定されてから1ヶ月は経つ。

本来であればもっと作戦を練るのかもしれないが、今回の場合、日本支部襲撃事件の反撃のような形で行われる作戦なわけだから、時間があいてしまっては、意味がないはずだ。


手作りの衣装を身にまとい、続々と集結するクラスメートたちをよそに、携帯片手に行ったり来たり。僕だけを見れば、文学賞の受賞を待つ作家か、位置情報でモンスターを捕まえるゲームを遊んでいる若者に見えるだろう。


しかし、劇場の袖のようになったこの場所では、イベントに対して非協力的な生徒に見えるだろう。


そんな僕を心配してか、中村さんが声をかけてきた。


「佐滋君、どこか行くの?」


なんて核心をついた質問をしてくる人なんだ。

僕が言い訳を考えているうちに、携帯に着信があった。


『今出発しました』


これだけ。

差出人はヨキさん。


今出発しました。ってこれから作戦が開始されるのだろうか。


まさかヨキさん、忘れてた?


ヨキさんに限ってそんな事……まぁともかく、始まったと言うのなら行く他ないだろう。


「えーっとほら、ジェシカ、最近風邪で寝込んでるでしょ?でも今連絡あって、行けそうだっていうから、迎えに行こうかと思って」


「ジェシカさん……」


怪訝な表情を浮かべる中村さん。やっぱり疑われただろうか。

多少疑われてしまったとしても、行くしかない。


僕は廊下に駆け出そうとするが、腕をぐっと掴まれてしまった。そんなに?


「……佐滋君、怪我、しない?」


「怪我は、しないと思うな」


嘘だ。なんてったってこれから悪魔と戦おうって言うのだから。


「佐滋君、クラスで一番料理うまいんだからね!」


「う、うん?」


「だから、怪我して文化祭これないとか、やめてよね!?」


やけに感情的になる中村さん。


「ごめん。でも僕、行かなくちゃ。ジェシカと約束してるから」


思えば、この時から僕は気づいていたのかもしれない。中村さんの記憶が改ざんされてなどいないということに。


「……わかった」


中村さんの腕から力が抜けるのがわかった。


「でも約束して。ちゃんと、五体満足で!無傷で!文化祭に参加すること!わかった?」


確信した。中村さんは知っている。僕がこれからやろうとしていることを。中村さんの力だけでは知る由もないから、誰かが教えたのだ。まあ可能性はひとつしかない。カズだろう。


「無傷はちょっと難しいかもしれない」


「絆創膏……絆創膏2枚までならいいよ」


中村さんは少しだけ笑顔になっていた。


「じゃあ、行ってくる」


「……行ってらっしゃい!」


僕は中村さんとの約束を胸に、廊下を走り出した。

他のクラスがクラス展示に使うであろう機材を踏まないように廊下を抜け、階段を降りたところの倉庫までやってきた。ここなら人の目がないから、扉渡りを使っても問題ないだろう。


扉渡りは原則として、脳内で作ったイメージの場所に出口の扉を作る。


無論ペルガモンなんて行ったことがないので、ネットで調べたペルガモンの画像を頼りに丁寧に扉をかたどっていく。


完成したのは神殿のような扉で、玉座に座った悪魔が彫刻されている。


ペルガモンというのは、聖書においてサタンのいる場所らしい。


僕はその扉をゆっくりと開き、その向こうへと踏み出した。

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