5-2 千尋ちゃん
自分には尋常ならざる力がある。と気付いたのは5歳の時だった。
僕には死期がわかる。
死期が近づいている人には、体に黒いモヤがまとわりついているように見える。そして、死期がさらに近づくとその人物の頭上にカウントが表示され、1日をきると24時間で時間が表示されるようになる。
だから僕は、誰が、いつ死ぬのかわかってしまう。
物心ついたときからモヤもカウントも見えていて、近所の公園に遊びに行ったとき、公園のベンチに座っていた老人を見て「あの人もうすぐ死んじゃうよ」と両親に伝えて、とても困った顔をされたのを覚えている。
でもその直後、老人は胸を押さえるようにして地面に倒れた。
近くでだべっていたカップルがそれに気づいて、何度か呼びかけをしたあと、携帯を使ってどこかに連絡をしていた。おそらく病院だろう。
到着した救急車に載せられた老人が病院に運ばれていくのを見て、両親は青ざめて顔を見合わせていた。
それからも度々こういうことがあった。
例えばそれは病院の待合室。人の多い場所ではもれなくこの力が発揮されていた。
それもあって両親は「もし何か見えても誰にも言ってはいけない」という約束を、僕と結んだ。
僕はこの約束をずっと守っていたし、破るつもりも全くなかった。
それから、妹の誕生や、僕の小学校への入学など、イベントが重なって両親はそんなこと忘れてしまっていたかもしれないが、僕自身も気にしなくなっていったし、それはそれで良かった。あの少女が現れるまでは。
その少女が現れたのは、僕が小学校5年生になったばかりの時だった。
妹の入学式があってから数日。
僕が帰宅すると、玄関に子供用の靴が増えていることに気がついた。しかもそれは妹のものと全く同じデザインで、子供向けアニメのキャラクターが描かれていた。
早速妹が友達を作ったのかな、と思い足早に階段を駆け上がる。
二階にある子供部屋は少し広い作りになっていて、僕と妹で兼用だ。
部屋のドアを開けると、2人の少女が床に座って遊んでいた。
1人は妹。そしていつの間にか妹の後ろに隠れているもう1人の少女。
「ただいま。悠羅」
「おかえり!お兄ちゃん!」
「お、おかえりなさい……」
妹と一緒にもう1人の少女も返事をしてくれた。
「えーっと、そっちの子は?」
「ほら、ちひろちゃん」
妹がもう1人の少女をつついている。
「は、長谷川千尋です……うぅぅ」
千尋ちゃんはモジモジしながら自己紹介すると、すぐに妹の後ろに隠れてしまった。
「じゃあ僕はリビングで宿題やってるから。ゆっくりしていってね」
「は、ふぁい!」
僕は鞄を持って階段を降りていく。
もし誰かが見ていたら、物凄く怖い顔をしていたかもしれない。
千尋ちゃんには、まだうっすらとだけど黒いモヤが見えた。
◇◇◇
翌日も、その翌日も、千尋ちゃんは家に来て遊んでいた。
実は家が近かったというのもその理由にあたる。具体的に言えば、隣の隣の家だった。
その頃は母も父も家にいて、当然、親同士も仲良くなっていった。
千尋ちゃんと会う回数も必然的に増えていく訳だが、黒いモヤは消えたりする事はなく、薄いまま、千尋ちゃんの体についていた。
僕がどう接していくか迷っている最中、千尋ちゃんの誕生日会が開かれる事になったのである。




