6-3-A 鳴神一茂
どんなに夜が暗くても、必ず太陽は昇る。
「……あっ!佐滋くん、おはよう!」
校門の少し前、僕を見つけて駆け寄ってきたのは中村さん。
「もうすぐ文化祭だね!うちのクラスはなにやるのかなぁ。喫茶店とか面白そうだよね!あとお化け屋敷!……でも、私怖いのダメだからなぁ」
確かに文化祭はあと1ヶ月ほどまでに迫ってきている。しかし、昨日の今日であまりに呑気すぎないだろうか。クラスの出し物がすでに決まっているクラスもあり、学校全体が浮ついた雰囲気になっているのはわかるが……
その時、嫌な考えが僕の頭をよぎった。
「ねぇ中村さん、ジェシカのこと、どう思う?」
「ジェシカさん?そうだなぁ、転校してきてからあんまり経ってないけど、ちゃんとクラスに馴染めてると思うんだ!でもあの子いつも敬語だから、ちょっと距離感じちゃうよね。もっと砕けた感じでもいいと思うんだけどなぁ」
まさか、そんな!?
「……昨日、何かあった?」
「え、昨日?うーん、あっ!非常ベルの誤作動があったよね。みんな慌てちゃって、全員校庭に避難してた。避難訓練のたまものだよね。佐滋くん、覚えてないの?」
「いや、ちょっと気になっただけ、気にしないで」
「そっか。じゃあ私、先行ってるねー」
中村さんは僕に手を振りながら、駆け足で前を歩いていた女子生徒を追いかけていった。
悪い予感ほど、よく当たるという。
記憶が、改ざんされている。
非常ベルを作動させたのは中村さんだし、僕も中村さんも避難はしていない。
協会の仕業だろう。
しかしよく考えれば、当然の判断だ。むしろこれまでそうされていなかったのが不思議なくらいだ。
協会の規定として、一般人を巻き込んではいけないというのがある。
ジェシカもその規定違反で協会から追われていたはずだ。
……追われていた?
違う。今でも追われているのは変わらないはずだ。それに加えて、今回の一件もある。
それならば、きっとジェシカやモンファさんも同じ状況にあるに違いない。
日本支部を襲撃した悪魔は何者かによって討伐され、リュネットは死んでしまったと思いこんでいる。
僕の記憶も、いずれ消されてしまうのだろうか。
なら、何も気にすることはない。何もかも忘れて、今までと何一つ変わらない日常。そうすることが、誰にとっても良い選択なのだ。
なぜか全身が、沸騰するように熱くなる感じたが、僕はむりやりそう思い込む事にして、下駄箱の扉を開けた。
『8時30分、特別棟3階階段にて待つ』そう書かれた紙が、ひらりと床に落ちた。
差出人は《鳴神一茂》僕の数少ない友人の1人だ。




