6-5-B リュネットを助けたら
帰りの車での私は、思わぬティータイムに若干テンションのあがっている小次郎をよそに、考え事をしていました。
前庭を抜けた先は常緑樹の林が広がっていて、木々を縫うように車一台分ほどの道が作られています。あまり舗装されていないでこぼことした道ですが、それによる車の揺れなど、気にならないくらいに私は思いを巡らせていました。
神について。
神は恐らく、万能ではないのでしょう。
例えば、未来を見ることはできないのかもしれません。
一茂さんはあの時、明らかに話の途中でした。正直、小次郎さえ来なければ、もっと詳しい話を聞けたと思います。
それから、個人の思考や感情を操作する事もできないと思います。
もしできるのであれば、小次郎の記憶からすべて操作して、話を続けることができたはずです。
もしくは、できてもやらないのか。
だってそれでは『面白くないから』
神が私の前に姿を現すことはもうないでしょう。
神は、もうこちら側にいることができないのだと思います。
なぜなら、正体を明かしてしまったから。
今私と話したことにより帰らなくてはいけないというのは、少し早すぎるような気がします。神は今より何日か前に、別の人に正体を明かしたのでしょう。
相手は恐らく、悠輝。
悠輝は神と、何を話したのでしょうか。
もともとは一茂さんだったわけですから、きっとすごく驚いていたと思います。
でもきっと悠輝のことですから、すぐに冷静になって、考えて、結論を出せるのでしょう。
神は「側にいてやって欲しい」と言いました。
神は、私と悠輝がもう一度会えると思っているのでしょうか。
未来を予知してくれれば良かったのに。そうすれば、もう少し安心できるのですが。
いや、やっぱりいいです。
だってその方が、面白いから。
悠輝は、私と似た何かを背負っています。
その中で、悠輝は私の光になってくれた。
今度は私が悠輝の光になる番。
リュネットを助けたら、また会いに行きますから。
協会本部に戻った私は、もはや聞き慣れてしまった単語を、構成員たちが口にしているのを耳にします。
期待、好奇心、疑い。
様々な感情をもって語られるその言葉は、どれも違うように聞こえますが、その言葉の端々には必ず、《死神》という単語を聞き取る事ができるのでした。




