6-5-A 神たる証明
訳のわからないまま、僕は教室へと戻った。時間的にはホームルームの途中くらいだが、なんともなかったと言えば問題はないだろう。
しかし、僕の教室はまだ騒がしかった。ホームルームは基本、静かに行われるものなので、それが騒がしいということは、問題のあるクラスか、もしくは、まだホームルームが始まっていないということになる。
この場合、後者だった。
僕が席についたタイミングで、ホームルームの開始を知らせるチャイムが鳴った。
時計を確認する。時間は、8時20分。
沢園先生が教室に入ってきて、出席の確認を始める。
「えーっと、欠席者は、なし……っと」
そんなはずはない。
カズのいた席が空いているじゃないか。
しかし誰もそのことに気づく様子はない。まるで、最初からそこに誰もいなかったかのように。
◇◇◇
放課後、クラスメートにカズのことを訊ねるが、誰ひとりとしてその名を知る者はいなかった。
なぜ誰もカズのことを知らないんだ。新手のどっきりだろうか。
しかしその可能性は薄いだろう。文化祭の準備で忙しいこの時期に一体何をしようというのか。
ふと、カズの言葉を思い出す。
『俺は神だ』
それに、その後の言動、クラスの状態。
本当に神なのだろうか。
だとすれば、カズは何もかも知っていて、その事を僕に伝えた。しかし正体を明かしてしまったが為にこちらにいることができなくなり、クラスメートの記憶を改ざんして、姿を消した。
理屈は通る。
確かにカズとは小、中、高と今まで同じクラスだったし、言い方は悪いが、何かと都合のいい友人だった。
その時、また僕の頭に違和感が走った。
小、中、高と同じクラス?そんなはずはない。
だって僕は、中学生の時に転校しているのだから。
それなのに、カズは僕と同じクラスにいた。
その時は何の違和感も覚えなかった。ただの、友人だった。
そもそも、人と深く関わらないようにしてきた僕が、なぜカズと友人関係にあったのか。
これが、神たる証明なのだろうか。
もしそうだったとしても、そんな事をする意味がわからない。
神であることを明かしてまで伝えたかったこと、悪魔祓い協会の内部情勢、中村さんの記憶のこと。
なぜ僕に伝えたのか。
カズは確か、僕が面白いことをするとか言っていたはずだ。
……
その考えを思いついた途端、ふっと笑いがこぼれてしまった。誰も見ていなくて良かった。
カズ。君は僕を見て面白がっているんだね?
いや、僕だけではなく、この状況そのものを面白がっているのかもしれない。
だからあの夏祭りの夜、君はニヤニヤしていたんだね。
『こいつ、面白いことになってきたぞ』そう思っていたんだろう?
やっぱり君は、僕の数少ない友人のひとりだ。いつだって僕の側にいて、僕の背中を押してくれる。
どうしたらいいのか、よりも、どうしたいのか。
僕は何をこんなに悩んでいたのだろう。
僕はジェシカの力になりたい。
これ以上、大切な人を無くして悲しむ人を増やしたくない。
これさえも、ただの口実かもしれない。
でも僕は、リュネットを助けたい。そして、ジェシカを救いたい。
「くくく。これだから人は面白いのじゃ」
いつの間にかかぐやが出てきていた。
そういえばかぐやは九十九神だった事を思い出す。あの神のこと何か知らないか?
「ううむ。やつは神と名乗っているし、それに近い力を持っているのは確かだが、本質的には違う気がするのぉ」
そうか。まあ知らないなら仕方がない。
それよりも、確認しておきたいことがある。僕は携帯を取り出して、ある連絡先を選択した。




