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エクソシストは死神の夢を見るかforZERO  作者: サトウイツキ
2人の願い
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6-4-B 神と紅茶とショートケーキ

禁書庫は、本部庁舎から少し離れた一軒家の地下にあります。見た目は、豪華な別荘、といったところ。しかしその地下には、フランス国民全員が避難できる広さのの書庫があります。

本部庁舎から離れた位置にある理由の1つは、人目に触れるのをできるだけ防ぐため、もう1つは、いざという時にそのまま爆破して処分するため。都市伝説の類は後を絶ちません。


私は調べ物を終えると、外の空気を吸いたくなりました。


カモフラージュの別荘は、広い前庭の周りを背の高い常緑樹が囲っていて、さながら、まだ宮廷のあった時代にタイプスリップしたような感覚になります。


私は埃っぽい書庫を後にすると、メモを片手に地上への階段を探します。


次は右、次は左、と呟きながら、幾度となく曲がり、ようやく階段を発見しました。侵入者を弾き出すためのこの機能は、招かれた人にとっては時間の無駄でしかありません。

ちなみに、道を間違えると『とにかく痛い』らしいです。


書庫を出てからおよそ30分ほど経って、私は別荘から出ることができました。もはや脱出と言っても過言ではないかもしれません。


別荘を出てまず目に留まったのが、広い前庭に乗り付けられた黒いワンボックスカー。私たちがここに来るときに使用したものです。


そして次に目に留まったのは、車の裏から出てきた男性。


気配を感じたとき、できるだけ警戒するように心がけているのですが、その人に関しては、気配に気づくことすらできませんでした。その後の結果から言うと、それは到底無理な話だったのですが。


車の裏から出てきたのは、悠輝の数少ない友人の1人であり、私のクラスメート。鳴神一茂その人でした。


今日は平日ですし、日本からこの場所へは飛行機でもまる1日以上かかる距離です。そして、関係者意外知らないはずのこの場所のことを、なぜ知っているのか。


どう考えても不自然ですよね。


私は、今この瞬間、確信へと変わったある疑問を、そのままぶつけてみることにしました。


「あなたが《神》なんですか?」


「厳密には少し違う。でもまぁ、そう名乗ることにしている」


つまりは、私の調べた内容と同一人物であると考えていいようです。


「立ち話もなんだ。お茶にしようじゃないか」


私は一茂さんについて行く形で、まだ踏み入れたことすらない別荘の2階へと、上がっていきました。


◇◇◇


私が案内されたのは恐らく客室。誰が描いたのかわからない海の描かれた風景画や、鹿のハンティングトロフィー。洋風の客室は、リュフワ家の内装を思い出します。


テラスにはテーブルと、イスが2つ置かれていて、テーブルの上には、いつ誰が準備したのか、

ティーセットが準備されていました。


ケーキスタンドにはケーキやマカロンなどのお菓子が行儀よく並べられていて、ティーカップには熱い紅茶が注がれています。


テラスに流れ込むひんやりとした空気すら、ティータイムの雰囲気を作り出すために用意されているようでした。


「食べていいぞ」


一茂さんの言葉にはっとして、声の方を見ました。私はどうやらケーキを凝視していたようです。危ない危ない。本題を見失うところでした。


席についた私は、紅茶……とお菓子を片手に、一茂さん、もとい神様に、疑問を投げかけることにしました。


「……私の調べた内容に、間違いはありませんか?」


「だいたい合ってる。全く、どうやって調べたんだかなぁ」


その他にも、いろいろ情報を引き出そうとしたのですが、思っていたよりも口が固く、本で得た情報を超えることはありませんでした。


ではなぜ、私の前に現れたのか。


「お前に頼みがある」


ややあって、先に口火を切ったのは一茂さん。


「頼み、ですか」


「悠輝のことだ。アイツはな、今回に限らず何かしら面白いことになる。だが、それは面白いことばかりじゃない。だからその時、隣にいてやって欲しいんだ」


「悠輝の隣にいてほしい……悠輝の隣に!?」


紅茶を急に飲んだのでむせました。


「別に変な意味じゃないからな。あしからず」


そういうこと言われると、動揺してしまった私がバカみたいじゃないですか。


その時です。階段を上がってくる音が聞こえ、客室の扉が開けられました。そこにいたのは小次郎。自分の調べ物を終えて私を探しに来たのでしょうか。


警戒を怠った自分を悔いましたが、その必要はありませんでした。


私の目の前にいた神様は消えてしまっていて、お菓子の載ったケーキスタンドと、ティーセットだけが残されていました。


「あら!こんなものいつの間に準備していたの!やだぁ、ケーキまであるじゃない!」


そう言って小次郎は、クネクネしながらケーキに飛びつきました。


私は、最初に注がれてから一切減っていない紅茶を見つめながら思います。


「言われなくたって、最初からそのつもりです」

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