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エクソシストは死神の夢を見るかforZERO  作者: サトウイツキ
とある死神の話
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5-10 死神として

「君は生きていていいんだ」


初老の男性は言った。

その言葉はなぜか千尋の声のように聞こえた。


「そこで改めてお願いしたい。死神に、なってはくれまいか」


男性は、続ける。


「自分の生きることへの道を見つけたばかりの君にこんな事を言うのは少し酷かもしれない。ただ、君はかぐや姫と契約した死神だ。かぐや姫君を、使ってやってほしい」


かぐや姫を、使う?


「かぐや姫君の元の名前は《神楽鈴の命かぐらすずのみこと》江戸時代、巫女が神楽を奉納する際に使われた神楽鈴に宿った九十九神なんだ。九十九神は本来、神たる存在故、死神の用いる《器》になることはできない。この子が《器》になったのには、深い訳がある。それを私の口から言うことはできないが、君は契約してしまった以上、この子を《器》として使う義務があると思うんだ」


かぐや姫は隣でうんうんと頷いている。


言いたい事はわかる。

しかし、これから新しい人生を歩んでいこうという人に、考え方は違えども死神になれというのは、無理があるのではないだろうか。


「君の意見はもっともだ。しかし、このティーカップだって、どんなに綺麗な装飾が施されていようと、飾ってあるだけではただの土塊にすぎない。ティーカップは、そこに紅茶を注ぐことで初めてティーカップとなるんだ」


男性は、ティーポットからカップに紅茶を注いだ。カップから白い湯気が立ち上り、不思議な模様を作り出してすぐに消える。


「君とかぐや姫はひとつの魂を共有している。君がこれから人間らしく生きていこうと言うのなら、かぐや姫にも器らしく生きていく権利があるはずだ。それに君はもう、普通の人間ではない」


普通の人間ではない。わかってはいたことだが、改めて言われると堪えるものがある。


らしく生きていく権利、か。

例えば僕が死神になったとして、かぐや姫の思いに応えられるだけの成果が出せるのだろうか。そもそも死神における成果とは何なのか。


「そんなもの、妾も知らん」


かぐや姫はあっけらかんと答えた。


契約の解除は無理なんだっけ?


「なんじゃ?!まだそんなことを言っておるのか?!」


「うむ。できないことはないが、一度一つになったものをもう一度二つに分けるというのは、お互いに多大なリスクを伴うことになる。あまり勧められたら手段ではないね」


だったら仕方がない。

かぐや姫を使えるのは僕1人。僕が使えるのもかぐや姫1人だ。


死神についてよくわかっていないことも多いが、お互いが《らしく生きていく》為にはこれが最善の手段だ。


生きているのと、死んでいないのは違う。


僕はこれから生きていくんだ。


僕は立ち上がり、かぐや姫に手を差し伸べた。


「ふむ!ようやくやる気になったようじゃの!」


かぐや姫は今まで見たことの無いような笑顔で僕の手を取った。


瞬間、かぐや姫は黒い炎に包まれた。僕の右手から黒い炎が出ているような形になる。

戸惑う僕の頭に、かぐや姫が直接語りかけてくる。


『よし。そのままびゅっと、びゅっとするのじゃ』


擬音で説明されてもわからないのだが。


『いいから。こういうのは《いめーじ》が大切なのじゃ』


魂がひとつだと心の声がだだ漏れになるんだな。気をつけよう。


僕はかぐや姫の言うとおり、イメージで、腕をびゅっとやった。


すると黒い炎は消えてなくなり、僕の右手には黒い刀が握られていた。柄の先に銀の鈴がついていて、軽く揺れるだけでチリンチリンと聞き慣れた音が聞こえた。


「ほう。素晴らしい。初めてでここまでできるのか。それならば昇級試験も4級辺りから初めても問題ないだろう。」


感嘆の声をあげる初老の男性。


「名目上は私の部下ということになるが、好きにやってくれて構わない。それから、わからないことだらけだと思うが、そこは優秀な先輩に聞いてくれればいい。ねぇ。ライアン君」


「え、俺ですか」


まさかそうくるとは思っていなかったというように慌てる金髪の青年。


「私の名前は松崎。松崎繁まつざきしげるだ。私たちの所属している組織では、死神を統括するためにいくつかのコミュニティーを作っているのだがね。そこのリーダーをやらせてもらっているよ」


「俺はシュバリエ・ライアン。まあ、よろしく」


佐滋悠輝です。よろしくお願いします。先輩。


「おまっ、先輩とかっ!」


この人照れているのだろうか。


ところで、組織っていうのはいったい何なのだろう


「その説明をしていなかったね。私たちの所属している組織の名前は《死神連盟》君の肩書きは、死神連盟本部、松崎コミュニティー所属、4級死神、佐滋悠輝、となる」


◇◇◇


この瞬間、僕は真の意味で死神になった。


ただ、今となってはこの選択が正しかったのかどうかはわからない。


この選択が救った命もあるのは事実だが、僕はあまりにもわがままだったのだ。

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