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エクソシストは死神の夢を見るかforZERO  作者: サトウイツキ
とある死神の話
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5-6 霧の中のかぐや姫

目を覚ますと、よくわからない場所に立っていた。

上下左右360度どこを見渡しても白い霧で覆われていて、方向感覚が失われるようだ。


自分がなぜここにいるのか考える。

しかしそれは思い出すまでもない。簡単な事だ。


僕は、死んだ。


狭まる視界、遠くなっていく妹の声。きっと、千尋ちゃんも死んでしまっただろう。


僕は守れなかった。

その運命から、守れなかった。


もし階段の上で僕が引き留めなかったら、千尋ちゃんは死ぬことは無かったかんじゃないのだろうか。


そう思った途端、どうしようもない嫌悪感に襲われる。

僕は崩れるように膝をつき、痛いほどに自分の拳を握った。


僕が引き留めなければ、僕が余計な事をしなければ、千尋ちゃんは死ななかった。


僕が、殺したんだ。


「うぬぼれるでない」


その時、鈴の音と共に幼い少女の声が辺りに響いた。

少女の声にしてはやけに年老いたような口調で、どこからともなく声が聞こえてくる。


「抗えぬ運命じゃ。人の力でどうにかなる筈がない」


小さな鈴のような音が近づいてくる。

鈴の音は、ちょうど僕の目の前で止まった。


僕が顔を上げると、1人の少女が僕を見下ろすようにして笑っていた。

黒く艶めく長い髪に、雛人形のような十二単じゅうにひとえ


「もう分かっていると思うが、おぬしは死んだ。あの娘もじゃ」


あの少女、千尋ちゃんのことだろう。


「しかし厳密には違う。お主に限っては、死の直前で止まっておる」


死の直前で止まっている?

僕はまだ死んでいないというのか。


「察しがよいな。まぁ、妾がお主の資質を見抜いて、死の直前で止めたのだがな」


資質と聞いて思い当たる節はあった。


僕には、死期がわかる。

でもこの力が、一体なんの資質だというのか。


「《死神》じゃ」


死神……


「死せる者の魂を輪廻の輪に還す。神の代理執行人」


つまり、僕に死神になれと?


「うむ。お主にはその資質があるからの」


好きにすればいい。そう思った。

資質なんてあったとしても、千尋ちゃんを守れなかった僕には何もできやしない。


そんな力があったとしても、なにもしなければ諦めるだろう。


「死神になるには妾と契約する必要がある」


好きにすればいい。契約しても僕は何もするつもりはないからな。


「まあよい。では、妾に名をつけよ」


名前?

それなら、最初から思っていたのがいいかな。


《かぐや姫》


これで文句はないか。


「くくく。人というのはつくづく面白いのぉ。ほれ、いつまでそうしているつもりじゃ。早く立ち上がらんか」


僕はかぐや姫の言うとおりに立ち上がった。


「ふむ。思ったよりもデカいな。お主」


そんなことどうでもいいだろう。


「人のクセにうるさいわい。さあ。始めるぞ」


かぐや姫は僕の胸に手を当てると、何かをブツブツと唱え始めた。


瞬間、頭が割れるような激しい頭痛に襲われる。

また意識が遠のいていく。


「これで妾とお主は正真正銘の一心同体。行動には気をつけることじゃな」


すべて聞こえるかどうか、僕の意識は完全に落ちていた。

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